1.はじめに
肝臓病における栄養管理は、病態や疾患の進行度に応じた対応が重要です。
日本消化器病学会と日本肝臓学会より¹⁾、2024年8月にNAFLDおよびNASHの名称変更が発表されました。その背景は "alcohol"や"fatty"という言葉が入った病名が誤解を招きやすく、不適切であるためです。
今回は、「脂肪性肝疾患(SLD)」、「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD(マッスルディ)/旧NAFLD )」、「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH(マッシュ)/旧NASH)」や「アルコール関連肝疾患(ALD)」、について確認し、主要な栄養管理のポイントをNAFLD/NASH診療ガイドライン2020に基づき、解説します²⁻³⁾。
また本稿では肝臓病の最終的な病態である肝硬変とは分けて解説を行います。
日本消化器病学会と日本肝臓学会より¹⁾、2024年8月にNAFLDおよびNASHの名称変更が発表されました。その背景は "alcohol"や"fatty"という言葉が入った病名が誤解を招きやすく、不適切であるためです。
今回は、「脂肪性肝疾患(SLD)」、「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD(マッスルディ)/旧NAFLD )」、「代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH(マッシュ)/旧NASH)」や「アルコール関連肝疾患(ALD)」、について確認し、主要な栄養管理のポイントをNAFLD/NASH診療ガイドライン2020に基づき、解説します²⁻³⁾。
また本稿では肝臓病の最終的な病態である肝硬変とは分けて解説を行います。
2.肝臓病の診断と分類
1) 脂肪肝(Steatosis)と脂肪性肝疾患:SLD(Steatotic Liver Disease)
脂肪肝は肝臓に脂肪(主に中性脂肪)が5%以上蓄積している状態を指します。一方、脂肪性肝疾患(SLD)は、肝臓に過剰な脂肪が蓄積した「脂肪肝」という単なる症状だけでなく、肝炎や線維化などのさまざまな病因を包含した包括的な疾患分類の新しい概念です(図1・図2)。
原因はアルコールの過剰摂取や肥満、糖尿病、脂質異常症などの代謝異常、他に薬剤性や栄養不足(低栄養・急速な減量)などがあります。
原因はアルコールの過剰摂取や肥満、糖尿病、脂質異常症などの代謝異常、他に薬剤性や栄養不足(低栄養・急速な減量)などがあります。
2)代謝機能障害関連脂肪肝疾患:MASLD(マッスルディ)(Metabolic-Associated Steatotic Liver Disease)
従来の「NAFLD(非アルコール性脂肪肝疾患)」に代わる新しい名称で、代謝異常に関連する脂肪肝疾患です。肝臓に脂肪が蓄積し、肝炎や肝硬変へと進行することがあります。
肥満や糖尿病が増加していることから、肝疾患の主要因である「代謝異常」を重視するようになり、アルコール摂取量の有無に関わらず診断されるのが特徴です。従来のNAFLDはアルコールの有無や脂肪肝の進行など否定した「除外診断」だったのに対し、MASLDは代謝異常に焦点を当てた「積極的診断」です。
そのため、診断基準には「少なくとも一つの心血管代謝危険因子があること」という条件がつきました。つまり、下記のメタボリックシンドロームの基準のうち、5つの項目の1つ以上を有することです。
適切な生活習慣の改善、特に栄養管理と運動療法が最も効果的な治療法とされ、進行を予防するために早期診断と適切な生活習慣の改善が重要です。
肥満や糖尿病が増加していることから、肝疾患の主要因である「代謝異常」を重視するようになり、アルコール摂取量の有無に関わらず診断されるのが特徴です。従来のNAFLDはアルコールの有無や脂肪肝の進行など否定した「除外診断」だったのに対し、MASLDは代謝異常に焦点を当てた「積極的診断」です。
そのため、診断基準には「少なくとも一つの心血管代謝危険因子があること」という条件がつきました。つまり、下記のメタボリックシンドロームの基準のうち、5つの項目の1つ以上を有することです。
