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2025.05.26

疾患別栄養ケア・マネジメントの特徴とポイント <高尿酸血症、痛風>

カバー画像:疾患別栄養ケア・マネジメントの特徴とポイント <高尿酸血症、痛風>

近年、食生活の変化などにより、高尿酸血症や痛風の患者さんは増加の一途をたどり、生活習慣病としての重要性が増しています。管理栄養士・栄養士の皆様におかれましては、これらの疾患に対する適切な栄養指導が求められる場面も多いのではないでしょうか。

本記事では、最新の「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」に基づき、高尿酸血症と痛風の定義、リスク、治療目標から、具体的な食事療法、飲酒制限、運動指導といった生活指導のポイントまでを分かりやすく解説します。日々の栄養ケアマネジメントに直結する実践的な知識を提供し、皆様の専門的な活動の一助となることを目指します。

1.高尿酸血症、痛風とは

高尿酸血症や痛風は生活習慣病として位置づけられています。

痛風患者も年々増加しており、2019年の国民栄養基礎調査では125万人、高尿酸血症患者も1000万人と推定されています。(「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版2022年追補版発刊に寄せて」より)

明治時代初期の日本人には、痛風患者がほとんどみられなかったようですが、近年の日本では、高尿酸血症は成人男性の30%前後、痛風は成人男性の1~1.5%程度と報告されているといわれており、環境要因の変化(生活習慣の変化)によるものだと考えられています。(「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」P.75~)

高尿酸血症や痛風は男性が圧倒的に多い病気ですが、女性の場合は、女性ホルモンの関係で尿酸値がコントロールされています。そのため、女性ホルモンが低下する閉経後などは注意が必要です。(e-ヘルスネット高尿酸血症厚生労働省

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」において、高尿酸血症のリスク因子として、痛風をはじめ、腎障害、尿路結石、メタボリックシンドローム関連、高血圧と脳・心血管病との関係が示されています。生活習慣の変化により女性でも尿酸値が高い場合もみられます。

今回は、高尿酸血症、痛風について「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」をもとに、定義や発症分類、治療目標、生活指導などについてお伝えします。

2.高尿酸血症の定義 

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」では、高尿酸血症について下記のように説明されています。

・高尿酸血症は、尿酸塩沈着症(痛風関節炎、腎障害など)の病因であり、性別や年齢を問わず、血清尿酸値が7.0mg/dLを超えるものと定義されています。
・女性の場合血清尿酸値が7.0mg/dL以下でも、血清尿酸値の上昇によって生活習慣病のリスクが高くなります。そのため潜在する疾患の検査と生活指導を行う対象となりますが、尿酸降下薬の適応にはなりません。


尿酸の飽和濃度に性別や年齢総による差はないため、血清尿酸値の基準値は共通の数値になっています。

3.高尿酸血症のリスク・痛風 

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」によると、下記のようなポイントが示されています。

・痛風発作の必須条件として、高尿酸血症があります。
・ほとんどの高尿酸血症および痛風は多因子疾患であり、遺伝要因や環境要因などがさまざまに関与します。
・環境要因では、高尿酸血症・痛風のリスクとして肥満、アルコール摂取、特定の食品の過剰摂取などがあります。
・痛風発作には、関節内に尿酸一ナトリウム結晶の出現を招く短期的な環境要因も関与します。


痛風は、すでに痛風発作を生じた状態と生じていない無症候性高尿酸血症に区別されています。高尿酸血症が持続する全員に痛風発作が起こるわけではありません。

痛風は、尿酸の蓄積によって起こる疾患であり、尿酸の過剰産生または排泄低下により高尿酸血症(>7.0㎎/dL)が長期間持続した結果、尿酸一ナトリウム結晶が関節内などに沈着し微小痛風結節が生じる場合と、急激な血清尿酸値の変動や外的な刺激などの要因となり、尿酸一ナトリウム結晶が関節腔内にはがれ落ち、白血球により貪食され激しい炎症が起こることで、痛風発作が起こる場合があります。

尿酸生産過剰や排泄低下を招く環境要因として、プリン体の摂取や肉類・内臓類の摂取、飲酒、激しい筋肉運動、果糖の摂取、ストレス、肥満などが知られています。

また、特定の疾患や薬物の使用が高尿酸血症の原因となり痛風発症のリスクとなりうるといわれています。アメリカの前向きコホートではアルコール摂取量が50g/日以上になると痛風の発症リスクが2.5倍も高まるとのデータもあります。

またプリン体の多い食事をすることにより痛風発作のリスクが上昇し、肉類摂取が多いと少ない集団に比べて1.4倍、魚介類が多いと少ない集団に比べて1.5倍痛風発症リスクが高まりますが、乳製品摂取が多いと少ない集団に比べて0.6倍にリスクが低下するというデータが出ています。

