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2024.04.25

保健所で働く管理栄養士(行政栄養士)になるには?仕事内容や給料相場について解説

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こんにちは、管理栄養士のなつめももこです。

「地域の方と関わる仕事がしたい!」「公務員の栄養士として働きたい!」と思っている方は保健所の管理栄養士の仕事が気になるのではないでしょうか?

しかし、具体的な仕事内容や求人の探し方など知らないことが多くありますよね。今回は保健所で働く管理栄養士について詳しくご紹介します。

1.保健所で働く管理栄養士とは?

保健所や保健センターなど行政機関に配置されて働く管理栄養士は「行政栄養士」と呼ばれています。公的機関の職員なので、行政栄養士は公務員です。管理栄養士の資格を取るだけでなく、各自治体の公務員試験に合格する必要があります。

行政栄養士は法律や根拠に基づき、食を通じて地域住民の健康づくりのサポートをすることが主な仕事です。

病院や施設で働く管理栄養士の場合はそこへ通院する方、利用している方が主な対象です。一方で行政栄養士は、赤ちゃんから高齢者まで地域に暮らす全ての方の健康増進を支援します。

さまざまな年代、そして健康に関していろいろな悩みを抱えている方を対象とするため、行政栄養士には幅広い知識と専門性、コミュニケーション能力が求められます。

わたしが保健センターで実習した際には、赤ちゃんとその保護者を対象とした離乳食教室や、料理が苦手な方を対象とした行事食作りの料理教室に参加・見学しました。

こうした交流の機会が多々あるため、行政栄養士は知識や専門性だけでなく、親しみやすさや頼もしさ、人望も必須ですね。地域住民の方とより近い存在になることでみなさんの意識を変えて、健康づくりに貢献できます。

2.保健所で働く管理栄養士の主な仕事内容

行政栄養士は健康教育や食環境整備、栄養調査、生活習慣病の予防啓発・施策推進などさまざまな業務を行います。では、地域住民の健康づくりを推進する行政栄養士の具体的な仕事内容を詳しく見ていきましょう。

1)健康教育や食環境整備

地域の栄養改善の成果をあげるため、行政栄養士は以下のように健康教育や食環境整備を行います。

・地域の栄養ケア等の拠点の整備

地域密着型で栄養ケアができるように、地域ネットワークを構築し用途に応じてサービスを提供するのも行政栄養士の仕事です。医療機関、民間企業、個人などさまざまな地域の方々をサポートできるように、保健、医療、福祉及び介護領域における管理栄養士・栄養士の育成をする必要があります。

・飲食店によるヘルシーメニューの提供の促進

飲食店への働きかけも行政栄養士の仕事のひとつです。例えば、地域住民の食塩平均摂取量が問題となった場合、行政栄養士はより効果の期待できる店舗などに減塩メニューの提供を促進します。

口頭で説明するだけではなく、実際に栄養素を測定したり、お店の方と協力して減塩キャンペーンなどのイベントを実施したりして地域住民に働きかけます。

・健康危機管理への対応

食環境整備には災害、食中毒、感染症などの危機管理への対応も求められます。行政栄養士は発生の未然防止、発生時に備えた準備、発生時における対応、被害回復の対応等について、各機関と連携したり、地域住民に周知を図ったりする必要があります。

・栄養相談

地域住民の方の健康・栄養に関する相談に対応するのも行政栄養士の仕事のひとつです。自治体により対応方法はさまざまですが、電話相談、対面相談、訪問での相談などが主な方法です。

健康教育として、ほかにも特定保健指導や離乳食教室などの母子保健に関する対応も行います。幅広い年代の方に向けて適切な対応をするために、知識だけでなく正しくノウハウを伝える力も必要です。

