介護施設における管理栄養士・栄養士の仕事内容を解説!給与はどれくらい?
介護施設で働く管理栄養士・栄養士の役割、仕事内容
介護施設における管理栄養士・栄養士の役割は、利用者への食事の提供、栄養指導や健康管理を行うことです。
また、管理栄養士は利用者にあった栄養管理を行う立場として、栄養マネジメント加算が適用されます。
食事の提供と栄養ケアが主な業務
主な業務としては、献立作成、材料の発注、食事の調理や提供が挙げられます。噛む力や飲み込む力が低下している高齢者も多いため、食べやすい食事の提供を目指します。
具体的には、魚をほぐして柔らかい練り物にする、お肉はハンドミキサーでペースト状にして成形する、パサつきがちなパンは卵や水分を含ませる、といった工夫が挙げられます。
また、2005年の介護保険制度の改革以降、管理栄養士は栄養ケア業務の専門職という位置づけがされています。
つまり、単に食事を提供するだけではなく、利用者それぞれに合った栄養ケア計画の策定、実行により、高度な栄養管理をすることが求められているということです。
利用者本人やご家族に相談する、食事中に様子を確認したり意見を聞いたりして改善を行う、といった対応も必要になります。定期的に介護士や看護師とも意見交換を行います。
こうした業務があるので、栄養マネジメント加算として報酬も上乗せされることになっています。
管理栄養士・栄養士が働く介護施設の例
管理栄養士・栄養士が働くことができる介護施設としては以下のような施設が挙げられます。
入所型の施設では3食全てを提供しますが、通所型の施設ではお弁当などの形式で1日のうち一部の食事だけを提供することもあります。
こうした施設において、介護士や看護師、医師など他の職種の方とも協力しつつ、高齢者の豊かな生活をサポートしていきます。
介護施設で働くやりがい
食が細く体力が低下しがちな高齢者の方々は、日々の食事管理が非常に大切です。
利用者に合った食事を提供することで、栄養状態が改善して元気になった、「美味しいから毎日楽しく食べられる」と言ってもらった、などの経験ができる職場です。
このように自分が提供する毎日の食事で高齢者の健康を支えることができる点、またその実感を得やすい点は大きなやりがいにつながります。
介護施設における管理栄養士・栄養士の待遇、給料
1日の流れ、給料、休暇、福利厚生といった観点から、介護施設における管理栄養士・栄養士の待遇を見ていきましょう。
1日の流れ
- 8:30出勤
- 9:00昼食の準備、配膳
- 12:00休憩
- 13:00栄養補助食の準備、事務作業
- 15:00夕食の準備、配膳
- 17:00片付け等
- 18:00退勤
介護施設では早番や遅番が設けられていることが多く、出勤日によって上記の時間から2時間ほど前後することもあります。
なお、朝食の準備や提供は調理師やパートの方が担当する施設が多く、正社員の管理栄養士・栄養士が早朝に出勤するケースは多くありません。
給料
介護施設における管理栄養士の月収は25万円前後となります。こうした基本給に加えて、家族手当や住宅手当も加算されます。 介護施設では、管理栄養士と栄養士にそれぞれ2万円、1万円ほどの資格手当が設定されていることが多いです。 ボーナスが2〜4ヶ月ほど出ると、平均年収は380万円ほどになります。
休日、休暇
休日は、他の管理栄養士・栄養士の方との兼ね合いになりますので、平日休みの週もあれば土曜や日曜が休みの週もあります。 年間の休日数は110日前後が一般的です。
福利厚生
介護業界の人材不足は深刻であり、福利厚生をはじめとした労働条件を改善する介護施設が増えています。
交通費の支給、産休育休制度などの基本的な福利厚生がある施設は多いです。
ただし産休制度などは、存在していても名ばかりとなっている施設もあります。転職の際には、取得率なども確認したいところです。
介護施設で働く管理栄養士・栄養士に必要なスキルや経験
食事によって高齢者の健康を支えるのが、介護施設で働く管理栄養士・栄養士の役割です。その役割を果たすために必要とされるスキルや経験を解説します。
利用者に最適な食事を提案できる知識
介護施設の利用者ごとに異なる健康状態、嗜好や禁忌を踏まえて、食事を提案する必要があります。
栄養バランスを考えるのはもちろんのこと、高齢者に好まれる食事、咀嚼や嚥下に問題があっても楽しめる食事を提供するための知識が求めれるということです。
また、献立の作成だけではなく調理を兼任することもあるので、調理の経験があるとなお良いでしょう。
栄養ケアマネジメントに関する知識
食事についての知識はもちろん、利用者の健康を支えるための栄養ケアマネジメントに関する知識も有しておきたいところです。 健康状態をスクリーニングする方法、床ずれの予防法、医薬品と禁忌の食品、食事による療養などは、介護施設ではいつか必ず使うことになる知識です。 4年制大学で学んだ方も再確認しておきましょう。
職員や利用者と円滑にやり取りする能力
介護施設は、コミュニケーション能力が求められる職場でもあります。
介護士や看護師など他の職種の方と意見を交換する、利用者本人やご家族からの意見を取り入れることによって、より良い食事が提供できるようになります。
介護施設で働く103人の管理栄養士、栄養士にアンケートを行いました!
