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2024.07.02

令和6年度 診療報酬改定のポイント

カバー画像:令和6年度 診療報酬改定のポイント

令和6年度の診療報酬改定が行われ、栄養分野については、厚生労働省や日本栄養士会のホームページなど、さまざまなサイトにて情報が発信されています。

今回は、実際に現場で働いている管理栄養士から見た「令和6年度診療報酬改定のポイント」についてお話しします。

1.はじめに

前回(2022年)の診療報酬改定に引き続き、栄養に関する項目も数多く盛り込まれております。

これは昨年度5月に医療法施行規則の一部改正が行われ、医療従事者に管理栄養士・栄養士が追加されたことも大きく、厚生労働省の医政局等に医療従事者として看護師や薬剤師などと共に管理栄養士も加わったことが関係しています。

もちろん医療計画の策定にも反映されており、今回の診療報酬改定において国が管理栄養士・栄養士を必要とする(力を入れて行く)項目が加えられております。

それでは日本の医療分野で何が問題になっているのか考えてみましょう。

1)超高齢化社会の対策

「高齢化の推移と将来推計」から見えてくる一番大きな課題は「超高齢化社会」対策であり、高齢者を支える医療や介護の負担増加が予測されます。

現在の医療では患者さまが病院へ通院していますが、今後は通院することが出来ない在宅の高齢者が増加します。現在の「医療⇔介護」「介護⇔在宅」の連携ではなく「医療⇔在宅」の連携が主体となることも考えられています。

2)医療DXの推進の必要性

前述に伴い、通院できない在宅患者さまとはオンライン診療、緊急時には在宅から直接医療機関(急性期)での治療が必要となります。かかりつけ医(在宅医療)の診療中に取得した検査データや服薬データなどの診療情報を共有出来るようにICTやDXを進める必要があります。

これらの課題に対し医療従事者として管理栄養士・栄養士も一緒に解決していかなければなりません。

それでは日本の未来を解決する診療報酬改定について栄養部門を確認してみましょう。
※詳細については厚生労働省ホームページをご参照ください。

2.入院基本料等の見直し(栄養管理体制の基準の明確化)

医療体制を保つには5~10年先を見据えた人材確保が必須となり、医療従事者の人材確保や賃上げに向けた取り組みとして入院基本料の見直しが行われます。

退院後の生活を見据え、入院患者の栄養管理体制の充実を図る観点から、栄養管理体制の基準を明確にすることが必要となります。

例えば
① 入院診療計画書(特別な栄養管理あり)
② 院時栄養計画書(看護師:スクリーニング→管理栄養士:栄養アセスメント)
③ 週1回(定期的)の栄養スクリーニングと栄養アセスメント(②の繰り返し)
④ 栄養アセスメントにて低栄養患者(NST対象患者抽出)後にNST回診
⑤ モニタリング→退院時に栄養情報連携作成など、栄養管理手順(標準的な栄養スクリーニングを含む栄養状態の評価、栄養計画書、退院時を含む定期的な評価等)
を作成することとなります。

既に皆様の施設では栄養管理手順を作成されていると思いますが、この機会にもう一度栄養管理体制について各部署の役割分担を含め確認されてはいかがでしょうか。

1)GLIM基準について

JSPENに参加されていない管理栄養士の方は、今回初めてGLIM基準という言葉を聞いた方も多いと思います。

また、栄養スクリーニングを栄養アセスメントツールであるSGAにて行っている施設も多いと思われます。(各医療機関の機能や患者特性等に応じて、SGAを用いても差し支えありませんが、GLIM基準を用いる場合においては、図のように検証済みのスクリーニングツールを使用することが推奨されています。)

低栄養=血中アルブミンが 3.0g/dL 以下である患者という栄養食事指導対象が思い浮かぶと思いますが、GLIM基準による低栄養診断ではアルブミン値ではなく、体重減少や低BMI、筋肉量減少、食事摂取量減少や消化吸収能低下、疾患負荷や炎症なども考慮された低栄養の国際基準となります。

病因基準の疾患負荷/炎症は感染症や慢性疾患(がん、うっ血性心不全、CODPなど)も考慮されております。

今後、GLIM基準に関する勉強会は日本栄養士会によるセミナーなど数多く行われる予定です。これから数多くの低栄養診断を行うことでGLIM基準の更なる検証データが集まり、低栄養の基準が確立すると診療報酬(病名)などに反映することとなるでしょう。

3.リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算

急性期医療では手術や治療の後に安静(ベット上臥位)にしていることが多く、ADL低下から寝たきり、慣れない環境や身体的ストレスからせん妄(意識障害や認知機能の低下)や下痢、便秘などの消化器症状、食欲低下も見られます。

しかし、当院の事例として、寝たきりで摂取量50%以下の患者にリハビリが開始されると、1週間程度で基本的な動作はもちろん便秘が改善し食事摂取量も回復、リハビリ訓練中に交わされた患者さまの嗜好についての会話も、管理栄養士へ伝達され苦手食材を代替対応、ほぼ全量摂取となり早期退院にも繋がりました。