適切な生活習慣の改善、特に栄養管理と運動療法が最も効果的な治療法とされ、進行を予防するために早期診断と適切な生活習慣の改善が重要です。

3)MetALD:代謝機能障害アルコール関連肝疾患(MASLD and increased alcohol intake)
MetALDは、アルコール摂取(男性210~420g/週(30~60g/日)、女性140~350g/週(20~50g/日))に加え、肥満、インスリン抵抗性、糖尿病、高血圧、脂質異常症などの代謝機能の障害が重なることで起こる肝疾患です。
代謝機能の問題とアルコールが共に肝臓に影響を与えるため、新しい病態として注目され、治療には両方のリスク因子に対処する必要となります。飲酒量の目安は図3を参照ください。
代謝機能の問題とアルコールが共に肝臓に影響を与えるため、新しい病態として注目され、治療には両方のリスク因子に対処する必要となります。飲酒量の目安は図3を参照ください。
4)アルコール関連肝疾患:ALD(Alcohol-Related Liver Disease)
長期間にわたる過剰なアルコール摂取(男性420g以上/週(60g以上/日)、女性350g以上/週(50g以上/日))が原因で生じる肝臓疾患の総称です。
アルコールが肝臓で代謝される際、アセトアルデヒドや酸化ストレスが発生し、肝細胞に障害を与えます。長期的には炎症や線維化を引き起こし、最終的に肝硬変や肝臓がんへ進展します。
治療においては、まずは禁酒の徹底です。禁酒により肝炎や脂肪肝の改善が期待できるほか、肝硬変まで進行している場合でも、禁酒により病態の進行を抑えられる可能性があります(図4)。
アルコールが肝臓で代謝される際、アセトアルデヒドや酸化ストレスが発生し、肝細胞に障害を与えます。長期的には炎症や線維化を引き起こし、最終的に肝硬変や肝臓がんへ進展します。
治療においては、まずは禁酒の徹底です。禁酒により肝炎や脂肪肝の改善が期待できるほか、肝硬変まで進行している場合でも、禁酒により病態の進行を抑えられる可能性があります(図4)。
<メモ解説>
アルコール量が参考から見つからない場合、純アルコールの摂取量を計算から求めることができます。
(お酒の量:○○ml)×[(アルコール度数:△%)÷100]×0.8※=(純アルコール量:□□g)
※アルコールの比
アルコール量が参考から見つからない場合、純アルコールの摂取量を計算から求めることができます。
(お酒の量:○○ml)×[(アルコール度数:△%)÷100]×0.8※=(純アルコール量:□□g)
※アルコールの比
5)特定成因脂肪性肝疾患(Specific Aetiology Steatotic Liver Disease)
特定の薬剤(コルチコステロイドやメトトレキサート、アミオダロンなど肝臓での脂肪代謝に影響を及ぼす薬剤)やウィルソン病などの遺伝的要因、リポジストロフィー症候群やクッシング症候群など肝脂肪蓄積を引き起こす全身性疾患、短腸症候群や長期絶食など特異的な栄養状態など明確に成因が判明している場合に診断されます。
治療では、原因となる疾患や外的要因の除去・管理が優先され、MASLDの治療アプローチとは異なります。基礎疾患の治療と並行して、適切な栄養管理を行い、肝機能の回復を支援する必要があります。
治療では、原因となる疾患や外的要因の除去・管理が優先され、MASLDの治療アプローチとは異なります。基礎疾患の治療と並行して、適切な栄養管理を行い、肝機能の回復を支援する必要があります。
6)成因不明脂肪性肝疾患(Cryptogenic Steatotic Liver Disease)
原因が特定されない脂肪性肝疾患です。肝臓に脂肪が蓄積しているものの、従来のリスク因子(アルコールや代謝機能障害)が確認できない場合に診断されることがあります。MASLDやMASHと同様の栄養管理アプローチを取りつつ、背景因子を可能な限り特定して対応することが重要です。
7)代謝機能障害関連脂肪性肝疾患:MASH(マッシュ)(Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis)