管理栄養士・栄養士のコミュニティサイト「エイチエ」の登録者で、介護施設で働いている管理栄養士・栄養士の方々にアンケートを実施しました。
【調査概要】
- 調査時期:2020年5月
- 調査方法:管理栄養士・栄養士のコミュニティサイト「エイチエ」会員向けに実施
- 調査地域:全国
- 集計対象者:2020年5月のエイチエアンケートにて介護施設で働いていると回答した管理栄養士・栄養士
【介護施設で働いている管理栄養士・栄養士へのアンケート 質問項目】
- 管理栄養士ですか?栄養士ですか?
- あなたの年代を教えて下さい
- 管理栄養士・栄養士としての主な仕事内容を教えてください
- 管理栄養士・栄養士としての就業形態を教えてください
- 管理栄養士・栄養士としての収入を教えてください
- 今/直近の職場の良い部分(メリット)を教えて下さい
- 今/直近の職場の悪い部分(デメリット)を教えて下さい
【アンケート全体回答者属性】
- 有効回答数:362名の内、介護施設で働いている103名)
- 管理栄養士:92名(89.3%)、栄養士:11名(10.7%)
- 20代:20名(19.4%)、30代:28名(27.2%)、40代:38名(36.9%)、50代:13名(12.6%)、60代以上:4名(3.9%)
介護施設で働く管理栄養士・栄養士の仕事内容
介護施設で働く管理栄養士・栄養士の業務としてトップに挙がったのは、栄養アセスメント業務となりました。その後に、栄養部門に関する管理業務、各種委員会への参加、献立作成が続きます。 調理業務を担当している方は比較的少なく、栄養ケア・マネジメントと献立作成までの業務を担当している管理栄養士・栄養士が多いと分かります。
介護施設で働く管理栄養士・栄養士の就業形態
介護施設で働く管理栄養士・栄養士のうち、正社員が9割を超える結果となりました。
今回のアンケートでは介護施設で働いている方のうち約9割が管理栄養士の資格保持者ということを踏まえると、介護施設では「管理栄養士で正社員」という働き方をしている方が多いことが分かります。
介護施設で働く管理栄養士・栄養士の収入
約3割の方が年収400万円以上に達している結果となりました。
管理栄養士・栄養士の中では、介護施設で働く方は年収が高い傾向にあると言えるでしょう。
管理栄養士・栄養士が語る介護施設で働くメリット、デメリット
介護施設で働くメリット
介護施設で働くメリットとしては、勤務時間や休日に対して満足している意見が多く挙げられました。
また、スキルアップできる環境で働くことができている点をメリットに感じている方もいます。
- 残業がゼロといっていいほどなく定時で帰れる
- 有給休暇や産休育休がとりやすい
- 定時であがることができ、休日をしっかりとることができる
- 直営施設なので給食管理、栄養管理と両方学ぶことができている
- 自分がやりたかったケアマネジメントに力を注げる
- 一人部署なので自分のペースで仕事がしやすい
- 食事補助や家賃補助、財形貯蓄、退職金などの福利厚生が充実していた
- 看護師や介護士と関わり、各々の方の食事に関わる環境にやりがいを感じる
介護施設で働くデメリット
介護施設で働くデメリットとして挙げられた点は、介護施設ごとの特徴に由来するものが多くなりました。
転職する際には、人手不足、適切な人材がいない、業務に対する理解がないなど以下に挙げられているデメリットに当てはまらない職場かチェックするようにするとよいでしょう。
- ギリギリの人数で回しているため、調理業務がメインで手一杯の部分がある
- 残業しないといけないくらい仕事量が多い
- 調理員それぞれのレベルが違いがあり、統制が取りにくい
- 栄養士が1人だけなので、休みがとりにくい
- 施設に一人だけの管理栄養士のため相談できる人がいない
- 他職種の方の管理栄養士の業務に対する理解が低い
- 施設における食事への認識が低く、重要性を理解してもらえない