今回新設されたリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は、誤嚥性肺炎後の高齢者のADL低下を予防するなど、チーム医療を後押しすることになるでしょう。
注意)施設基準として当該病棟に専任の常勤管理栄養士が1名以上配置と、土日祝日でも平日と同様(平日の8割程度)にリハビリを行える環境が求められています。
食事(生活)に対応していた管理栄養士・栄養士にとっては365日の体制は通常ですが、リハビリ職員の勤務体制(人員)整備などを病院全体で話し合う必要があるかと考えます。超高齢化社会に対する体制整備は今後も診療報酬改定の基本となるでしょう。

4.経腸栄養管理加算

急性期病院で治療を終え療養型病院へ転院される際に、経腸栄養管理では受け入れ不可→中心静脈栄養管理へ切り替えて転院する場合もあるでしょう。

医療従事者は「経腸栄養ガイドライン」等を踏まえた栄養管理について理解し、「消化管が機能している場合は、中心静脈栄養ではなく、経腸栄養を選択することが基本であるとされていること」と解釈していても、現実的には実施に至らないケースも多く見受けられます。患者さまに説明し希望されない場合を除き、経腸栄養管理へ移行することで算定可能となります。

施設基準として、栄養サポートチーム加算を届け出ていること又は療養病棟に経腸栄養管理を担当する専任の管理栄養士を1名配置することとなります。(ただしNST加算や栄養食事指導料は同時に算定出来ませんので注意してください。)

5.栄養情報連携料

4年前に医療→介護における情報共有のため「栄養情報提供加算(50点)」が開始されました。

これは、入院時栄養食事指導を行った場合のみ算定可能とされましたが、認知症患者本人へ栄養食事指導を実施しても、理解を得ることが困難なため栄養食事指導は行えず、栄養情報提供は作成しても非算定でした。(当院でも700~800件/年提供しておりましたが非算定)

とはいえ、栄養情報提供により栄養介入や食事形態、アレルギーなどの情報が共有されるため、入所時の事故防止にも繋がっています。今回改定において、栄養食事指導を行っていない場合も算定可能となりました。
注意)退院先の施設へ対面又は電話等での説明が必要となり、説明日の記載などが必要となりますのでご注意ください。

6.入院時食事療養費の見直し

給食関連は「入院時の食費の基準の見直し」です。1食あたり30円の引き上げとなり、1,920円/日(640円×3食/日)から2,010円/日(670円×3食/日)となります。

30年ぶりに基準が見直され自己負担が+30円/食となりますが、お付き合いのある給食委託会社の方々から伺った話によると、委託費の地域差は大きく、首都圏における病院給食委託は管理費(人件費)高騰から2,300円~2,500円/日となっており、特に労働人口が少ない都内の一部地域では、早朝勤務の人員が募集しても集まらず、管理費が増加しこのような金額になっているようです。

食材料費を抑える為に数社から見積りを取り続けても2~3割値上げ、更に運輸費、光熱費と終わりが見えない赤字が継続しています。このまま円高が進むと今秋に更なる食材費などの値上げが予測されております。

10年先まで患者さまに安全な食事を提供するためには、給食の提供方法(クックサーブ→クックチル、ニュークックチル、クックフリーズ、セントラルキッチンからのトレイメイク済み搬入など)を変更し、労働人口減に対応できるように、効率よくフードロスを抑えた方法を導入する必要があるでしょう。

また、コンビニエンスストアでは当たり前の光景となりましたが、今後は給食調理においても日本人の労働人口の低下により、外国籍の労働者へシフトされることが考えられます。そのため、国籍の異なるスタッフの導入を想定した厨房内の作業マニュアル整備なども発生するでしょう。

この他にも、慢性腎臓病の透析予防指導管理の評価や、生活習慣病に係る医学管理料の見直しなど重症化予防対策が強化されております。

特定健診保健指導対象者(未病)の生活習慣病への移行を防ぐことで、膨大な医療費削減に繋がります。栄養食事指導を実施し疾病予防に取り組むことで、大きな成果になるでしょう。特に人工透析は一人当たり400~600万円/年の高額医療(日本では約400人に1名が透析中!)となります。

在宅療養支援診療所及び在宅療養支援病院における訪問栄養食事指導の推進も、高齢者のADL維持や生活習慣病の重症化予防に役立ちます。

管理栄養士は食生活を中心に生活全般を聴き取り、改善に向けたアドバイスを行うスキルを取得しております。健康管理に対して無関心な方々に気づきを与えることで、医療保険制度の安定(重症化予防)や在宅患者さまのADL向上に役立ちます。

7.さいごに

栄養分野の診療報酬算定は、管理栄養士のマンパワー不足や経営に対する無関心(算定件数の低さ)から、医療機関によってはあまり注目されていないケースも目立ちます。

しかし、診療報酬改定はこれからの日本医療の未来予想図に沿って作成されており、興味を持って患者さまのために必要なケアに取組むことで、患者さまのADL向上だけでなく病院の収入(算定)につながり、管理栄養士・栄養士の地位向上につながります。

なお、算定条件には事務部と一緒にダブルチェックすることをお勧めします。今回の診療報酬改定に示されているように、医療連携を進めていくためには施設基準など病院全体の方向性を確認しなければなりません。

また、算定の仕方(様式など)がわからない場合は、日本栄養士会のセミナーや栄養補助食品を取り扱う企業(営業)、電子カルテなどを扱う企業に話を聞くこともお勧めです。
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▼執筆者
所属:医療法人社団 圭春会 小張総合病院 栄養科
役職:科長 岡村 康平 先生

▼編集者
渡部 早紗(管理栄養士)
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参考文献・サイト

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