またソフトドリンクの摂取が多いと少ない集団に比べて1.9倍リスクが高まり、特に果糖摂取との関連性が強いといわれています。

4.高尿酸血症の病型分類 

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」では、下記のような要点が挙げられています。

・尿中への尿酸排泄能と尿中尿酸排泄量により、高尿酸血症の病型分類が行われます。
・尿酸排泄能の指標には尿酸クリアランスと尿酸分画比(尿酸クリアランス/クレアチニンクリアランス比)が用いられます。
・高尿酸血症は、①尿酸排泄低下型高尿酸血症、②腎負荷型(尿酸産生過剰型と腎外排泄低下型)高尿酸血症、③混合型高尿酸血症に大きく分類されます。
・病型の形成には、遺伝要因と環境要因のどちらも関与しています。


血清尿酸値は尿酸の産生量と腎臓や腸管からの尿酸排泄能のバランスによって規定されます。高尿酸血症は、その産生量と排泄能のバランスが崩れてしまい、体内の尿酸プールが増大する方向に働いたときに発症します。(図1参照)

5.高尿酸血症の治療・目標 

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」では、下記の通り治療のポイントが示されています。

・高尿酸血症の治療では、心血管病など生命予後に関する肥満、高血圧、糖・脂質代謝異常などとともに、高尿酸血症の発症に関連する生活習慣を改善することが重要です。
・薬物治療の適応となるのは、①痛風関節炎を繰り返す患者②痛風結節を認める患者です。血清尿酸値を6.0㎎/dL以下に維持することが望ましいでしょう。
・痛風関節炎を誘発させないためにも、尿酸降下薬は最小量から開始すべきといわれています、必要に応じてコルヒチンカバーを併用します。
・無症候性高尿酸血症への薬物治療を導入する一定の目安は、血清尿酸値8.0㎎/dL以上となります。ただし、適用は慎重にすべきで、現時点で得られているエビデンスや薬物の副作用についての情報を患者に示し、納得いただいたうえで開始することが望ましいとされています。


痛風の基礎疾患である高尿酸血症は遺伝的素因に不適切な生活習慣が加わって発症する生活習慣病の1つであり、治療の原則は生活習慣の改善にあります。(図2参照)
狭義の高尿酸血症の治療目標は、高尿酸血症が持続することで引き起こす関節をはじめとした体組織への尿酸塩沈着を解消し、痛風関節炎や腎障害などの尿酸塩沈着症状を回避することです。

また最終的な治療目標は、肥満や高血圧、糖・脂質代謝異常などの合併症にも考慮して、生活習慣を改善し、必要に応じて薬物治療を導入することで、心血管病のリスクが高い高尿酸血症・痛風患者の生命予後の改善を図ることとなります。

無症候性高尿酸血症患者の対応では生活習慣を是正する食生活の指導が薬物治療よりも優先されます。

6.生活指導 

「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」によると、薬物療法の有無にかかわらず、痛風・高尿酸血症の治療には生活指導が重要視されています。生活指導の基本は、食事療法、飲酒制限、そして運動の推奨です。

食事療法においては、適正エネルギー量の摂取、プリン体や果糖の過剰摂取を控えること、腎機能に応じた適切な飲水が勧められています。

運動は肥満防止やメタボリックシンドロームの抑制に推奨されます。なかでも適切な強度の有酸素運動が推奨されています。

1)食事療法 

BMIや体脂肪率が高くなるとそれに伴って血清尿酸値が高まることが報告されています。また、肥満を解消することで血清尿酸値を下げる効果が期待されています。

高尿酸血症だけでなく生活習慣病すべてに当てはまる食事療法として、適正なエネルギー摂取が重要です。患者の身体活動量や肥満の有無によって適正なエネルギー摂取量は異なっており、はじめに標準体重(kg)を身長(m)(2)×22で計算してから、標準体重1kgあたり、デスクワークが多い職業など軽い労作の方は25~30kcal/kg、立ち仕事が多い職業など活動量が普通の労作の方は30~35kcal/kg、力仕事が多く重い労作の方は35kcal/kgの身体活動量ごとの数値をかけて算出します。

食事中に含まれるプリン体を過剰摂取することで、血清尿酸値を上昇させ痛風リスクを高めてしまうため、とりすぎないように伝えます。プリン体の1日の摂取量は、400㎎程度が推奨されています。

食材中のプリン体濃度が高くても少量に抑えれば良く、反対にビールのように濃度は低くても1回あたりの摂取量が多い食材は影響は大きくなりますので注意しましょう。(表1参照)
プリン体は水溶性のため、高プリン体の食材であっても溶け出した煮汁を飲まないことで摂取量を抑制できます。食品中のプリン体含有量を参考にしながら食材を選んでみましょう。
2019年改定 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 P154 付録① プリン体含量 食品中

・植物の芽や根の先といった細胞分裂の盛んな組織では、プリン体が増加していると考えられています。
・定食(主食+主菜+副菜=一汁二菜または一汁三菜)のような食事で、主菜の肉や魚を80~100g使っている場合、定食1食あたりのプリン体量は約140~180㎎です。プリン体の少ない豆腐や納豆、卵、乳製品を主菜にすると、1食分のプリン体量は30~40mgとなります。プリン体の多い主菜と少ない主菜を組み合わせながらの定食のような食事にするとよいでしょう。
・野菜や海藻類は尿が酸性に傾きすぎるのを防ぐはたらきがあります。副菜は野菜や海藻などを中心にするとよいでしょう。