MASHは、前述した図1・図2では示されていませんが、MASLDの進行形態であり、脂肪肝に加えて炎症や肝細胞の損傷が見られる状態を指します。放置すると線維化、肝硬変、最終的には肝細胞がんに進展するリスクがあります。従来の「NASH(非アルコール性脂肪肝炎)」に相当する病態です。代謝異常を強調することで、治療の標的(ターゲット)が明確になり、早期介入がしやすくなります。
また、生活習慣の改善が進行を防ぎます。特に栄養管理や体重減少、運動が治療の中心となり、進行した場合は医療的な管理となります。
また、生活習慣の改善が進行を防ぎます。特に栄養管理や体重減少、運動が治療の中心となり、進行した場合は医療的な管理となります。
2.肝臓病における栄養管理のポイント
基本的な栄養管理のポイントは「肝臓の負担を減らす」、「代謝機能を改善する」、「栄養不足や過剰を避ける」という三本柱ですが、疾患ごとの病態や進行度に応じて重点やアプローチが異なります。
脂肪性肝疾患全体で共通するポイントと、それぞれの特徴的なポイントを整理しましょう。
脂肪性肝疾患全体で共通するポイントと、それぞれの特徴的なポイントを整理しましょう。
1)適切なエネルギー摂取の管理とバランスの取れた栄養素の摂取
1-エネルギー
・基本方針:過剰摂取を避けつつ、エネルギー不足を防ぐ
・必要量:標準体重×25~35 kcal/kg/日
・肥満を伴う肝疾患(MASLD、MASH)
標準体重×20~25kcal/kg/日の範囲でエネルギー制限を行い、体重減少(5~10%)を目指します。
適切なエネルギー量を確保することで、肝機能の維持、体重減少や筋肉量減少(サルコペニア)の予防、合併症の管理につながります。
肥満がある場合、体重を5~10%減少させることで肝臓内脂肪量を効果的に減少させる6)と報告されています。ただし、急激な体重減少(1週間に1kg以上)は肝臓に脂肪酸が流入し、肝炎や肝機能を悪化させるリスクがあるため避けます。
2-炭水化物
基本方針:血糖コントロールを意識し、過剰な精製された炭水化物(砂糖、白米、菓子類)を避ける
目安:炭水化物の必要量は総エネルギーの50~60%程度、肥満や糖尿病を合併する場合は総エネルギーの50%~55%前後に調整する
・緩やかに吸収される低GI食品を中心に選ぶ
・食物繊維を多く含む食品(野菜、果物、全粒穀物など)を摂取
炭水化物を主要エネルギー源とし、筋肉量の減少を防ぎます。また肝臓の糖新生能力が低下して発症する低血糖の予防のため、炭水化物の種類や摂取タイミングに配慮する必要があります。
・基本方針:過剰摂取を避けつつ、エネルギー不足を防ぐ
・必要量:標準体重×25~35 kcal/kg/日
・肥満を伴う肝疾患(MASLD、MASH)
標準体重×20~25kcal/kg/日の範囲でエネルギー制限を行い、体重減少(5~10%)を目指します。
適切なエネルギー量を確保することで、肝機能の維持、体重減少や筋肉量減少(サルコペニア)の予防、合併症の管理につながります。
肥満がある場合、体重を5~10%減少させることで肝臓内脂肪量を効果的に減少させる6)と報告されています。ただし、急激な体重減少(1週間に1kg以上)は肝臓に脂肪酸が流入し、肝炎や肝機能を悪化させるリスクがあるため避けます。
2-炭水化物
基本方針:血糖コントロールを意識し、過剰な精製された炭水化物(砂糖、白米、菓子類)を避ける
目安:炭水化物の必要量は総エネルギーの50~60%程度、肥満や糖尿病を合併する場合は総エネルギーの50%~55%前後に調整する
・緩やかに吸収される低GI食品を中心に選ぶ
・食物繊維を多く含む食品(野菜、果物、全粒穀物など)を摂取
炭水化物を主要エネルギー源とし、筋肉量の減少を防ぎます。また肝臓の糖新生能力が低下して発症する低血糖の予防のため、炭水化物の種類や摂取タイミングに配慮する必要があります。
<メモ解説>
GI食は、「グリセミック・インデックス」(Glycemic Index:GI)の値を意識した食品や食事のことを指します。
GI値は、食品が食後の血糖値に与える影響を数値で示したものです。
