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2022.09.20

2022.09.20

「検食」は給食施設の義務!栄養士が知っておきたいポイントを解説

カバー画像:「検食」は給食施設の義務!栄養士が知っておきたいポイントを解説

こんにちは!管理栄養士歴約10年のえぬこです。今回の記事では、検食の定義の再確認と、実際の質問をベースに、実務で悩みがちなポイントを解説していきます。

「検食なんて国家試験の頻出項目だし、知ってるよ~」という人も多いかもしれません。それでも、エイチエのQ&Aでは、検食で困っている方からの質問がたくさん見られるんですよ。

給食を提供する栄養士たちにとって、給食の安全は重要な責務。検食は、給食を安全に提供する取り組みの1つです。

管理栄養士・栄養士なら誰もが知っている言葉かもしれませんが、今回の記事で一緒に知識を深めていきましょう。

1. 検食は2つの意味で使われることがある

給食現場における「検食」という言葉は、『食べて評価する検食』『検査用保存食』の2つの意味で使います。まずは、2つの意味を確認しておきましょう。

1)給食責任者が食べる「検食」

1つ目は、集団給食における給食が適切かを食べて評価する検食です。

給食の内容が献立に従って作られているか、栄養・衛生・嗜好面で問題がないか、異物は入っていないかを検査するための試食を指します。

検食を実施した後に記録する「検食簿」は、実地指導や保健所の指導でもチェックされる重要書類の1つです。

今回の記事では1つ目の意味の検食を中心に解説します。

2)検査用「保存食」としての検食

2つ目は、検査用の保存食としての検食です。検査用保存食は、食中毒事故の発生が疑われた際、原因究明の検査検体になります。

大量調理衛生管理マニュアルでは、「50gずつ清潔な容器に入れ、マイナス20度以下の環境で2週間以上保存すること」が決められていますよね。

この記事では用語が混乱しないために、1つ目の食べて評価する検食を「検食」、2つ目の検食を「保存食」と呼ぶこととします。

2.給食施設における検食の評価項目とやり方

次に、給食施設における検食の評価項目ややり方を解説します。

検食で評価すべき項目は?

検食で評価する項目は、次の通りです。
・給食の中に異物の混入がないか
・調理過程で適切に加熱・冷却が行われているか
・異臭や味の異常がないか
・味付けや香り、色彩などに配慮されているか
・嗜好に配慮されているか
検食簿では、これらの項目を評価しやすい表が作られています。最近は献立ソフトとの連携で検食簿を出力できるのが一般的です。

検食の実施方法 ~学校編~

学校における検食では「学校給食調理場及び共同調理場の受配校において、あらかじめ責任者を定めて児童生徒の摂食開始時間の30分前までに行うこと。」と決められています。

ここでいう責任者は、管理栄養士や栄養教諭ではなく、原則『校長先生』です。実施する時間も生徒の食べる30分前と決められており、評価する項目も明記されています。

病院や施設よりも細かく厳しい基準が決められていますよ。

2021年10月には、愛知県岡崎市で検食の際に校長先生が異常に気付き、急遽該当する主菜の提供を中止(別のメニューへ代替)した事案がありました。

調べた結果、この給食は大腸菌に汚染されていたのですが、校長先生が気づいたおかげで生徒に提供せずに済んだのです。

校長先生が検食を行うことの重要性が再認識されたのではないでしょうか。

検食の実施方法 ~病院編~

病院では、「入院時食事療養費に関わる費用額の算定に関する基準」で、医師、管理栄養士または栄養士が検食を行うように義務づけられています。

学校のように時間の決まりはありませんが、その所見を検食簿に記録しなければなりません。

私の勤務した病院では、昼食を医師と管理栄養士、夕食と朝食を当直の医師と調理師が検食していました。

病院によっては、細かいマニュアルを作成し、複数の担当者を決めている職場もあれば、医師がなかなか検食をしてくれずに困っている栄養士さんもいるようです。

検食の実施方法 ~介護施設編~

介護保険施設でも、「医師又は栄養士等による検食が毎食前行われ、その所見が検食簿に記載されなければならないこと。」が決められています。

介護施設では医師または栄養士等が実施すれば良いので、医師の義務ではありません。また、「等」がついているので、栄養士や管理栄養士でなくとも検食を実施して良いと解釈できます。

さらに、介護保険では、栄養ケア・マネジメントを行っている施設において必要ない書類が複数定められており、検食簿も必要ないとされています。

3.実際にあった検食についてのQ&A

次に、エイチエのQ&Aに投稿された検食についての話題を見ていきましょう。質問内容を簡単にまとめて、私ならどう回答するかを解説していきますね。

Q1.検食は誰がするべきか?

相談内容
施設の管理栄養士です。検食は施設長の役割ですが、突然の欠勤や外出で検食をしてもらえないことがあります。

違う職種の人に検食を頼んだところ「他の人は職員食として費用を払っているのに検食簿を書くのはおかしいと」言われてしまいました。

管理栄養士としては他職種の意見を聞きたい、施設長にはだれか一人に任せたら良いと言われてしまう…。みなさんの施設はどうですか?

