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名大ら、腸内細菌とビタミンのやりとりの可視化に成功
2026.09.10
名古屋大学と中部大学は3日、中部大学生命健康科学部作業療法学科の平山正昭教授、名古屋大学大学院医学研究科の伊藤美佳子講師、上山純教授らの研究グループが、岩手医科大学医学部前田哲也教授らの協力を得て、腸内細菌とビタミン利用の特徴的関係を明らかにしたと発表した。
腸内細菌の分業関係を新たに解明
名古屋大学と中部大学は3日、中部大学生命健康科学部作業療法学科の平山正昭教授、名古屋大学大学院医学研究科の伊藤美佳子講師、上山純教授らの研究グループが、岩手医科大学医学部前田哲也教授らの協力を得て、腸内細菌とビタミン利用の特徴的関係を明らかにしたと発表した。この研究成果は、8月24日付で「Gut Microbes」に掲載されている。
人間の腸内には多数の細菌が存在し、食物繊維などを発酵して短鎖脂肪酸やビタミンなどさまざまな物質を作り出している。同時にそれらの物質は別の細菌によって利用されてもいく。
こうして微生物同士が代謝物を受け渡す仕組みのことを「クロスフィーディング」というが、これは腸内細菌叢をひとつの生態系として理解する上で重要な概念となる。
従来の便中メタボローム解析では、測定される代謝物の総量を評価することが一般的で、その物質が細菌から放出されて周囲で利用可能な状態なのか、それとも細菌細胞内に保持されているのか区別できなかった。
そのため、あるビタミンが多く検出されても、それが多く作られているからなのか、あまり使われていないからなのかを判断できなかったという。
さらにメタゲノム解析でビタミン合成遺伝子を持つ細菌が発見されても、実際に腸内でそのビタミンが作られ、放出され、利用されているとは限らず、こうした状態が遺伝子としての能力と実際の代謝状態のずれを生み、腸内細菌の機能を理解する大きな障壁となってきていた。
こうして微生物同士が代謝物を受け渡す仕組みのことを「クロスフィーディング」というが、これは腸内細菌叢をひとつの生態系として理解する上で重要な概念となる。
従来の便中メタボローム解析では、測定される代謝物の総量を評価することが一般的で、その物質が細菌から放出されて周囲で利用可能な状態なのか、それとも細菌細胞内に保持されているのか区別できなかった。
そのため、あるビタミンが多く検出されても、それが多く作られているからなのか、あまり使われていないからなのかを判断できなかったという。
さらにメタゲノム解析でビタミン合成遺伝子を持つ細菌が発見されても、実際に腸内でそのビタミンが作られ、放出され、利用されているとは限らず、こうした状態が遺伝子としての能力と実際の代謝状態のずれを生み、腸内細菌の機能を理解する大きな障壁となってきていた。
同一サンプルを2つに分けて測定、細胞外と細胞内を区別
今回、研究グループでは、健常者63人から得た便試料について、同一試料を「破砕しない状態」と「強く機械的に破砕した状態」の2つに分け、それぞれ解析する手法を採った。
破砕前の試料では、主に細菌の外に存在する水溶性ビタミンを測定、一方、ビーズで細菌を物理的に破砕すると、細菌内部に保持されていた成分も放出されることから、細胞外と細胞内を合わせた総量の近似値を測定できる。
この2つを比較して、ビタミンが細菌外に存在しやすいのか、細菌内に保持されやすいのかを評価することとした。
すると、水溶性ビタミンには異なる2タイプが存在し、アデノシルコバラミン(ビタミンB12の補酵素型)は破砕前には検出されず、細菌破砕後に初めて検出された。チアミン(B1)やナイアシン関連物質(B3)なども破砕後に大きく増加した。これらは細菌代謝に必要な補酵素として細胞内で利用され、細胞外には蓄積しにくいと考えられた。
一方、ビオチン(B7)、パントテン酸(B5)などでは、破砕前でも比較的多く検出された。これらは細菌から放出され、他の細菌によって利用される、腸内細菌間の共有資源となりやすい可能性がある。
さらに細菌の種類や機能遺伝子を調べるショットガンメタゲノム解析と組み合わせたところ、後者グループのビオチンはアリスティペス属と強い正の相関を示し、前者グループのチアミンはブラウティア属と負の相関を示した。
ここからアリスティペスはビオチンが豊富な腸内環境と密接に関連する一方、ブラウティアは発酵代謝に伴ってチアミンを積極的に利用することが示唆された。
さらに重要知見として、ポリアミンであるプトレシンはビフィドバクテリウム(ビフィズス菌)との間に正の相関を示した。この関係はビフィドバクテリウムによる乳酸産生により、腸内環境がより酸性側に傾くことと関連していると考えられる。