この値は、炭水化物を含む食品が体内でどれだけ早く糖に変わり、血糖値を上昇させるかを評価するために用いられます。
低GI食品(玄米、全粒穀物、(オートミール)、さつまいも、豆類など)選ぶことで、食後の血糖値の急上昇を抑え、血糖コントロールや体重管理に効果的です。
GI食は、「グリセミック・インデックス」(Glycemic Index:GI)の値を意識した食品や食事のことを指します。
GI値は、食品が食後の血糖値に与える影響を数値で示したものです。
この値は、炭水化物を含む食品が体内でどれだけ早く糖に変わり、血糖値を上昇させるかを評価するために用いられます。
低GI食品(玄米、全粒穀物、(オートミール)、さつまいも、豆類など)選ぶことで、食後の血糖値の急上昇を抑え、血糖コントロールや体重管理に効果的です。
3-たんぱく質
基本方針:筋肉量の維持を目的に、十分な量を摂取
目安::1.2~1.5g/kg/日(非代償性肝硬変ではさらに調整が必要)
肝機能障害が進行している患者や高齢者では、たんぱく質摂取量が不足しやすいため、サルコペニアや筋肉量の低下を防ぐために食事内容の見直し、高たんぱく食品の積極的な摂取を意識しましょう。特にMASHや肝硬変を伴う場合は分岐鎖アミノ酸(BCAA)の補充を考慮します。
4-脂質
基本方針:脂肪の蓄積を防ぐため、適切な脂質バランスを保つ
目安:総エネルギーの20~30%程度を推奨
飽和脂肪酸(動物性脂質)を控え、不飽和脂肪酸(植物性やオメガ3脂肪酸など)を優先
脂質の過剰な摂取は脂肪肝の進行や肥満やメタボリックシンドロームの助長、炎症や肝線維化へ進展する恐れがあります。消化吸収の良い中鎖脂肪酸(MCT)を活用し、エネルギーの充足を目指します。
5-ビタミン・ミネラル(図4)
肝硬変やMASH患者の場合、ビタミン・ミネラルの欠乏症が進行しやすいため、定期的な血液検査でモニタリングが必要です。
ビタミンA:肝臓での貯蔵量は多いが、肝機能低下時には不足しやすい
ビタミンB1:特にALDでは欠乏が起こりやすく、補充が必要
ビタミンB12:肝硬変や胃腸障害では吸収低下に注意
ビタミンC:強力な抗酸化作用で活性酸素を直接除去し肝細胞の炎症を抑制する作用もあり
ビタミンD:肝疾患では胆汁うっ滞性肝疾患や吸収障害の影響で欠乏しやすく、不足すると脂肪肝の進行リスクが高まる
ビタミンE:強力な抗酸化作用を持ち、脂肪肝や肝硬変などの肝疾患で酸化ストレスを軽減。特にMASLD(旧:NAFLD)において肝機能の改善が報告⁷⁾
葉酸:細胞分裂や修復に必須、肝硬変では不足しやすい
亜鉛:肝性脳症のリスクを軽減、肝硬変では不足しやすい
セレン:抗酸化作用を持つ酵素(グルタチオンペルオキシダーゼ)の構成成分として、活性酸素を解毒する
カルシウム:肝機能低下やビタミンD不足により骨量減少が進みやすい
ナトリウム:体液バランスを維持。肝硬変で腹水がある場合、塩分制限食が必要
基本方針:筋肉量の維持を目的に、十分な量を摂取
目安::1.2~1.5g/kg/日(非代償性肝硬変ではさらに調整が必要)
肝機能障害が進行している患者や高齢者では、たんぱく質摂取量が不足しやすいため、サルコペニアや筋肉量の低下を防ぐために食事内容の見直し、高たんぱく食品の積極的な摂取を意識しましょう。特にMASHや肝硬変を伴う場合は分岐鎖アミノ酸(BCAA)の補充を考慮します。
4-脂質
基本方針:脂肪の蓄積を防ぐため、適切な脂質バランスを保つ
目安:総エネルギーの20~30%程度を推奨
飽和脂肪酸(動物性脂質)を控え、不飽和脂肪酸(植物性やオメガ3脂肪酸など)を優先
脂質の過剰な摂取は脂肪肝の進行や肥満やメタボリックシンドロームの助長、炎症や肝線維化へ進展する恐れがあります。消化吸収の良い中鎖脂肪酸(MCT)を活用し、エネルギーの充足を目指します。
5-ビタミン・ミネラル(図4)
肝硬変やMASH患者の場合、ビタミン・ミネラルの欠乏症が進行しやすいため、定期的な血液検査でモニタリングが必要です。
ビタミンA:肝臓での貯蔵量は多いが、肝機能低下時には不足しやすい
ビタミンB1:特にALDでは欠乏が起こりやすく、補充が必要
ビタミンB12:肝硬変や胃腸障害では吸収低下に注意
ビタミンC:強力な抗酸化作用で活性酸素を直接除去し肝細胞の炎症を抑制する作用もあり