2)栄養調査

毎年11月に行われる「国民健康・栄養調査」の調査員を、保健所の医師・保健師・臨床検査技師などとともに行政栄養士も行います。

調査事項は「身体状況調査票」「栄養摂取状況調査票」「生活習慣調査票」です。身長・体重、食事状況、食生活などを詳しく調査します。

調査の第一目的は国民の身体の状況や栄養摂取量、生活習慣の現状を明らかにして、国民の健康増進を進めるための基礎的な資料にすること。

最終的な目的は、調査結果を元に問題を把握し、国民の健康・維持増進を計画・実行することです。そのため、行政の管理栄養士は専門的な視点で問題に気づける力と、成果のみえる施策を考えていく力が必要となります。

調査結果をもとに、生活習慣予防などの健康づくりの取り組みを進めるための資料として活用し、地域住民のために役立てます。

3)生活習慣病の予防啓発・施策推進

生活習慣病を予防するには、食生活の改善が大きく関わっています。適切な栄養摂取・食生活を実践することによる「生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底のための施策の推進」が行政栄養士の重要な仕事のひとつとして挙げられます。

行政栄養士は、予防啓発と施策推進のために以下の業務を行います。
・データの分析
・優先的に取り組む健康、栄養課題を明確化
・効果が期待できる目標設定
・効率的かつ効果的な栄養指導の実施


分析するデータは、特定健診・特定保健指導の結果、レセプトデータ、介護保険データ、その他統計資料等です。行政栄養士はさまざまな資料から問題を把握するスキルが求められます。

また効率的かつ効果的な栄養指導にするためには、対象者(地域住民)の理解度が重要です。まずは本人が問題を理解し「食生活の改善が必要だ」と思ってもらわなければ相手の行動は変わらないため、行政栄養士は相手に寄り添いながら業務を行います。

4)給食センターの衛生管理・指導

「特定給食施設における栄養管理状況の把握及び評価に基づく指導・支援」も行政栄養士の仕事のひとつです。

給食は子どもたちの体をつくる栄養素となるだけでなく、食育としても深い関わりがあります。また、施設の利用者・入院患者の方のQOL向上にも必ず食事が関わります。

そのため行政栄養士の給食センターへの衛生管理・指導は地域住民の健康づくりのために欠かせません。

給食センターで指導・助言を行う場合、伝える相手は管理栄養士の方です。行政栄養士が管理栄養士に指導することになるため、より専門的な知識と相手に合わせてコミュニケーションを取るスキルが求められます。

5)栄養士免許の申請受付・飲食店の営業許可検査

行政栄養士は栄養士免許の申請受付や飲食店の営業許可検査なども行います。営業許可検査とは飲食店を開業するときに経営者が保健所に依頼する検査のことです。

保健所に検査の申請がきたら、保健所の食品衛生監視員が検査に向かい、設備が整っているか建物が衛生的かといった項目をチェックします。

営業許可検査は保健所で働く管理栄養士なら誰でもできるわけではありません。「食品衛生監視員」であることが必要です。例えば東京都の場合、管理栄養士で食品衛生監視員になるには「栄養士で2年以上食品衛生行政に関する事務に従事した経験を有するもの」といった条件があります。

開業前の飲食店を検査することは、建物や設備の衛生面の問題がなく、安全面の基準がクリアできているかを厳しく見るということです。不備があれば、食中毒や事故などにつながるおそれがあります。管理栄養士として、基準ごとに責任を持って検査していく必要があります。

3.保健所で働く管理栄養士の給料相場は

行政栄養士の給料相場が気になるところですよね。保健所で働く管理栄養士の給料は、公務員として地方自治体ごとの給料表により異なります。

初任給は行政以外の管理栄養士の給料よりも低い場合もありますが、ほぼ毎年昇給があるのが行政栄養士のメリットです。諸手当や安定した賞与もあり、勤続年数が増えると平均年収も上がっていきます。

契約社員やパートの行政栄養士の場合は、賞与がないなど条件が異なりますので、就職前に条件をしっかりと確認しておくのがおすすめです。

行政栄養士以外の仕事と給料の相場を比べてみましょう。
<管理栄養士の平均年収>
施設 平均年収
行政 450~600万円
学校 365万円
一般企業 330万円
病院・クリニック 325万円
障がい者施設
児童養護施設
334万円
保育園 312万円
介護施設 308万円
給食委託会社 302万円
上記の表のように、行政栄養士は比較的給料が高くなる傾向にあります。また、給料面だけでなく、福利厚生の充実度、土日祝日の休みが固定されている、夏季休暇があるなど働きやすいといったメリットもあるのが行政栄養士の特徴です。

