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栄養ケア・マネジメント ~プロセスをおさらいしよう~

更新日2026.06.16

前回は栄養ケア・マネジメントの基本をおさらいしましたので、次は「プロセス(方法)」について学んでいきましょう。

今回は、①記録・報告②栄養補給法③栄養障害のケア④症候の栄養ケア(発熱・脱水)に分けて解説していきます。

栄養ケア・マネジメントとは?管理栄養士に必要な業務の基本を解説!

1.はじめに

臨床現場や健康管理の実践は、病院や施設・在宅でヒトの栄養状態を把握し、疾病を予防・治療するための栄養サポートチーム(Nutrition Support Team)として適切な栄養評価をし、健康・栄養支援などの栄養ケア・マネジメント(Nutrition Care Management:NCM)を施行する役割を担っています。

栄養管理計画」は、平成24年の診療報酬改正により、入院基本料を算定するための施設基準に追加されました。そしてチーム医療ではコミュニケーションツールとして記録は欠かせません

また栄養食事管理録、栄養食事指導の報告など一連の栄養ケア・マネジメントの手順(図1.)を実践した記録や情報は、効率的な業務で記録の標準化が重要となっています。

2.栄養記録・報告の基本

栄養管理における記録方法は、問題志向型システム:POS(problem oriented system)で記載されます。

栄養関連の記録も、この医療者共通のPOS(問題志向型システム)に沿って標準化された方法で記録され、そのPOS構成は
1)対象者の抱えている医学的、経済的、心理的、生活環境など、あらゆる問題を把握し、解決するためのプロセス
 ・基礎データ(身体測定、臨床検査値)、患者の生活背景、経口摂取の可否、摂取栄養量などから把握していきます。

2)栄養ケア記録POSは問題点、志向性、システムで構成
・ここでの問題とは、治療上障害となる対象者の問題点を整理し、それをリストで示したものです。
・志向型とは、あらゆる栄養ケアの問題点を解決させるための方策を示しています。
・その問題は短期で解決するものと、長期で解決・改善を目指す方策とします。

このようにPOSシステムとは、各種情報の把握医療者の協力体制や栄養療法が確立されていることを意味するものとなります。

3)栄養ケアにおける問題点やそれを解決する方策など、全体を要約して考察を加えて経過を記述
このPOS実践に必要な診療録はPOMR(problem oriented medical record)と呼ばれ、その中で経過記録は、記述的に指導内容をS・O・A・Pの4項目に分けて(表1参照)記載します。

問題志向型システム:POSに基づいた記録は、栄養食事指導の経緯なども共通の記録方法でもあり、日常業務でシステム化された記録内容として、PCソフトなどで規定記載ができるようになっています。

3.栄養補給法

栄養補給の方法は、図2.のように大きく経口補給非経口的補給の2つに分けられます。また栄養補給投与は、表2のように経口摂取経管投与高カロリー輸液の3つの方法があります。
栄養補給の基本は、経口から摂取させることが優先されます。

非経口的な長期間の中心静脈栄養(TPN)での腸管不使用では、
①BT(bacterial translocation):腸管粘膜の破たんによる細菌の侵入
②胆嚢収縮不全による胆汁うっ滞を起こす

などの弊害が起きます。

経口的食事はこれらを予防すると同時に、食べる楽しみを与えることができます。

そして経口摂取不能の場合は、
① 消化管の障害
② 咀嚼・嚥下機能障害
③ 嗜好的(宗教・信条的)な拒否
④ 有害事象による食欲不振
など、これらが原因していないか確認します。

医療・介護施設における栄養補給の計画は、次のことを確認しましょう。
1) 栄養状態のアセスメントから推定栄養量をケアプランする

2) 経口摂取可能か非経口的な栄養補給なのか
- 食事・栄養摂取状況チェック・何をどの程度摂っているか?

3) 褥瘡や病態(疾患)別治療に必要な栄養管理

4) 摂食困難な場合の工夫
- 高齢者や嚥下障害者への対応・経口的な嗜好に応じる

5) 経口摂取の不足分
- 病態などによる間食や水分補給の必要性

6) 特殊食品の効果や使用法の情報と整備
など多岐にわたります。

栄養補給方法の選択は、JSPENなどから示されていますが、近年は誤嚥・逆流など視野にいれた選択方法や、嚥下調整食の必要性も「栄養管理計画書」で求められています。

4.栄養障害のケア

栄養障害は、疾病自体が障害の要因となり、同時に栄養障害が疾病や病態を悪化させるなど相互の作用を起こします。

特に周術期、重症病態(多発外傷、熱傷、感染症など)、肝疾患、腎不全、心不全、慢性呼吸不全では、各疾患の病態を確認して、栄養障害のケア対応が必要です。

1)栄養障害

栄養障害は
①マラスムス(marasmus):エネルギー不足が一次的誘因
②クワシオルコル (kwashiorkor):蛋白不足が一次的誘因
とされます。

しかし我が国の医療・介護現場における栄養障害は
③マラスムス・クワシオルコル混合型(PEM:protein energy malnutrition)
の混在が多いとされています。

つまり対象者は慢性的なエネルギーと蛋白質不足、疾患侵襲などによる基礎代謝亢進により生じた混合型=PEMの栄養障害を呈しています。
栄養障害は
マラスムス(marasmus):
  エネルギー不足が一次的誘因

クワシオルコル (kwashiorkor):
  蛋白不足が一次的誘因
とされます。

しかし我が国の医療・介護現場における栄養障害は
マラスムス・クワシオルコル混合型
  (PEM:protein energy malnutrition)
の混在が多いとされています。