ビタミンD:肝疾患では胆汁うっ滞性肝疾患や吸収障害の影響で欠乏しやすく、不足すると脂肪肝の進行リスクが高まる
ビタミンE:強力な抗酸化作用を持ち、脂肪肝や肝硬変などの肝疾患で酸化ストレスを軽減。特にMASLD(旧:NAFLD)において肝機能の改善が報告⁷⁾
葉酸:細胞分裂や修復に必須、肝硬変では不足しやすい
亜鉛:肝性脳症のリスクを軽減、肝硬変では不足しやすい
セレン:抗酸化作用を持つ酵素(グルタチオンペルオキシダーゼ)の構成成分として、活性酸素を解毒する
カルシウム:肝機能低下やビタミンD不足により骨量減少が進みやすい
ナトリウム:体液バランスを維持。肝硬変で腹水がある場合、塩分制限食が必要
2)アルコール摂取制限
SLDでは、アルコール摂取が肝臓への負担を増大させ、疾患の進行や合併症リスクを高める可能性があるため、MASH、MetALDで「完全禁酒」が推奨されています。MASLDにおいても飲酒は可能な限り控えるか、週1~2日程度の「休肝日」が許容範囲です。
そのため、禁酒や制限が持続できるよう、病態への理解や代替飲料(ノンアルコール飲料や炭酸水など)の提案、社会的支援を促すなどサポートすることが治療効果を高める鍵となります。
そのため、禁酒や制限が持続できるよう、病態への理解や代替飲料(ノンアルコール飲料や炭酸水など)の提案、社会的支援を促すなどサポートすることが治療効果を高める鍵となります。
3.疾患ごとの特徴的なポイント
1)MASLD
・エネルギー制限:体重管理(体重の5~10%減少)が最重要です。
・糖質管理:精製された糖質(白米、砂糖)を減らし、低GI食品を中心にしましょう。
・脂質の質を重視:飽和脂肪酸を控え、不飽和脂肪酸を増やしましょう。
・糖質管理:精製された糖質(白米、砂糖)を減らし、低GI食品を中心にしましょう。
・脂質の質を重視:飽和脂肪酸を控え、不飽和脂肪酸を増やしましょう。
2) MASH
・抗炎症作用のある食品(オメガ3脂肪酸(青魚、亜麻仁油)や抗酸化作用の高い食品(ベリー類、緑茶、ナッツ)、などの食事を積極的に取り入れましょう。
・減量(体重の7~10%減少)すること。ただし過度な減量はエネルギーや栄養素不足による、炎症や肝繊維化の進行を防ぐために控えましょう。
・減量(体重の7~10%減少)すること。ただし過度な減量はエネルギーや栄養素不足による、炎症や肝繊維化の進行を防ぐために控えましょう。
3)ALD
・絶対禁酒が最優先です。
・栄養不足や筋肉量減少(サルコペニア)が問題となりやすいため、高たんぱく食は体重1.2~1.5 g/kgが推奨されます。
・代謝に有益な栄養素であるビタミンB1、葉酸、亜鉛の不足を補いましょう。
・栄養不足や筋肉量減少(サルコペニア)が問題となりやすいため、高たんぱく食は体重1.2~1.5 g/kgが推奨されます。
・代謝に有益な栄養素であるビタミンB1、葉酸、亜鉛の不足を補いましょう。
4)MetALD
・ALDとMASLDの複合型であることを念頭に、禁酒と代謝改善の両方を目指す栄養管理が必要です。
・体重管理と血糖値コントロールに注力しましょう。
・体重管理と血糖値コントロールに注力しましょう。
5)SLD(特定成因脂肪性肝疾患)
原因疾患や薬剤に応じて、エネルギーや栄養素を過不足なく補うアプローチが必要です。例えば、薬剤性の場合は、その薬剤の見直しと栄養状態の改善。ウイルス性肝炎が原因の場合は、肝炎治療に加えて栄養状態の維持などを検討します。
4.さいごに
肝疾患には特有の病態と治療戦略がありますが、共通して禁酒、適切な体重管理、バランスの良い栄養摂取が重要です。近年は肥満、糖尿病、メタボリックシンドロームなど、MASLDのリスク因子が増加しており、これに伴う肝疾患の管理と治療が重要視されています。
2023年に日本肝臓学会より「奈良宣言」が発表されました。この声明は血液検査でALT値が30を超えていた場合、まずかかりつけ医等を受診することを勧めており、肝疾患の早期発見・早期治療に繋げることが狙いです。患者の状態や進行度に応じた栄養管理とライフスタイルの改善が、疾患の進行を抑え、QOLの向上に繋がります。管理栄養士による患者の栄養ケアが期待されています。