2)飲酒制限

 「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」によると、アルコール摂取と痛風発作のリスクに関する調査では、少量飲酒者(アルコール12.5g未満)で1.2倍、中程度飲酒者(12.6~37.5g)で1.6倍、大量飲酒者(37.5g以上)で2.6倍とアルコール摂取量により痛風の発症リスクが高まることが分かっているため、適量を超えないよう勧めます。

アルコールは体内で代謝される際に肝臓でATPを消費し、過剰摂取によって肝臓で代謝される際に内因性プリン分解を亢進することにより、血清尿酸値を高めます。

また、アルコール飲料に含まれるプリン体の影響も重要です。酵母や麦芽由来のプリン体を多く含むビールは、蒸留酒やワインと比較して血清尿酸値をより上昇させます。プリン体カット発泡酒は通常の発泡酒と比べて血清尿酸値を上昇させません。
2019年改定 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 P162 付録② プリン体含量 酒類中

血清尿酸値への影響を最低限に保つアルコールの摂取量の目安は、1日あたり日本酒なら1合、ビールは販売元によって異なり350mL~500mL、ウイスキーなら60mL、ワインなら148mLまでなら血清尿酸値を上げないといわれています。

アルコールに関しては、2024年2月に「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」が厚生労働省からでておりますので、ご覧ください。飲酒量については個人差があることや少なければ少ないほど健康に与える害は少ないという報告書も出てきているようです。

3)尿酸代謝に影響する食物

糖やキシリトールは、代謝される際にプリン体の分解が進むため血清尿酸値を上昇させます。

果糖はショ糖(砂糖)の構成成分であり、過剰摂取によって痛風のリスクとなるため、果糖を多く含む甘味飲料や果物ジュースは控えるほうがよいでしょう。甘い果物は果糖を多く含むため、とりすぎないことを勧めます。

近年血清尿酸値を低下させる総合的な食生活スタイルが提案されています。果物、野菜、ナッツ、低脂肪乳製品、全粒粉類や鞘豆類を多くとり、食塩や甘味飲料、肉類の摂取を減らしたDASH食群では、血清尿酸値が低下したデータが出ています。

また、食物繊維の摂取量が多いほど高尿酸血症の発症リスクが低くなります。ほかにも、痛風の重要な合併症である尿路結石の予防のためには、尿のアルカリ化と飲水が有効です。尿のアルカリ化にはクエン酸など有機酸を含む食材が推奨されています。飲水量は1日の尿量を2000mL以上に保つことが勧められており、こまめな飲水が効果的です。ただし、痛風・高尿酸血症に慢性腎臓病が合併した場合は、慎重に飲水量を設定する必要があります。

4)運動と尿酸 

運動は肥満やメタボリックシンドロームを改善することにより血清尿酸値を低下させることが期待されています。一方で、特に短時間の激しい運動では血清尿酸値が上昇してしまいますので注意が必要です。

有酸素運動では、少なくとも10分以上の運動を1日合計30分以上または60分程度行うことが望ましいでしょう。

痛風患者はレジスタンス運動により血清尿酸値が上昇しやすいため、強度の低い運動が勧められます。発汗による脱水予防のために、運動前後の適切な水分補給も必要です。

★高尿酸血症や痛風は、生活習慣病として食事、運動などの生活改善が治療のベースとなります。薬物療法については医師と相談しながら進めていきましょう。

執筆者・編集者

執筆者

医療法人社団 弘健会 菅原医院 渡邊史子

家政系短期大学卒業後、栄養士専門学校入学し、卒業後、給食受託会社にて、病院給食調理業務などに従事。

その後、乳品メーカー、都内の保健センター、病院、企業、健診センターなどにおいて、入院、外来の妊産婦、乳幼児への個別、集団調乳指導や食事相談業務、成人への個別、集団食事相談業務、特定健診保健指導業務、専門学校にて栄養関係講師を経験。

現在、医療法人社団弘健会 菅原医院にて、外来栄養相談、特定保健指導、糖尿病腎症透析予防管理業務などに従事。

■所属学会・協会
日本栄養士会日本臨床栄養協会日本病態栄養学会日本腎臓病協会

■保有資格
管理栄養士、腎臓病療養指導士、中学家庭科二種免許、NR・サプリメントアドバイザー、日本糖尿病療養指導士、中医薬膳専門栄養士

編集者

渡部 早紗(管理栄養士・ライター)

管理栄養士として総合病院で3年間勤務。調理補助から献立作成、栄養管理、栄養指導などを行う。その後、給食会社にて、担当地域の給食センターの巡回指導やマニュアル作成を実施。現在は、フリーランスの管理栄養士として主にライターに従事している。

参考文献・サイト

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