つまり、ビフィドバクテリウムの増加は乳酸産生を通じて便中pHを低下させ、その酸性環境がプトレシンの蓄積や安定性、産生菌の活性に影響を与えている可能性があるといえる。腸内細菌間の代謝ネットワークがビタミンのみならず、アミン代謝や環境pH制御とも結びついていることが示唆されたのは画期的だ。
また、代謝物の細菌の属レベルでの相関が種レベルよりも良いため、細菌種類と存在比率を推定する「16sアンプリコン解析」で代謝物推定の可能性を示唆した。遺伝子情報だけでは分からなかった腸内細菌の多様な活動を実際に存在する代謝物の場所と組み合わせて推定できる可能性を示した点で、大きな研究意義があったとみられている。
腸内細菌研究は、これまでどの細菌がいるか、どの遺伝子を持っているかという解析が中心だったが、今回の研究方法を加えることにより、今後は実際にどの代謝物が細菌外に供給され、どの代謝物が細菌内で利用されているかという機能面をより直接的に評価できる可能性がある。
研究グループでは、将来的に健康な人だけでなく、神経疾患や代謝疾患、炎症性疾患などで腸内細菌のビタミン共有ネットワークがいかに変化するか調べることにより、疾患に関連する腸内環境の理解や、食事・プレバイオティクスなどによる新たな腸内環境制御法を生み出していくことにもつなげられると期待している。
今後はまず培養実験や安定同位体を用いた代謝追跡による検証を進めていきたいともした。
(画像はプレスリリースより)
この2つを比較して、ビタミンが細菌外に存在しやすいのか、細菌内に保持されやすいのかを評価することとした。
すると、水溶性ビタミンには異なる2タイプが存在し、アデノシルコバラミン(ビタミンB12の補酵素型)は破砕前には検出されず、細菌破砕後に初めて検出された。チアミン(B1)やナイアシン関連物質(B3)なども破砕後に大きく増加した。これらは細菌代謝に必要な補酵素として細胞内で利用され、細胞外には蓄積しにくいと考えられた。
一方、ビオチン(B7)、パントテン酸(B5)などでは、破砕前でも比較的多く検出された。これらは細菌から放出され、他の細菌によって利用される、腸内細菌間の共有資源となりやすい可能性がある。
さらに細菌の種類や機能遺伝子を調べるショットガンメタゲノム解析と組み合わせたところ、後者グループのビオチンはアリスティペス属と強い正の相関を示し、前者グループのチアミンはブラウティア属と負の相関を示した。
ここからアリスティペスはビオチンが豊富な腸内環境と密接に関連する一方、ブラウティアは発酵代謝に伴ってチアミンを積極的に利用することが示唆された。
さらに重要知見として、ポリアミンであるプトレシンはビフィドバクテリウム(ビフィズス菌)との間に正の相関を示した。この関係はビフィドバクテリウムによる乳酸産生により、腸内環境がより酸性側に傾くことと関連していると考えられる。
つまり、ビフィドバクテリウムの増加は乳酸産生を通じて便中pHを低下させ、その酸性環境がプトレシンの蓄積や安定性、産生菌の活性に影響を与えている可能性があるといえる。腸内細菌間の代謝ネットワークがビタミンのみならず、アミン代謝や環境pH制御とも結びついていることが示唆されたのは画期的だ。
また、代謝物の細菌の属レベルでの相関が種レベルよりも良いため、細菌種類と存在比率を推定する「16sアンプリコン解析」で代謝物推定の可能性を示唆した。遺伝子情報だけでは分からなかった腸内細菌の多様な活動を実際に存在する代謝物の場所と組み合わせて推定できる可能性を示した点で、大きな研究意義があったとみられている。
腸内細菌研究は、これまでどの細菌がいるか、どの遺伝子を持っているかという解析が中心だったが、今回の研究方法を加えることにより、今後は実際にどの代謝物が細菌外に供給され、どの代謝物が細菌内で利用されているかという機能面をより直接的に評価できる可能性がある。
研究グループでは、将来的に健康な人だけでなく、神経疾患や代謝疾患、炎症性疾患などで腸内細菌のビタミン共有ネットワークがいかに変化するか調べることにより、疾患に関連する腸内環境の理解や、食事・プレバイオティクスなどによる新たな腸内環境制御法を生み出していくことにもつなげられると期待している。
今後はまず培養実験や安定同位体を用いた代謝追跡による検証を進めていきたいともした。
(画像はプレスリリースより)
参考文献・サイト
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