本稿では新たに新設されたSLDと名称変更となったMASLDとMASHなどを中心に解説しました。第二弾では肝臓病の最終的な病態である肝硬変について解説を行います。
2023年に日本肝臓学会より「奈良宣言」が発表されました。この声明は血液検査でALT値が30を超えていた場合、まずかかりつけ医等を受診することを勧めており、肝疾患の早期発見・早期治療に繋げることが狙いです。患者の状態や進行度に応じた栄養管理とライフスタイルの改善が、疾患の進行を抑え、QOLの向上に繋がります。管理栄養士による患者の栄養ケアが期待されています。
本稿では新たに新設されたSLDと名称変更となったMASLDとMASHなどを中心に解説しました。第二弾では肝臓病の最終的な病態である肝硬変について解説を行います。
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▼執筆者
所属:東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部
斉藤 弘樹 先生
▼編集者
渡部 早紗(管理栄養士)
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▼執筆者
所属:東京慈恵会医科大学附属病院 栄養部
斉藤 弘樹 先生
▼編集者
渡部 早紗(管理栄養士)
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参考文献・サイト
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1)一般財団法人 日本消化器病学会:脂肪性肝疾患の日本語病名に関して
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2)一般財団法人 日本消化器病学会/一般社団法人 日本肝臓学会 編 NAFLD/NASH診療ガイドライン2020 改訂第2版
-
3) Yoshiji H, et al : Evidence-based clinical practice guidelines for liver cirrhosis 2020. J Gastroenterol 56: 593 619, 2021.
-
4)J-STAGE 脂肪性肝疾患(Steatotic liver disease:SLD)のパラダイムシフト:NAFLDからMASLDへ 著者:米田 正人, 小林 貴, 岩城 慶大, 和田 直大, 野上 麻子, 高橋 宏和, 中島 淳
-
5) Rinella ME, et al. A multi-society Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature. J Hepatol 2023; 79 (6): 1542-1556.
-
6) Orchard TJ, Temprosa M, Goldberg R, Haffner S, Ratner R, Marcovina S, Fowler S; Diabetes Prevention Program Research Group. The effect of metformin and intensive lifestyle intervention on the metabolic syndrome: the Diabetes Prevention Program randomized trial. Ann Intern Med. 2005 Apr 19;142(8):611-9.
-
7)J-STAGE 非アルコール性脂肪性肝疾患モデルにおける ビタミンE同族体の予防効果 著者:清瀬 千佳子, 田中(谷地) 理恵子, 高橋(武藤) 知衣
-
国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎情報センター アルコール性肝障害
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厚生労働省 習慣を変える、未来に備える あなたが決める、お酒のたしなみ方 男性編