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2023.08.17

【実録あり】グループホームで働く管理栄養士。仕事内容ややりがいを大公開!

カバー画像:【実録あり】グループホームで働く管理栄養士。仕事内容ややりがいを大公開!

令和3年の介護報酬改定時に新設された栄養管理体制加算。この加算は、グループホームでも栄養管理ができるよう、管理栄養士に指導を求める加算です。

グループホームにおける管理栄養士の仕事内容はまだまだ確立されておらず、現場も手探りで仕事をしていますが、管理栄養士の活躍の場が広がった証でもあります。

今回の記事では、グループホームの栄養管理に関わっている私が、管理栄養士の役割や仕事内容をお伝えします。

とてもやりがいを感じるポジションなので、この記事を読んで興味を持ってくれたら嬉しいです。

1.認知症対応型共同生活介護施設(グループホーム)とは?

グループホームとは、知的障碍者や精神障碍者、認知症高齢者などが専門スタッフのもと集団で暮らす家のことです。

ここの記事では介護保険で運営されている認知症対応型共同生活介護を”グループホーム”とします。
グループホームの特徴
・介護スタッフが認知症の専門的な知識を持っている
・1ユニット9名までの少人数制
・サテライト型では1人暮らしの練習を行う

グループホームの入居条件
・認知症の診断名がついた高齢者
・施設と同一の市区町村に住民票がある方
・集団生活を営むことができる方
市区町村が運営する「地域密着型サービス」に分類されるため、原則施設と同じ市区町村に住民票がないと利用できません。

ユニット型は、少人数制の手厚い介護が受けられます。認知症の方は新しく出会った人の顔と名前を覚えづらくなりますが、9人までの小規模なので職員や利用者同士を理解しやすく、住み慣れた地域で馴染みのある関係を築きやすいという良さがあります。

一方、サテライト型は、民間のアパートなどを利用して1人暮らしの練習を行います。生活を営む中で困りごとが起きた場合は、担当の支援員に連絡すればいつでも支援が受けられます。

今回は、主にユニット型グループホームと管理栄養士の関わり方について解説していきます。

2.令和3年からグループホームでも栄養管理ができるように!

令和3年度介護報酬改定まで、グループホームで受けられるサービスは以下の通りでした。
しかし、令和3年度介護報酬改定にて栄養管理体制加算が新設され、グループホームに管理栄養士が介入できるようになりました。
栄養管理体制加算の概要は
目的
グループホームにおける栄養改善の取り組みを進める

点数
1か月30単位

算定要件
管理栄養士が日常的な栄養ケアに関わる介護職員への助言や指導を行う
です。

3.グループホームの栄養管理は外部の管理栄養士でも算定可能!

加算が新設されたとはいえ、小規模な上に給食施設でもないグループホームに管理栄養士が配置されていることは、ほとんどありません。

そのため外部の管理栄養士でも算定が可能です。

外部の管理栄養士とは
・他の介護事業所、介護保険施設の管理栄養士
・他の医療機関の管理栄養士
・栄養ケア・ステーションの管理栄養士
のことです。

私の周りでは、特養や老健に配属の管理栄養士が、法人内にある系列のグループホームを兼務しているケースが多いです。

私も普段は老健勤務で、月に1,2回系列のグループホームに足を運んで栄養ケアに関する助言をしています。

4.グループホームにおける管理栄養士の役割と仕事内容

次に、グループホームにおける管理栄養士の役割と仕事内容を解説します。

役割

主な役割は、栄養ケアを推進するための目標設定や課題の解決方法の提案をすることです。

これまで管理栄養士がいない施設だったので、きめ細かな栄養管理ができている施設は少ないでしょう。

そのため、低栄養の早期発見方法、栄養バランスの整った献立作成や食事形態の調整方法などの技術的助言や指導を行うことが管理栄養士の役割です。

仕事内容

主な仕事内容は、
・献立作成の指導
・とろみ材の使い方の指導
・衛生面の指導
・食事形態の調整や調理方法の提案
・栄養評価の方法の指導
・傾眠、拒食、徘徊、多動など栄養ケアに関する課題への対応方法の提案
・栄養スクリーニング(低栄養の早期発見)方法の指導
などです。

特養や老健とは異なり、利用者一人ひとりの栄養ケア・マネジメントは行いません。栄養ケアを行うにあたり課題となることを施設の介護スタッフへ指導します。

5.グループホームで働いている私の仕事内容

私は、法人内のグループホームに毎月足を運び、その都度栄養課題を見つけ、優先度が高いものから順に改善できるよう現場へ提案しています。

管理栄養士が不在だったため
・献立の栄養価
・キッチンの衛生管理
・低栄養リスクが上がっている人へ早期対応

など、課題は山積みです。

特に気になるのが、献立の栄養価と衛生管理。大量調理の現場とは違うと理解していますが、衛生面はどうしても気になりますね。

グループホームの食事提供は家庭用のキッチンと似た設備で9名分(1ユニット分)の食事づくりをしている施設が多いのですが、衛生管理も家庭レベルだったので、まずはそこから改善していきました。

