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2024.06.24

令和6年度 介護報酬改定のポイント

カバー画像:令和6年度 介護報酬改定のポイント

令和6年度介護報酬改定が行われ、みなさん対応や知識入れに追われているかと思います。

栄養関連項目については、厚生労働省や日本栄養士会のホームページなど様々なサイトから最新情報を確認していると思います。ここでは実際に現場で働いていた管理栄養士から見た令和6年度介護報酬改定についてお話していきます。

1.はじめに

前回の介護報酬改定から3年経過し、栄養マネジメント強化加算で使用するLIFE(科学的介護情報システム)の情報提出(データ入力)は徐々に使用者の意見を取り入れられました。

情報提出頻度(少なくとも3ヶ月に1回に統一)や、加算ごとに同じ項目であっても入力しなければならなかった手間も徐々に改善されつつあります。

国の事業として先に行われている特定健診保健指導の際も、ビックデータを集め解析する事業においては、複数年実施して蓄積されたデータを更に解析、より成果が得られる介入方法へカスタマイズされていきました。

厚生労働省の「LIFE の活用状況の把握およびADL 維持等加算の拡充の影響に関する調査研究事業(結果概要)」によると、最初のうちは慣れず、入力の手間だけが目立つため、LIFEを算定しない事業所もあるようですが、実際に利用しデータが収集されない限り、利便性の高いシステムにはなりません。

今後はもっと他施設と自施設の比較や入所者のADL経過予想など、明確な栄養管理に関する課題整理と目標設定が出来るようになると思われます。

施設の方針にも寄りますが、介護報酬の栄養分野についてはマンパワー不足から、減算にならない限り取り組まれないケースも多く見られます。理由として「知らなかったから」「算定の仕方がわからないから」といった意見が多く見受けられます。

栄養マネジメント強化加算は、入所者の低栄養リスクが発生する前からモニタリングすることにより、ADL維持(寝たきりにしない)などプラスになる要素が盛り込まれております。

2.退所者の栄養管理に関する情報連携の促進、再入所時栄養連携加算

令和6年度診療報酬改定において、「栄養情報提供加算」の名称と算定要件が見直され、「栄養情報連携料」へ変更となり、更なる医療と介護の間で切れ目ない情報共有の必要性が示されました。

同様に介護保険施設から居宅や医療機関などに退所する場合も「退所時栄養情報連携加算」が新設され、対象者は厚生労働大臣が定める特別食を必要とする入所者又は、低栄養状態にあると医師が判断した入所者なります。
注意)栄養マネジメント強化加算を算定している場合は対象外です。

また、再入所時栄養連携加算についても特別食を必要とする入所者が追加されました。様式などは日本栄養士会のホームページをご参照してください。

3.リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の一体的取組の推進

ここでも医療分野と同様、入所者の自立支援や重症化防止を効果的に行うため、リハビリ、口腔、栄養が各々にPDCAをまわすのではなく、一体化(情報共有)しながら進めることが求められました。

当院において、施設や在宅から入院した場合、慣れない環境から便秘が続き食事量低下を引き起こすほか、体力や免疫力が低下し誤嚥や寝たきりに、といった事例は入院中にもよく発生します。

しかしながら、ST介入し経口摂取訓練開始、PT介入にてベットサイドのリハビリ運動にて腸管も動き出し便秘も改善、活動量も上がり空腹感→食事摂取量の改善につながりADL回復→退院につながることも良く見受けられます。

また、リハビリの最中に「今日の主菜(魚料理)苦手だから食べられなかった」などの発言があれば、リハビリ→管理栄養士へ伝達し代替食品にて対応、STにより「嚥下機能が回復してきたので医師と相談し食事形態を上げたい」と話があれば、管理栄養士は適切な食事形態を提供するなど、連携により早期の対応が可能となり、患者さまを多方面から支える環境が作られています。

介護現場では、栄養マネジメント強化加算においてミールラウンドが必須条件のため、導入により、厨房や事務所から出てミールラウンドを行う管理栄養士・栄養士も増えてきました。普段から声を掛けやすいように、他職種と会話することから始めても良いのではないでしょうか。
【多職種とかかわることのススメ】

介護分野における管理栄養士・栄養士は医療機関とは違い、血液検査データなどが得られにくい状況で栄養マネジメントを行う必要があり、入所者の生活から食事介助や食事記録と水分摂取、排便、排尿とレクリエーションの活動などを基に、評価しなければなりません。