つまり対象者は慢性的なエネルギーと蛋白質不足、疾患侵襲などによる基礎代謝亢進により生じた混合型=PEMの栄養障害を呈しています。
このマラスムス型では身体計測値は60%以下で体重減少となります。クワシオルコル型は血液生化学検査値が60%の減少を呈し、浮腫、血清アルブミンの低下を認めます。

さらにどの型でも免疫能は著しく低下してきます。よって混合型PEMでは、エネルギー補給と筋たんぱく質を維持する栄養ケアが重要となります。

このように慢性的な栄養障害(飢餓、低栄養、長期間絶食)の場合では、積極的な栄養補給を施行することで「代謝性合併症」=リフィーディング症候群(refeeding syndrome)を発症させ、重篤な病態を招きます。

白石 弘美 先生

これを予防するためにも低栄養状態の栄養管理は、性急な充分量の栄養補給に注意しましょう。

2)ビタミンとミネラルの欠乏症・過剰症

栄養障害では、全身の栄養状態とビタミン・ミネラルの欠乏、過剰に関連する病態を把握する必要があります。表5に主なビタミンの欠乏症過剰症一覧を示しました。

病態を把握して不足の場合は参照にして補助食品や投薬で補います。また過剰の場合は、健康食品やサプリメント服用の有無なども確認して下さい。
次に、ミネラルは体内で合成できないため、食物として摂る必要があります。不足した場合は欠乏症やさまざまな不調が発生しますが、摂りすぎた場合にも過剰症や中毒を起こすものがあります。
表6の主なミネラルの働きや症状や日本人の食事摂取基準も参照しますが、過剰・欠乏は病態・症状の異常を招き、薬剤の影響もあるので注意深く確認することが重要です。

5.症候の栄養ケア(発熱・脱水)

多様な症候がありますが、日常臨床や生活で多く体験する「発熱」「脱水」についての栄養ケアを学びたいと思います。

1)発熱の栄養ケア

発熱の全身的な症状として倦怠感、頭痛、食欲不振、筋肉・関節痛などの付随した症状が出現します。高温発熱(39℃以上)の場合は意識障害なども伴うことがあります。

この発熱の原因は感染症、炎症、腫瘍、組織障害などがあり、発熱を伴う症状から原因となる疾患の治療がおこなわれます。いずれにしても、発熱している場合の栄養ケアは基礎代謝エネルギー量の亢進、発汗の栄養ケアで

水分補給がポイントとなります。

特に代謝亢進ではビタミンA、ビタミン B群、ビタミンCも需要が増えます。「日本人の食事摂取基準」などを参考に補充を検討します。

白石 弘美 先生

そして同時に表7の示したように水分必要量を確認して水分補給も重視して下さい。

2)脱水の栄養ケア

脱水は細胞外液が不足した状態で、水とナトリウム(Na)が不足します。口喝を訴えない高齢者小児期では注意が必要となります。その場合の脱水症状は体重減少、尿量がどの位かなどで確認します。

軽度脱水では体重減少2%程度、6%減少では脱力、欠尿が起こり、体重の7~14%減少は脱水による意識障害などが生じるとされています。

重症の場合は医療機関での輸液投与となりますが、軽度~中等度の脱水栄養ケアとしては、水分とNa補給をします。その場合、スポーツドリンク飲料は不適切で、経口補水液(ORS:Oral Rehydration Solution)投与がWHOでも推奨され、我が国では経口補水液:OS-1として市販されています。

白石 弘美 先生

飲ませ方のコツ(表8)など参考にして利用しましょう。

6.最後に

これまで栄養ケア・マネジメントの基本をおさらいし、これを統合すべき栄養ケアプロセス(nutrtion care process:NCP)が近年提唱されてきました。

このNCPは栄養管理のプロセスを標準化して展開していくことになっています。各疾患ガイドラインや、ライフステージでの栄養管理を実情に沿った方法で、図4など参照して栄養食事管理を治療成果へつなげて下さい。

執筆者:白石 弘美

執筆者:白石 弘美

元 人間総合科学大学 教授・前学科長

■ 経歴
1967年、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部に管理栄養士として勤務。NST設立ディレクターとしてチーム医療の基盤を作る。
同病院の永年勤続を経て、東京家政大学・聖徳大学等の非常勤講師を歴任。
2008年より人間総合科学大学 教授、2012年〜2025年3月まで学科長を務める。

■ 専門・研究テーマ
臨床栄養学(糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、炎症性腸疾患(IBD)など)
消化管術後の栄養管理、褥瘡予防における栄養指導
災害時におけるIBD患者のための備蓄食品開発(産学共同プロジェクト)

■ 主な著書・実績
『新臨床栄養学-栄養ケアマネジメント-』(医歯薬出版)
『健康21シリーズ 脂質異常症:コレステロール・中性脂肪が気になる人の食事』(女子栄養大学出版部)
日本脂質栄養学会「ランズ栄養功労賞」、日本褥瘡学会「栄養功労賞」など受賞多数。

■ 所属学会・協会
日本臨床栄養協会(常務理事・功労会員)
日本脂質栄養学会(理事・監事)
日本褥瘡学会(功労会員)

編集者:渡部 早紗

編集者:渡部 早紗

管理栄養士・編集者

元 総合病院・給食受託会社勤務。総合病院での直営給食・臨床業務を経て、給食受託会社のエリア指導員として従事。厨房の突発対応やアレルギー管理の緊張感、調理スタッフのマネジメントなど、現場の「リアルな悩み」を熟知している。 自身の転職経験や失敗談をもとに、現在はフリーランスとして活動。同業者に向けて、キャリアの選択肢や、明日から使える現場の知恵を「温かい言葉」で届けることをモットーに執筆・編集を行う。

参考文献・サイト

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