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2022.09.15

2022.09.15

栄養ケア・マネジメント ~基本をおさらいしよう~

カバー画像:栄養ケア・マネジメント ~基本をおさらいしよう~

医療・介護業界に従事する管理栄養士のコア業務ともいえる『栄養ケア・マネジメント』。役割に就いたばかりで戸惑う方や、ひとり職場で不安をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、①スクリーニング②アセスメント③栄養ケア計画④モニタリング・評価・修正に分けて、栄養ケア・マネジメントの基本を解説していきます。

はじめに

近年、医療・介護の分野では栄養関連の仕事に対する診療報酬の新規導入・改訂が目まぐるしく、疾病構造の変化、治療技術の進歩とともに、効率化や効果(アウトカム)を求められています。

さらに対象者ニーズの多様化もあり、各々の専門性を集約したチーム医療が進められています。

栄養ケア・マネジメント(Nutrition Care Management:NCM)の定義はヘルスケアの一環として、個々人に最適な栄養ケアを行い、業務遂行での機能や方法・手順を効率的に行うシステムです。

そして栄養状態を改善し対象者のQOL(quality of life)向上をゴール(目標)としています。このNCM構造は栄養スクリーニング・栄養アセスメント・栄養ケア計画・実施・チェック・モニタリング・評価・品質改善の修正で構成されます。
そのためには栄養アセスメントの手法を学び、健康者・患者・高齢者・幼児など、各世代や疾患ごとの栄養状態を的確に評価・判定する能力が必要であり、その指標や方法を用いて栄養ケア・マネジメントが展開され、栄養治療へと繋がっていきます。そのためには、初期介入にスクリーニング(SGA)は欠かせません。

1.栄養スクリーニング

栄養スクリーニングは主観的包括的評価(Subjective Global Assessment:SGA)を用います。

医療・介護施設でSGAは、入院・入所者に速やかに介入する栄養評価法であり、評価者(管理栄養士など)が、患者(家族)の申告情報や、主観的に患者の皮膚・外見状況などから栄養状態を判定します。

このSGA活用方法では
1)栄養に関して治療を必要とするかを決定する。(低栄養状態かその恐れがあるか?)
2)急性の栄養障害か,慢性的な栄養不良かを判断する。 

スクリーニング手法として医療施設ではSGAが広く一般的な患者(成人、高齢者)に用いられ、高齢者施設ではMNA-SF(Mini Nutrition Assessment-Short Form)が判定ツールとして用いられています。 

実際に介入した重度栄養障害ありとSGAした、初期スクリーニリング(SGA)の介入例を表1.に示しました。

2.栄養アセスメント

栄養アセスメントはODA:客観的データ評価(Objective Data Assessment)を用いて評価します。一般的には患者さんの栄養状態を評価し、栄養に関する問題点をあきらかにすることを目的としています。

また、高齢者でMNA‐SFを使った場合は、栄養アセスメントとして、MNAフルバージョン(16項目、16ポイント)を使用します。Nestle Nutrition InstituteなどにMNA用紙が記載されていますので、参考にして下さい。

栄養管理の一環としての栄養アセスメントは、栄養状態の問診・食事調査・身体計測・臨床検査・栄養補給法などから評価するもので、栄養アセスメントの指標として客観的な根拠に基づく指標として、表3.に示した方法の一覧を参考して評価します。

具体的には次のようになります。

1)臨床診査
問診(患者さんの主訴)、生活背景など傾聴し、身体観察(皮膚、毛髪、爪など)から評価しましょう。

2)身体計測値
身長・体重・BMI(体格指数)、日常体重との比(%)、3ヵ月前の減少率・理想体重などで評価します。

3)血液生化学的検査値
TP・Alb・RTP・WBC・リンパ球数(%)・BUN・Cr・CHI・TC・TG・Ht・Hbなどの血液・生化学検査のデータから病態・病期によって適宜使用します。

4)栄養補給の状況
基礎エネルギー量(BEE)・活動係数(AI)・損傷(ストレス)係数(SI)などから評価し、必要エネルギー量や栄養量が算定できます。

5)食事摂取状況調査
食事摂取量や喫食量など、食事記録質問票や自記式食物頻度調査法(FFQ、BDHQ)など用いて、食事摂取状況の確認が重要となります。
栄養に関する問題点には低栄養や栄養過多、特定の栄養素の過不足などがありますが、栄養アセスメントの結果、患者さんの栄養状態に問題があれば、その問題を解決するための適切な栄養ケアプランを策定しましょう。

3.栄養ケア計画(栄養管理計画)

栄養治療へとつながる栄養スクリーニング、栄養アセスメントは、栄養状態に関するリスク、栄養管理上の問題点とともに、栄養状態の再評価の時期についても予定をして、退院時の総合評価までを計画していきます。(厚労省 別紙23 書式参照)
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▼栄養管理計画書 別紙23(厚労省 書式)平成30年改訂参照
https://www.dietitian.or.jp/assets/data/medical-fee/0000196315_292.pdf
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このように医療機関(診療所)では、入院時食事療養制度で入院した患者すべてに栄養スクリーニングをして、特別な栄養管理が必要とされた患者には「栄養管理計画」を作成し、介護・障害者施設では栄養ケア・マネジメントの一環として入所者、通所・居宅も含めた利用者の「栄養ケア計画」を作成します。

