管理栄養士・栄養士のコミュニティ エイチエ

チエノート

転職ノウハウ

2024.01.25

栄養サポートチーム(NST)専門療法士とは?取得方法や仕事、メリットを解説

カバー画像:栄養サポートチーム(NST)専門療法士とは?取得方法や仕事、メリットを解説

こんにちは、管理栄養士の渡部 早紗です!

管理栄養士の資格を持っている場合、栄養サポートチーム(NST)に興味がある人も多いのではないでしょうか?

また、NSTで活躍するために、『NST専門療法士』の資格が気になっている人もいるかもしれません。

でも、NST専門療法士の方が身近にいないと「どうやってなるの?」「私でも資格を取得できるのかな…?」と、調べたくなりますよね。

そこで今回は、NST専門療法士のなり方について調べてみました!

認定試験の難易度や気になる合格率についても調査しましたので、資格取得までの道のりがクリアになりますよ。

それでは、一緒にみていきましょう!

1.栄養サポートチーム(NST)専門療法士とは?

1)栄養サポートチーム(NST)とは?

養成課程で習っているかとは思いますが、まずは栄養サポートチーム(NST)について、解説していきますね。

栄養サポートチーム(NST)とは、多職種の医療スタッフが栄養状態の低い患者さんのために、栄養サポートを協力して行うチームのことです。

『Nutrition Support Team』の頭文字を取って、通称NSTと呼ばれ 、医師、管理栄養士、薬剤師、看護師、臨床検査技師、言語聴覚士、さらに医療ソーシャルワーカーなどの職種の方から成り立ちます。

実は、中心静脈栄養(TNP)が開発されたことがNSTの起源です!TNPの発展や普及によって、「医師をサポートする栄養管理専門の医療スタッフが必要だ!」となったことが始まりです。

歴史としては、1973年にアメリカで初めてNSTが誕生し、2001年には日本の経腸静脈栄養学会でNSTプロジェクトが立ち上がりました。

そんなNSTの目的は、患者さんにとって安全で有効な栄養管理を行うことで、疾病の治癒や合併症予防を目指すことです!

2)栄養サポートチーム(NST)専門療法士の業務内容

NST専門療法士は、NSTの中心的な存在として患者さんへのより良い栄養管理を実施します。まず患者さんのデータを基に栄養状況を評価し、患者さんに適した食形態の提案を行います。NST会議にも参加して多職種と連携を図るほか、回診を行い患者さんの状況をチェックします。

患者さん一人ひとりに合わせた栄養管理の提案のほか、栄養治療におけるリスク回避のための活動や、病院スタッフへの栄養管理の知識の普及・啓蒙活動も実施します。

3)栄養サポートチーム(NST)専門療法士のやりがい

NSTの一員として栄養状況の改善を行うことで、患者さんの疾病治癒の効果を高められます。栄養摂取は、全身状態や治療効果にも影響します。さらに、食事をとることは日々の楽しみや彩りにもなるでしょう。

適切な栄養管理によって、入院期間が短縮できたり、医療資源が効率的に使えたりすると、医療費・経費などのコスト削減を図ることができ、病院への貢献にも繋がります。

4)栄養サポートチーム(NST)専門療法士の認定者数

NST専門療法士の認定者数は、約18,000人(令和5年3月時点)です。一般社団法人日本静脈経腸栄養学会(JSPEN)がNST専門療法士の資格認定を行っています。

令和5年度のNST専門療法士の合格者は751名であり、管理栄養士をはじめ、看護師、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、言語聴覚士などの医療スタッフが認定されています。

2.栄養サポートチーム(NST)専門療法士のなり方

1)認定の条件

管理栄養士もその他の専門職も、NST専門療法士の資格取得の方法は同じです。以下の5つの条件を全て満たす必要があります…!
①認定対象となる国家資格を持っている
⇒管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、診療放射線技師

②①の国家資格で5年以上、医療や福祉の施設で勤務し、栄養サポートの業務に携わる

③日本臨床栄養代謝学会が主催する学術集会やセミナーに参加し、30単位以上を取得する

④認定された施設で、合計40時間以上の実地修練をおこなう

⑤上記の①~④までの条件を全て満たした後、認定試験を受験し、合格する

このように、認定試験を受験するまでに、セミナー出席や実地修練などのハードルがあるのです…!

