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2022.08.23

2022.08.23

現場の衛生管理と感染予防対策①~HACCPと食品表示~

カバー画像:現場の衛生管理と感染予防対策①~HACCPと食品表示~

栄養士・管理栄養士が安心で安全な食を届けるための業務の一つに「衛生管理」があります。

食中毒を起こさないだけでなく、感染症対策や食の安全を守る私たちにとって切っても切り離せない知識です。衛生管理の基礎をしっかり身につけていきましょう。

今回は、HACCPと食品表示について解説していきます。

1.衛生管理の重要性

 衛生管理者として、栄養士・管理栄養士の業務は、食品からヒトへの危害防止(食品の衛生と安全)に関する知識の実践にあります。

しかし、食を巡る社会環境の変化も大きく、また国民のニーズも多様化しているなか、広範囲な(食品衛生法、栄養機能性表示)食品を原因とした、危害防止対策の必要性が求められている時代となりました。

また、『人間は健康で長寿でありたい』と願い生活を送っており、近年は食生活において健康が求められる時代となり、2015年食品表示法(食品の機能性表示)の施行や、2018年食品衛生法も大きく改定されています。 

具体的な食中毒発生の予防策としては、食品製造・調理の面からみた、飲食業の営業許可にもHACCP導入が義務づけられました。

このような時代背景や社会情勢から、現場における衛生管理と感染予防対策は、一般的な衛生管理(HACCP)を確実に実施した原材料の見直しや、調理工程の改善が必要となります。

2. 一般的な衛生管理(HACCP導入)

HACCPとは、Hazard Analysis and Critical Control Pointの略で、危害要因分析重点管理点と訳されます。
上記の表1.や、下記の図1.に示したように、作業工程ごとに危害を分析して重点的に管理する『食品衛生の管理手法』であり、管理作業を明確にする作業マニュアル記録から構成されます。

これにより、食品等の事業者が食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握し、原材料入荷から製品出荷に至る全工程の中で、危害要因を除去・低減させるために、特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。

このHACCPによる衛生管理は、合理的な食品衛生の管理手法であり、管理作業を明確にする作業マニュアルとして記録する事が必要となります。
衛生管理におけるHACCPと従来方法の違いは、従来方法に比べHACCPが、より効果的に問題ある製品の出荷を未然に防ぐことが可能となり、原因の追及を容易にすることができる点です。

その手順として、厚生労働省の図1.「HACCPによる衛生管理の例」では、CCP:重点管理として「熱処理温度・時間の経緯管理」が示されており、ここが衛生管理ポイントと言えます。

このHACCPシステムは、7原則12手順に沿って進められ、手順1~5は原則1~7を進めるにあたっての準備であり、HACCPチーム編成~製造工程の現場確認が求められます。

次に原則1~7は、危害要因分析&HACCPプランを、具体的に作成する手順6~12で構成され、食品の安全性を確保するシステムとなっています。
また、HACCPを導入した施設においては、必要な教育・訓練を受けた従業員によって、定められた手順や方法が、日常の製造過程で遵守されることが不可欠となります。

一般的な衛生管理にも具体的な食中毒発生の予防策として、食品製造・調理の面、飲食業の営業許可にもHACCP導入が義務づけられました。

この実施するにあたり詳細については、厚生労働省、「HACCPに沿った衛生管理の制度化」ホームページなどで確認する事をお勧めします。

3.食中毒発生予防と大量調理施設衛生管理マニュアル

従来から、栄養士・管理栄養士の業務は「食品の安全性」を求められています。

さらにノロウイルス、O157などの発生や、その他食中毒の予防対策として、厚生労働省は「大量調理施設衛生管理マニュアル」を策定しています。この「大量調理施設衛生管理マニュアル」は、HACCP概念に基づき平成29年に改正されました。

その背景には、腸管出血性大腸菌O157による食中毒の発生、大規模ノロウイルス食中毒の発生があり、乾物や摂取量が少ない食品も含めて、製造加工業者は、調理従事者の健康状態の確認等ノロウイルス対策を適切に行う必要があるとされました。

そして、この大量調理施設衛生管理マニュアルは、表3.に示した4つの重点項目を定めています。
この大量調理施設衛生管理マニュアル作成の趣旨としては
①衛生管理体制を確立し
②重要管理事項について点検・記録を行い
③必要な改善措置
を、講じることにあります。そして本マニュアルは
④同一メニュー1回300食以上、または1日750食以上を提供する調理施設(該当施設)
に、適用されます。
そして近年、冬の食中毒の90%はノロウイルス感染とされており、日本においては「生かき」による食中毒が代表です。海外ではベリー類(ラズベリー、ブルーベリー、ストロベリーなど)によるA型肝炎ウイルスの食中毒事例があります。

また、汚染水が土壌から動植物を経てヒトへのウイルス感染によって食中毒の原因ともされています。(図2.)