介護報酬における「栄養ケア計画」通所・居宅の書式や先行事例など参考にして下さい。
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▼厚生労働省 予防給付 栄養改善サービス 様式例 記入のてびき
https://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-1e_0004.pdf
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栄養管理計画(栄養ケア計画)には、栄養アセスメントから得られた情報で代謝学的に算出するのが理想です。

1)必要エネルギー量(TEE)
体重・BMI・体重減少率などを考慮して、肥満・やせを是正しながら決定する。算出はHaris Benedict式から基礎代謝量(BEE)を算出するか、日本人の食事摂取基準などから決める。

2)活動係数(AI)
対象者の活動状況により違い、基礎代謝量(BEE)に「寝たきり、ADL自立、リハビリ活動開始」(表6)などの活動係数を乗じて算出する。

3)ストレス係数(SI)
疾患の状態や病態によりエネルギー量は変動し、この変動を損傷係数(ストレス係数)と言う。

活動係数やストレス係数などについては、表6.を参照しながら、その人に適切な投与栄養量を算出します。

これらによって算出された栄養投与量と、対象者の摂食(摂食嚥下機能)状況によって栄養投与方法(経口・経腸・経静脈)が図3.のアルゴリズムに沿って選択されます。
以上のように、栄養の問題点、投与方法(経口・経腸・経静脈)、栄養ケアプラン実施後は、再び栄養アセスメントを行って、プランの再評価や修正を行っていきます。

4.モニタリング・評価・修正

栄養管理の経過を知るモニタリングとは、予め設定しておいた栄養計画や目標、指示内容について、栄養補給の経過や進捗状況を随時チェックすることを指します。

栄養管理におけるモニタリングでは
①栄養管理計画に基づいた補給が施行されたか
②計画した補給方法でリスク発生がないか
③栄養状態の推移や有害事象を確認する
などを評価していき、安定した臨床経過を得ることを目指して実施して下さい。

栄養モニタリングの一連の流れとしては、栄養アセスメントに基づいた栄養補給(食事)計画が実施され、その栄養補給の効果について、定期的な経過のチェック(モニタリング)を行いますが、このモニタリング項目は栄養状態Aと全身状態Bのモニタリングに大きく2つに分けることができます。

A)栄養状態のモニタリング

•短期モニタリング項目
食事摂取状況(投与量、食事形態)
身体計測(身長、体重、BMI:体格指数、体重変化など)
血液生化学検査(REP、血糖、TG、CRPなど)

•長期モニタリング項目
食事摂取状況、栄養補給量
身体計測(TSF:上腕周囲長、AC:上腕三頭筋皮下脂肪厚、体重変化率、ウエスト・ヒップ比、握力など)
血液生化学検査(総たんぱく、アルブミン、LDL-C、CRP、電解質、肝・腎機能など)
尿検査、尿量、尿比重

B)全身状態のモニタリング

•短期モニタリング項目
バイタルサイン(体温、脈拍、呼吸数、血圧、意識状態)
消化器症状(嘔気・嘔吐、下痢、便秘)

•長期モニタリング項目
皮膚緊張、皮膚色調、皮膚湿乾、皮膚弾力性、浮腫
食欲不振、嗜好の変化
口腔内の状況、義歯の状態、嚥下・咀嚼機能
行動変容、認知度、ADL(日常生活活動)
満足度、QOL、NBM(ナラティブ・ベースト・メディシン)

このように大きく2つのモニタリング項目(A、B)と、短期・長期のモニタリングの把握が欠かせません。
このように「栄養管理計画」「栄養ケア計画」による栄養管理を施行し、その経過をモニタリングしていく役割が医療・介護・地域の栄養管理において求められます。

栄養管理の内容が、治療計画としての成果があがらない場合は、栄養アセスメントの再評価に戻り(図1.参照)修正していく事も重要となります。

在宅・地域での継続的な品質管理には、総合的栄養指標として簡便な予後指数NRI(nutrition risk index)という方法(表8.参照)も駆使し、栄養ケア・マネジメントの基本としていきましょう。
近年は、栄養管理を行うプロセスを標準化して、理論的に展開する栄養ケアプロセス(Nutrition Care Process:NCP)が展開されてきました。(図1.参照)
臨床現場や健康管理の実践は、病院や施設・在宅でヒトの栄養状態を把握し、疾病を予防・治療するための栄養チーム(Nutrition Support Team)として適切な栄養評価をし、健康・栄養教育を行って、より良い栄養状態を維持していく活躍があります。

以上
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▼執筆者
所属:人間総合科学大学 人間科学部 健康栄養学科 学科長
役職:教授
白石 弘美 先生

▼編集者
渡部 早紗(管理栄養士)
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