5年以上の実務経験が必須のため、今まで別の領域で働いていた人が急に「病院でNST専門療法士として働きたいな~」と思い立っても、すぐに資格が取れるわけではありません。

さらに、NST専門療法士の資格は、管理栄養士と異なり、5年ごとに更新する必要があり、研修を受ける必要があります。

ちなみに、受験料10,000円、認定料20,000円。更新料は10,000円です。

2)認定までの流れ

NST専門療法士の資格が認定されるまでの流れをみていきましょう。

①日本静脈経腸栄養学会主催の学術集会やセミナーに参加し、30単位以上を取得する

② 認定された施設で、合計40時間以上の実習を行う

③認定試験の受験申請書と認定教育施設実地修練修了証、顔写真を提出する

④毎年1回実施されるNST専門療法士認定試験を受験する

⑤認定試験に合格後、認定申請書を送付し、認定料を納めるとNST専門療法士と認定される

3)条件を満たすには

認定試験の受験資格の条件を満たすには、学術集会やセミナーの30単位と、認定施設における合計40時間以上の実習が必要です。

学術集会やセミナーの単位のなかでも、日本経腸栄養学会の学術集会(10単位)と日本経腸栄養学会主催のNST専門療法士受験必須セミナー(10単位)の2つはそれぞれ1回以上の参加が必須です。必須単位数に加えて、学会が認定する栄養に関する全国学会や地方会、研究会、「バーチャル臨床栄養カレッジ(10単位)」などに参加して合計30単位以上にする方法もあります。

認定施設での実習は、全国290施設(令和5年12月現在)ある認定教育施設の病院で実施され、実習希望先の病院へ直接申し込みます。日程は各病院で異なり、5日~9日程度実施されます。実習費は病院によって異なりますが、1万~3万円程度必要です。実習では、講義をはじめカンファレンスや病棟回診、栄養評価などの実技が行われます。実習後、認定教育施設実地修練修了証が交付されます。

3.栄養サポートチーム(NST)専門療法士の合格率と難易度

NST専門療法士を目指したい!と思ったときに気になるのが、試験の合格率と難易度ですよね。

残念ながら、試験を主催する日本臨床栄養代謝学会において、毎年の受験者数や合格者数が明確に発表されておりません。ただし、合格者の受験番号から算出すると、例年60~70%が合格しているようです。

さらに、職種によって何人合格、といった割り振りがあるようではなく、管理栄養士の国家試験のように、正答率は60%以上が合格条件の一つのようです。 ちなみに、2020年度の試験では、新たに405人が認定されています。

気になる難易度ですが、出題範囲が生化学から経腸栄養法・静脈栄養法など幅広く、さらに計算問題も含まれるため、やや難しいようです。

とはいえ、栄養に関する資格なので、管理栄養士は他職種と比較して有利と言えますね。さらに、普段の業務で経腸栄養や静脈栄養に携わっている人も、勉強がスムーズです。ちなみに、NST専門療法士試験の過去問題集が発行されているので、受験する方は手に取ってみてくださいね。

よりハイレベルな知識と技術が求められる資格ですので、難易度はもちろん高め。しかし、資格を持つことで、もっと患者さんのお役に立てますよね。難しい試験ではあるものの、コツコツと勉強することで道が開けます!

試験の対策方法は?

NST専門療法士の試験の対策は、ハンドブックや過去問題集を活用して行いましょう。日本経腸栄養学会編集の過去問題集が出版されています。ほかにも、静脈経腸栄養ハンドブックや静脈経腸栄養ガイドラインなども活用するといいですね。

栄養療法の基礎知識をはじめ、経腸栄養・静脈栄養の知識も問われます。管理栄養士国家試験を受けてから少なくとも5年経過しているので、生化学や臨床栄養学の基礎知識を振り返るためにも、国家試験の過去問を解くのも良いですね。

4.資格取得のメリット

今回は、NST専門療法士のなり方についてお伝えしました。

NST専門療法士の資格を取得することで、NSTの中心となって活動できることが魅力ですね。

また、NST加算の算定要件に、NST専門療法士の資格は必要ないものの、資格があることでNSTへの知識がある証明になるため、病院で重宝されるようになりますよ!

さらに、セミナー出席や実地修練によって知識と経験が豊富になるため、NST 内においても意見や提案に対してさらに信用度が増します!

ほかにも、管理栄養士×NST専門療法士として、キャリアアップや、場合によっては給料アップが望まれることもメリットの一つ。

そして何より、資格取得を目指すことで管理栄養士としての知識と技術が豊富になり、今以上に患者さんに貢献できますね。

「スキルアップしてNSTで活躍したい!」「専門性を高めて、もっと患者さんのサポートがしたい!」と思う方は、ぜひNST専門療法士の資格取得を目指してみましょう!

5.まとめ

NST専門療法士の業務内容ややりがい、資格の取得方法について解説しました。学術集会やセミナー、40時間以上の実習に参加するなど、条件が厳しい資格ではありますが、NST専門療法士になることで、より高度な栄養療法を行うことができるでしょう。

資格によって、キャリアアップはもちろん、より患者さんや病院に貢献できる管理栄養士になれます。NSTチームに所属して活躍中の管理栄養士の方や、NSTに興味がある方は、ぜひ目指してみてはいかがでしょうか?

参考文献・サイト

この記事をシェアする

渡部 早紗

プロフィールと作成記事はアイコンをクリック!

  • タグ未設定