このノロウイルス対策の原則が「持ち込まない・拡げない・加熱する・つけない」ことであり、食品衛生基準や調理衛生管理:HACCPなどから
①加熱調理食品は、中心部が75℃で1分間以上(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85~90℃で 90 秒間以上)加熱する。
②野菜や果物の生食は次亜塩素酸ナトリウムに浸漬し、流水で十分に洗い流す。
などの手順が決められています。
このノロウイルス感染経路は、通常の呼吸器感染による場合とは異なりますが、医療や福祉の現場では、ノロウイルス感染症を発症している人の吐物や下痢便が床などに飛び散り、周囲にいてその飛沫(ノロウイルスを含んだ小さな水滴、1~2m程度飛散)を吸い込むことによって感染します。

よって、嘔吐物や下痢便を不用意に始末した場合にも、飛沫は発生しますので、ノロウイルス感染者の嘔吐物などの処理は、充分に注意して扱う必要があります。

なお、症状回復後でも1週間程度、長い場合は1か月に渡って便中にウイルスが排泄されるといわれています。また、発病することなく無症状病原体保有者で終わる場合もあります。

いずれにせよ、流行期間中は感染源となってしまう場合がありますから、流水・石鹸による手洗いを徹底すべきでしょう。

感染症と食中毒の感染経路は?

1) 経口感染
流行性A型・E型肝炎、赤痢、コレラ、腸管出血性大腸菌感染症などの病原体に汚染された、飲食物や手指などを経由して経口的に感染する。

2)飛沫感染
インフルエンザ、百日咳、結核、ジフテリア、麻疹、風疹、呼吸器疾患などが飛沫により感染する。

3)経皮感染
皮膚、皮膚創傷部からの感染や、ノミ(ペスト、発疹熱など)、シラミ(発疹チフス)蚊(日本脳炎、マラリアなど)、ダニ類(つつが虫病)などの昆虫を媒体する経皮感染も多い。破傷風も土壌中の菌が創傷部から感染する。

4)その他
AIDSウイルス(後天性免疫不全症候群:HIV)、B型・C型肝炎ウイルスなど血液、精液、輸血を介する感染があります。
さらに2020年からは、新型コロナウイルスにおけるヒト-ヒト感染の広がりが世界的にありました。また大きな自然災害にも遭遇します。こうした状況でも、栄養士・管理栄養士の仕事は、日々の食事摂取を継続して提供する義務が任じられます。

食物を介した食中毒や、従来からの感染予防として、個人に求める「手指の消毒、マスク着用」だけでなく、職業上の慎重な対策として、食品の生産・流通でHACCP導入が求められます。

どんな状況でも該当施設での食事提供における、食中毒予防対策は重要であり、大量調理施設衛生管理マニュアルや、ノロウイルス感染時対応などの情報を活用し、日々の業務で作業手順の見直し・改善に取り組んでいきましょう。

尚、医療施設スタッフ用の「ノロウイルス感染症とその対応・予防」についての詳細は、国立感染症研究所 感染情報センター(IDSC)などの情報を確認して対応に当たってください。

4. 食品衛生法、食品表示法の改正

1)食品衛生法の改正

衛生上の危害発生防止として規制されている「食品衛生法」は、消費者を守るための食中毒や食品変質、異物混入などの食品事故を防止することにあります。

そのため、食品衛生法第50条第2項に基づき、各都道府県が条例で技術的助言として「食品等事業者が実施すべき管理基準に関する基準(ガイドライン)」いわゆる「管理基準」が示されています。

この管理基準は平成26年(2014年)5月に、国内の食品等事業所者に対して、HACCPによる工程管理の段階的な導入を図るため、2021年以降の「HACCPに基づく衛生管理」が実施されました。

