メリンジョの種子から得られるグネチンCに糖尿病改善効果
熊本大学は26日、同大大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター(薬学系)の首藤剛准教授、大学院薬学教育部博士課程の岸本朋樹氏らの研究チームが、株式会社山田養蜂場との共同研究として、インドネシアで食されてきた植物「メリンジョ」の種子から得られるポリフェノールの「グネチンC」に肥満と2型糖尿病症状の改善作用があることをマウスモデルで確認したことを発表した。
この研究成果はSpringer Natureの「Scientific Reports」に日本時間の11月25日付で掲載、オンライン公開されている。
この研究成果はSpringer Natureの「Scientific Reports」に日本時間の11月25日付で掲載、オンライン公開されている。
2型糖尿病は世界の糖尿病患者の約9割を占め、主な原因は食生活の乱れや運動不足による肥満の進行とされる。昨今は脂肪組織と肝臓の機能異常による臓器間の代謝連携障害が、糖尿病や脂肪肝の主要病態として注目されてもきた。
しかし、現行の薬物療法は単一臓器や経路に対する作用が中心で、副作用やコストの面でも課題は多く、より多臓器に作用し、安全性も高い新規治療選択肢の開発が強く求められている。
首藤准教授らの研究グループは、これまでの研究において、メリンジョに含まれるポリフェノール類に注目し、その種子抽出物が脂肪組織でアディポネクチンを多量体化させ、インスリン感受性を改善する作用を持つことを発見していた。
中でもアディポネクチン多量体化に関与する酵素DsbA-Lの発現が鍵を握ると、2型糖尿病モデルのマウスによって明らかにしてきており、その流れから今回、種子抽出物の主成分候補として浮上していたグネチンCに着目、マウス投与試験によるメカニズム解明を進めた。
しかし、現行の薬物療法は単一臓器や経路に対する作用が中心で、副作用やコストの面でも課題は多く、より多臓器に作用し、安全性も高い新規治療選択肢の開発が強く求められている。
首藤准教授らの研究グループは、これまでの研究において、メリンジョに含まれるポリフェノール類に注目し、その種子抽出物が脂肪組織でアディポネクチンを多量体化させ、インスリン感受性を改善する作用を持つことを発見していた。
中でもアディポネクチン多量体化に関与する酵素DsbA-Lの発現が鍵を握ると、2型糖尿病モデルのマウスによって明らかにしてきており、その流れから今回、種子抽出物の主成分候補として浮上していたグネチンCに着目、マウス投与試験によるメカニズム解明を進めた。
脂肪と肝臓への双方への作用で効果を発揮
研究グループは、まず遺伝的背景をそろえたマウスに高脂肪食を与え、肥満・高血糖・脂肪肝といったメタボリックシンドローム様病態を誘導した。
その上で、グネチンCを4週間経口投与したところ、体重増加が有意に抑制され、空腹時血糖値も顕著に低下した。白色脂肪組織への蓄積や肝臓への脂肪蓄積も改善され、グネチンCが脂肪代謝全体に広く作用することが示唆されたという。
その上で、グネチンCを4週間経口投与したところ、体重増加が有意に抑制され、空腹時血糖値も顕著に低下した。白色脂肪組織への蓄積や肝臓への脂肪蓄積も改善され、グネチンCが脂肪代謝全体に広く作用することが示唆されたという。
この代謝改善効果のメカニズムを詳細解析したところ、グネチンCは脂肪組織と肝臓において、異なる分子経路を同時に活性化し、それらが協調作用していることが判明した。
脂肪組織では、グネチンCが核内受容体のPPARγを刺激し、その下流でDsbA-L酵素の発現を誘導していた。これにより血中の高分子量アディポネクチンが増加、インスリン感受性の改善や脂肪燃焼の促進、抗炎症作用など多様な代謝保護効果を発揮する流れが生まれていた。
一方の肝臓では、グネチンCがサーチュイン1と呼ばれるNAD依存性脱アセチル化酵素に直接結合し、その活性を高めることが分かった。サーチュイン1は長寿遺伝子として知られるが、代謝調節の中心因子でもあり、ここでは肝臓特異的ホルモンFGF21の転写と分泌を顕著に促進していたという。
FGF21は肝臓から血中へ分泌されたのち、脂肪細胞にあるFGFR1と補助因子βKlothoを介して再び脂肪組織に作用、PPARγとDsbA-Lを間接的に刺激し、アディポネクチンの多量体化を増幅する可能性も示唆された。
研究グループはこれらの結果から、グネチンCが、従来の抗肥満、抗糖尿病薬が持つ単一臓器・単一標的作用ではなく、多臓器・多階層的な代謝制御ネットワークに働きかける新たな天然物由来の治療候補分子として高いポテンシャルを持つとしている。
グネチンCによるサーチュイン1活性化は、よく知られたポリフェノール成分であるレスベラトロールよりも強いことが確認されており、さらに古くから食用とされてきた植物由来であるため、安全性の面でも優れた特性を持っているともされた。
今後は機能性食品や新規代謝性疾患治療薬などとして、実用化への期待も高まる。
(画像はプレスリリースより)
FGF21は肝臓から血中へ分泌されたのち、脂肪細胞にあるFGFR1と補助因子βKlothoを介して再び脂肪組織に作用、PPARγとDsbA-Lを間接的に刺激し、アディポネクチンの多量体化を増幅する可能性も示唆された。
研究グループはこれらの結果から、グネチンCが、従来の抗肥満、抗糖尿病薬が持つ単一臓器・単一標的作用ではなく、多臓器・多階層的な代謝制御ネットワークに働きかける新たな天然物由来の治療候補分子として高いポテンシャルを持つとしている。
グネチンCによるサーチュイン1活性化は、よく知られたポリフェノール成分であるレスベラトロールよりも強いことが確認されており、さらに古くから食用とされてきた植物由来であるため、安全性の面でも優れた特性を持っているともされた。
今後は機能性食品や新規代謝性疾患治療薬などとして、実用化への期待も高まる。
(画像はプレスリリースより)