厚生労働省が指導するように提示している主な項目は
①低栄養状態の評価方法
②傾眠、拒食、徘徊、多動など栄養ケアに関する課題への対応
③食事形態の調整及び調理方法
の3つです。私は中でも「③食事形態の調整及び調理方法」への指導を行うことが最も多いですよ。

一方、「②傾眠、拒食、徘徊、多動など栄養ケアに関する課題への対応」に関しては私が指導することはほとんどありません。

グループホームのケアスタッフは認知症ケアのプロなので、逆に私が学ぶことのほうが多いです。

その他、グループホームで働く上で気を付けていることや心構え、記録様式などはブログでもお話ししているので、よかったら読みにきてくださいね。

6.グループホームで働く管理栄養士になるためには?

次に、グループホームで働く管理栄養士になるにはどうすれば良いかを解説していきます。

グループホームの管理栄養士求人の数は?

グループホーム専従の求人数は非常に少ないです。「グループホーム 管理栄養士 求人」で検索をかけてもほとんどヒットしません。

本記事の作成元であるエイチエが提供する転職サポートサービス『栄養士人材バンク』でも、2023年8月現在、取り扱っている求人数は全国でたった4件のみ。

小規模なグループホームでは管理栄養士を直接雇用しづらいので、介護や事務と兼任になることが多いでしょう。栄養士人材バンクで取り扱っている求人も、ほとんどが介護職との兼務です。

外部の管理栄養士としてのほうが関わりやすい

グループホームに直接雇用されるよりも、先述した「外部の管理栄養士」扱いの方が、圧倒的に関わりやすいです。
現在、医療法人や社会福祉法人に勤務している管理栄養士は、系列にグループホームがあれば「やってみたい!」と手を挙げてみると、関われるかもしれません。

実際に、私も介護報酬改定の情報が出たときに上司や事務長、グループホームの管理者へ「栄養管理体制加算をとりませんか?」と提案しました。

介護報酬の加算は算定率が低ければ廃止されてしまいます。制度を活用し、管理栄養士が活躍できるフィールドを維持するためにも、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

7.グループホームでの大変なこと・やりがいは?

次に、グループホームでの大変なこととやりがいをお伝えします。

大変なこと

グループホームにおける私の立場は外部の管理栄養士ですから、頻繁に現場にいるわけではありません。

そのため、把握しきれないことや現場に無理な提案をしていないか、時々不安になります。

助言や指導を行っても、責任は管理栄養士ではなくグループホームのスタッフが負うので、気を遣うシーンも多いです。

グループホームのスタッフは利用者のケアがメインの仕事で、食事づくりや栄養管理はその中の1つという位置付けです。

ケアスタッフは料理をしながら利用者の見守りを行い、途中で排泄介助をすることもあります。当然、栄養評価や記録をするときも、利用者から目を離せません。

そのため、管理栄養士として「指導する」というスタンスをとるのではなく、大変な業務の中で食事管理や栄養管理について困ったら何でも相談してくださいね、という姿勢を心掛けています。

余談ですが、この調整力やコミュニケーション能力は、厨房で年上のパートさんを指導してきた経験が大いに活きていると感じます。

やりがい

グループホームでのやりがいは「専門家として頼ってもらえること」です。

・これまで食事づくりや栄養管理で疑問や不安があっても相談窓口がなかった
・管理栄養士が関わってくれて助かっている

という言葉をかけてもらえると、とてもやりがいを感じます。

また、自分が関わることで施設全体の栄養ケアのレベルが上がっていることも強く実感しています。

体重減少に対してアプローチする目安は減少率3%であることや、「何割食べたか」ではなく「この人に必要な栄養がとれているか」という評価が浸透してきたことで、低栄養の早期発見ができる体制づくりができたと思います。

他にも、グループホームだからこそできる個別対応の多さも学びになりました。

私が関わっているところは、9人の利用者に対して2人のスタッフで昼食の食事介助や見守りをしますので、特養や老健よりも手厚い介護を目の当たりに出来るのは、とてもいい勉強になります。できる印象です。

8.まとめ

グループホームは、長期間入居する施設にも関わらず、これまで栄養の専門家が関わってこなかった施設です。

そこに栄養管理体制加算が新設されたことは、国が管理栄養士の必要性を認めたことの証といえるでしょう。

グループホームにおける管理栄養士の仕事内容は、病院や介護施設ほど確立されていません。

まだまだ情報が少なく手探りな点もありますが、裏を返せば『開拓の第一人者になれる』ということです。チャンスがあれば積極的にチャレンジしてみてください。

グループホーム専従の求人は非常に数が少ないですから、しっかりアンテナを張ってチェックしておきましょう。

本記事の作成元であるエイチエが提供する転職サポートサービス『栄養士人材バンク』では、希望する求人が出たら、すぐに担当者が連絡をしてくれます。ぜひ、情報源の1つとして登録してみてくださいね。

参考文献・サイト

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