この「食品衛生法」は飲食による健康被害の発生を防止するための法律で、その概要は(1)~(7)に示します。 
(1)大規模又は広域におよぶ「食中毒」への対策を強化
 大規模又は広域的な食中毒の発生・拡大防止のため、国や都道府県等が相互に連携・協力を行います。

(2)「HACCP (ハサップ)に沿った衛生管理」を制度化(2021年度より)
 原則として、すべての食品等事業者に、一般衛生管理に加え、HACCP に沿った衛生管理の実施を求めます。小規模営業者等は、厚生労働省ホームページで公表している手引書を参考に、簡略化したアプローチで取り組むことができます。

(3)特定の食品による「健康被害情報の届出」を義務化
 厚生労働大臣が定める特別の注意を必要とする成分等を含む食品との関連が疑われる健康被害が発生した場合、事業者から行政へ、その情報を届け出ることを義務化しました。

(4)「食品用器具・容器包装」にポジティブリスト制度を導入
 食品用器具と容器包装について、安全性を評価した物質のみを使用可能とするポジティブリスト制度を導入しました。

(5)「営業許可制度」の見直しと「営業届出制度」の創設
 HACCPに沿った衛生管理の制度化に伴い、食品等事業者を把握できるよう、営業の届出制度を創設しました。
(6)食品等の「自主回収(リコール)情報」は行政への報告を義務化
 営業者が食品等の自主回収(リコール)を行う場合に、自治体を通じて国へ報告する仕組みを作り、リコール情報の報告を義務化しました。

(7)「輸出入」食品の安全証明の充実
 輸入食品の安全性確保のため、輸入される食肉のHACCPに基づく衛生管理や、乳・乳製品及び水産食品の衛生証明書の添付を輸入要件としました。
以上の7項目があります。詳しくは厚生労働省の「食品衛生法の改正について」を参照ください。

次に、食品表示に関わる法律として、主なものに表4.の「食品の表示・広告等における主な法律」があります。当該施設での仕事には「健康増進法」も見逃せませんが、特に栄養士・管理栄養士が衛生管理上で知っておくべき法律です。

この中の1つ、食品の表示事項についての具体的な規制は「食品表示法」で義務づけられています。2つ目として、衛生上の危害発生防止は「食品衛生法」で規制されています。    

2)食品表示法の改正

消費者庁は、平成27年(2015年)4月に新しい食品表示制度を施行しました。

この制度の狙いは、従来の食品衛生法、JAS法、健康増進法の3法において、制度が複雑で分かりにくいものであったため、それを「食品表示法」にまとめて、食品の表示に関する制度を一元的に統合したものです。

この法律統合により消費者、事業者にとって分かりやすい表示が実現されました。食品表示法の具体的なルールは「食品表示基準」に定められています。

さらに平成29年(2017年)9月1日から、食品表示法に基づく「食品表示基準」が改正されました。この新たな制度では、全ての加工食品(輸入品を除く)の重量割合上位1位の原材料について原料原産地の表示が必要です。

これは食品流通がグローバル化した、食材ニーズに対応する法律と考えます。この 経過措置期間は令和4(2022)年3月31日までとされ、該当する食品事業者は、包材の管理や現場に混乱が生じないよう、早めの切り替えが勧告されました。
このように「食品表示基準」の改正基準については、消費者庁の「これまでの食品表示基準の概要について」を参照下さい。

ここで新しい「食品表示制度」における食品表示の主な変更点(平成27年度4月施行)を紹介します。
①アレルギー表示が変わりました。
・原則として個別表示になる。
・特定加工品のアレルギー表示義務。
(例:卵の特定加工食品→マヨネーズ、小麦粉の特定加工食品→パン)
・一括表示する場合の別記様式内の表示とする。

②加工食品の栄養成分表示が義務化されました。
加工食品の容器包装に、熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量)の5成分を表示する。

新たな機能性表示制度が創設されました。
機能性表示食品は、健康の維持・増進に役立つ食品の機能性を表示することができます。これは事業者の責任で表示するもので、特定保健用食品(トクホ)と異なりますので注意しましょう。
以上のように「食品表示制度」の改訂や、具体的なルールは「食品表示基準」は、消費者庁のホームページで確認しながら、現場の衛生管理、危害予防対策に活用して下さい。
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▼執筆者
所属:人間総合科学大学 人間科学部 健康栄養学科 学科長
役職:教授
白石 弘美 先生

▼編集者
渡部 早紗(管理栄養士)
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