検食は誰が…?

ANSWER
なんだか施設長がわがまま(施設にいるときは昼食代わりにしたい)に見えてしまう質問ですね…。

お金を払って検食簿を書くのはおかしいという別の職員の主張も正しいようで、管理栄養士さんとしては苦しい状況だと思います。

まず、施設では検食をする職種が限定されていないので、施設長に固定する必要はありませんね。多くの職種の意見を聞ける環境がベストではないかなと思います。私なら、他職種が検食をできる環境づくりに力を入れたいです。

私は、実地指導の担当者に「複数の意見を取り入れるほうが良いと指導された」ことがあります。

役職者の意見と反対の環境を作ることは難しいかもしれませんが、自治体の指導などを上手に活用すれば、波風立てずに他の職種の意見を取り入れられる環境が作れるのではないでしょうか。

Q2.医師と管理栄養士の検食簿は別に用意していますか?

相談内容
病院の栄養士です。医師の13時の昼食が検食となるため配膳前に検食が出来ず、実地指導で指摘を受けて困っています。

実地指導では医師用と栄養士用を作って対応するように指導を受けたのですが、みなさんはどうしていますか?

検食について

ANSWER

私が病院に勤務していた頃は、医師と栄養士の検食簿を2部用意し、栄養士は提供前に検食をしていました。医師には、昼食であれば「10時50分から11時40分までに実施をお願いします」と注意書きをしていましたね。

時々、13時や14時で記録する医師もいましたが、その場合は修正せずそのままにしておき、実地指導でも現状をそのままお伝えしていたようです。上司から聞いた話ですが、特に減算対象になったことはありません。

検食簿のあとがきや配膳後の実施は、当然NGです。入院時食事療養費を算定しているなら、決まりを守っていないことになります。

栄養科だけの問題ではないので、事務部門や医師も含めて職場のルールを決めるようにしましょう。

Q3.検食簿が不要になる施設があるって聞いたけどほんと?

相談内容
介護施設に勤務する管理栄養士です。栄養マネジメント加算を算定していたら検食は必要ないと老人福祉法で決められていると聞きましたが、法令根拠が見当たりません。文書はどこにありますか?

検食簿

ANSWER
栄養マネジメント加算は令和3年から廃止されているので、栄養ケア・マネジメントが義務付けられている特養や老健、介護療養院などはこれに該当します。

最も明確に記載されている資料は、平成17年の通達です。検食簿、喫食調査結果、入退院簿、食料消費日計、給与栄養目標量、年齢構成表は不要とされています。

「介護報酬の解釈」にも記載されているので、確認しておきましょう。

ただし、給食はいろいろな法令の元で運営されているので、指導担当者によって解釈が異なる部分があります。不安な場合は、都道府県の担当者に確認しておくようにしましょう。
*先輩管理栄養士の経験談
私の場合は、保健所の栄養士から「通所の方は栄養ケア・マネジメントを実施していないことになるので、通所サービスを提供しているなら検食簿は必要です」と言われたことがあります。

また、別の担当者からは「そんな例外はありません」と回答された経験も…。

私は、介護保険ベースで指導をしてくれる県の介護保険課に問い合わせをしてみようと思っています。

4.検査用「保存食」が必要な理由と根拠

次に、保存食について解説します。

保存食は、食中毒等が発生した際、原因究明のために必要なものです。お弁当屋さんやお惣菜屋さんでも規定はありますが、給食施設が一番厳しい規定で運用しています。

皆さんもご存じの通り、大量調理衛生管理マニュアルでは、「50gずつ清潔な容器に入れ、マイナス20度以下の環境で2週間以上保存すること」が決められていますよね。

この規定は、1996年に堺市でおきたO-157の食中毒事故を受けてできた決まりです。事故を発生させないことが重要ですが、事故の疑いが起きたときに適切な検査ができる環境づくりも栄養士の責務です。

私も給食委託会社さんから「すいません。発注ミスでおやつが2つ足りないのですが、保存食と検食無しでもいいですか」という連絡を受けたことがあります。

しかし、いかなるときも「保存食をとらない」という選択はありません。

検食を保存しておくことは、原因究明だけでなく、私たちの身を守ることにもなります。保存食を忘れず採取し、保管し、期限後に廃棄するシステムを作っておきましょう。

「取り忘れた!」では済まされない事態が起こることもあります。

5.さいごに

検食・保存食については、単なる作業ではなく、それが必要となった背景や法令根拠、実際の事例と合わせて学習しておきましょう。

学習を深めると、検食時間や担当者、記録方法などについての知識が深まるので、業務で迷うことも減りますよ。

それでも誰かに相談したいときは、エイチエのQ&Aを活用して、不安を減らしていってくださいね。

みんなのQ&A

検食や保存食の知識は、給食会社や病院、介護施設等どこで働くことになっても大切な知識なので、キャリアチェンジをしても、学んだことが無駄になることはありません。

キャリアチェンジしたくなったときは、ぜひ栄養士人材バンクを活用してくださいね。

参考文献・サイト

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えぬこ

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