4.管理栄養士が保健所で働くために必要な資格

保健所で働く管理栄養士になるには、公務員試験に合格する必要があります。管理栄養士の資格を取得後(もしくは取得見込みとして)各自治体の「公務員採用試験」を受験し、合格しなければなりません。

公務員採用試験では「筆記試験」「面接試験」が実施されるため、受験対策が必須となります。管理栄養士取得見込みで受験される方は、国家試験対策と公務員試験対策の期間が重なるため余裕を持って勉強に挑みましょう。

「管理栄養士」の資格がなければ行政栄養士にはなれないため、一から目指す方はまず管理栄養士養成施設へ通うことになります。また、公務員試験を受けるには自治体によっては年齢制限があるためその点も注意しておきましょう。

管理栄養士の資格取得方法については、あわせてこちらもご覧ください。

管理栄養士になるには?資格の取り方や栄養士との違いを解説!

5.保健所の管理栄養士求人の探し方

保健所の管理栄養士の求人は、欠員が出て募集されることがほとんどです。そのためお住まいの自治体で毎年必ず求人が出るわけではありません。こまめにチェックして求人情報を逃さないようにしましょう。

1)各自治体の求人をチェック

まずは、お住まいの自治体の求人情報や公務員採用試験の情報をチェックしてみましょう。「〇〇市 公務員試験 管理栄養士」「〇〇市 行政栄養士 求人」などと市区町村名を入れて検索すると、各自治体の該当するページを見つけられます。

また、行政栄養士の求人は定期的に出るわけではないので、就職のチャンスを逃さないためにお住まいのエリア以外の自治体の情報もチェックしてみるのがおすすめです。

自治体により、年齢制限や職務経験を問われることもあります。求人を見つけたら条件に合うかどうか詳細を確認しておきましょう。

2)求人情報サイトをチェック

求人情報をチェックするなら、各地自体の公式ホームページ以外に「管理栄養士専門の求人サイト・人材バンク」や「行政栄養士に特化した求人サイト」もこまめに見ておくのがおすすめです。

求人サイトや人材バンクには全国のさまざまな求人が掲載されているのがメリットです。それぞれの自治体のホームページをひとつひとつチェックしていくと時間がかかったり、情報を逃してしまったりするかもしれません。その点、求人サイトや人材バンクにはまとめて全国の求人が掲載されているので、さまざまな地域の求人をもらさず見つけられます。

求人サイトで「行政栄養士」「公務員栄養士」と求人の条件を絞ってチェックしたり、人材バンクで「行政栄養士の求人を探している」と相談したりしてみましょう。

5.管理栄養士・栄養士として活躍できる場所を見つけるなら栄養士人材バンク

地域の方と直接関わりながら健康増進に貢献できる行政栄養士の仕事は、とてもやりがいがありますよね。給料も比較的安定していて固定の休みもあるため、ワークライフバランスの取りやすい仕事です。その反面、求人が少ないためチャンスを逃さないのが大事ですね。

本記事の作成元であるエイチエは、転職サポートサービス『栄養士人材バンク』も提供しています。さまざまな求人をご案内できますので、行政栄養士の求人を探す際には、まずはお気軽に相談してみてくださいね。

管理栄養士・栄養士専門の求人・転職なら栄養士人材バンク

6.まとめ

行政栄養士になるには、公務員試験に合格する必要があり、また求人数も少ないため大きな壁を感じるかもしれません。

しかし、その分やりがいがあり、働きやすい条件で長く続けやすい仕事です。地域の方々に関わる仕事に関心のある方は一歩ふみ出してみませんか?

「今の仕事をやめたいな。行政栄養士の求人ってあるのだろうか…」という迷われている段階でのご相談もお待ちしております。求人が出るチャンスを逃さないようにしましょう!

参考文献・サイト

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なつめ ももこ

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