私も介護士を中心とした他職種に混ざって仕事をすることが多かったので、普段から職種間のコミュニケーションを取り、入所者のトランスや送迎、食事介助の際に行われる雑談の中で、食欲不振や食形態の相談などの情報を得られたことで、低栄養の早期発見に繋がっていました。(もう20年前になりますので、栄養管理だけでなく毎日が「何でも屋」でした。)

4.居宅療養管理指導における通所サービス利用者への介入の充実、算定回数の見直し

居宅療養管理指導費について、通所サービス利用者に対する管理栄養士の栄養食事指導を充実させるため、算定条件が「通院又は通所が困難な者」→「通院困難な者」に見直され、利用者の方に対して栄養食事指導を行う環境が整えられました。

在宅という慣れた環境でいつまでも生活できるように、通所利用の対象者に早期介入し重症化(入院など)を防ぐ狙いがあります。

当院の外来・入院患者への栄養食事指導時に聞き取り調査を行うと、居宅の方は老々介護や一人暮らしの方が多く、食事はスーパーの総菜か冷凍食品、菓子パンかカップ麺など、ほとんど調理しない方も増えております。

一人暮らしでは調理しても食べ切れず、残菜・廃棄が少ない調理済み食品や、手軽に食べられて値引きされることが多いパン類(特に菓子パン)が利用しやすいと考えられます。

最近の冷凍食品コーナーやコンビニの総菜、弁当類もかなり健康を考えた商品もありますから、上手く活用される提案ができるといいですね。

例えば、

・持病に高血圧や糖尿病があった場合、血圧の管理不足から脳や心臓の疾患の発症、血糖値の管理不足から腎臓病発症などはないか?
・デイサービスでの食事の際に、むせ込みや急な食事量低下などはないか?
・義歯が合わなくなり咀嚼できず、おかずが手付かずで残っていないか?

などをよく観察し、選択の仕方や食べる時間、経口的栄養補助(ONS)の活用を提案(栄養食事指導)することで、住み慣れた場所で過ごせることにつながります。普段から近くで観察している介護士さんとの連携も重要かと思います。

最近はONSも通販や薬局だけでなくコンビニエンスストアにも陳列されるケースが増えており、手軽に利用しやすくなっております。

また終末期の場合など、ADLが急速に変化していくことも経験されていると思います。昨日まで食べられていたものがむせ込んでしまったり水分を誤嚥したりと、放置すれば肺炎など急性期へつながります。

医師と相談し適切に介入することで、当人の意思を尊重し最後まで自宅で安楽に過ごすサポートにもなります。

5.業務継続計画(BCP)未算定事業所に対する減算の導入

2019年からcovid19のクラスター対応が始まり、さらに今年に入り地震災害が増加しております。このような非常事態が起きたとしても、入所者や居宅者は生活する場所が必要なことに変わりありません。

普段から地震や水害などが発生することを想定し受け入れ態勢が滞らないように、業務継続計画(BCP)を作成し訓練しておくことが必要です。各事業所では非常事態発生を想定し、時系列に沿った計画(アクションプランなど)を作成し、発生時に自分を含め人命を守りサービスを提供しなければなりません。

管理栄養士・栄養士は災害発生時よりも、事態が落ち着いた時から食事提供などを中心に、後方支援を行うことが主となります。計画が策定されていても従業員に浸透していなければ、「絵に描いた餅」になってしまいます。

施設長任せにせず、自分事と捉えて計画作成に参加してください。今回より業務継続計画が策定されていない場合は減算対象になります。

6.さいごに

介護報酬は、興味を持って算定することにより、入所者が幸せになるだけでなく管理栄養士・栄養士の必要度も上がります。

医療機関にて栄養管理実施加算が入院基本料の要件に含まれたように、栄養マネジメントが基本サービスとして行うこと(実施しないと減算)となり、管理栄養士の役割において、給食管理→臨床管理の比重が大きくなってきていること、入所者のADLを維持するために、医師、看護師、介護士、リハビリ等と協力し低栄養の早期発見、重症化予防に努めることが明確になってきました。

今後、後輩達が目指したい職業(環境)になるかは、これからの自分の行動により大きく変わってきます。
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▼執筆者
所属:医療法人社団 圭春会 小張総合病院 栄養科
役職:科長 岡村 康平 先生

▼編集者
渡部 早紗(管理栄養士)
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参考文献・サイト

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