1.はじめに
しかし、循環器専門でない場合の私たちは、心臓の機能が低下した状態と漠然と捉えていることも多いと思います。その理由としては、心臓機能障害を起こす原因疾患が多岐であり、心不全(うっ血性心不全)は複数の症状があらわれる症候群であるためです。
2.心不全の病態・原因・症状
引用元: 一般社団法人 日本循環器学科/一般社団法人 日本心不全学会 合同ガイドライン 急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)を参照し編集部が作成
また心不全は、心筋梗塞などで急速に悪化する「急性心不全」と、高血圧や心臓弁膜症により徐々に起こる「うっ血性心不全」に区別されます。
引用元: 医歯薬出版株式会社 発刊/本田佳子 編集 新臨床栄養学 第5版 栄養ケアマネジメント P340 心不全(うっ血性心不全) より引用作成
特に団塊の世代が後期高齢者に突入する2025年以降は、心不全患者が増加すると予測されています。日本全体における心不全患者の総数に関する正確な統計はないのですが、推計では2030年には心不全患者が130万人を超えるとされています。
さらに「だんだんと悪くなり、生命を縮める」というのは、心不全を発症するとその後の経過で、増悪を繰り返しやすくなり生命予後が悪い疾患であります。
3.心不全の重症度分類(NYHA心機能分類)
引用元: ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)作成を引用し編集部が作成
4.心不全の診断
血液生化学検査:脳症ナトリウム利尿ぺプチド(BNP)の上昇、炎症指標(白血球数、CRP)、クレアチニンなどに加えて心電図、胸部X線検査、心機能検査(心エコー)、心臓カテーテル検査などから診断されます。
また入院した心不全患者の原因疾患として、日本におけるデータで多いものは1)虚血性心疾患、2)高血圧、3)弁膜症であり、なかでも虚血性心疾患の割合が近年上昇しています。
5.心不全の治療
①服薬を継続する
②食生活に注意する(減塩+α)
③自己管理をする
この3つが大切です。
1)心不全の治療で気をつける3つの事
調子が良くなると内服を忘れたり、止めてしまったりしがちです。治療中の内服中断は、心不全悪化の最も多い原因の一つとされ注意が必要です。
②食生活に関して
減塩の食習慣が最も重要であり、食塩摂取量は1日6g未満となります。その他にも食事量や水分量なども注視します。
③自己管理とは
風邪などの疾患と異なり、心不全は治療で完治する病気ではありません。長く付き合っていく病気であるため、内服の継続、食塩制限、日々の状態を自分自身で管理することが重要です。血圧や体重を毎日記録し、体重増加などの心不全の症状のチェックや、血圧の高すぎ・低すぎのチェックなど、日々の自己管理が大切です。
2)食生活・栄養管理
6.予防的治療法
7.心不全の食生活・栄養管理のポイント
減塩調理のポイントは
①塩味は1品へ重点的に付加する
②旨味だしや酸味、香辛料、香り野菜など利用する
③加工品や練製品は避ける
などを意識して行いますが、患者が実践できる実務教育が大切です。
その他のポイントとして、
2)たんぱく質は、低たんぱく血症・低アルブミン血症から浮腫など招くので、体重当たり1.0~1.5g/kg/日と不足させない。
3)ナトリウムは、血圧コントロールと密接な関係があり、心臓の負担軽減のためにも重要で、ナトリウム(食塩3~6g/日)制限を栄養ケアで最優先とする。
4)ビタミン・ミネラルは、推奨量より不足させない。特に病態からカリウム値は「低カリウム血症」を起こしやすいので注視する。
引用元: 医歯薬出版株式会社 発刊/本田佳子 編集 新臨床栄養学 第5版 栄養ケアマネジメント P339~344 心不全(うっ血性心不全) より引用、改変作成
▼執筆者
所属:人間総合科学大学 人間科学部 健康栄養学科 学科長
役職:教授
白石 弘美 先生
▼編集者
渡部 早紗(管理栄養士)
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参考文献・サイト
- 急性・慢性心不全診療ガイドライン2021年フォーカスアップデート版
- 日本心不全学会HP
- ファーマスタイルWEB 2023年最新版 心不全の治療と診断
- 一般社団法人 日本循環器学会/日本心不全学会:急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)p13
- 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 心不全
- 編集:日本高血圧学会高血圧治療法ガイドライン作成委員会 発行:日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン2019
- 新臨床栄養学‐栄養ケア・マネジメント(第5版)、本田圭子編:ⅴ治療となる栄養ケア 心不全(うっ血性心不全p.339~344、医歯薬出版 2023年3月発行
- 奈良信雄著:看護・栄養指導のための臨床検査ハンドブック(第6版)、うっ血性心不全 p.198 医歯薬出版 2022年12月発行
- Trainee Guide 栄養食事療法の実習 栄養ケアマネジメント(第13版)、本田佳子編:4心不全 p.168~170 医歯薬出版 2023年3月発行
- 日本内科学会雑誌 第106巻 第9号