業界ニュース
ストレス時におけるたんぱく質輸送抑制の仕組みが明らかに
2026.07.14
広島大学は9日、同大学大学院統合生命科学研究科の花岡和樹氏、中里光希氏、Philipp Schlarmann氏、船戸耕一氏、酒類総合研究所の金井宗良氏、家藤治幸氏、ジュネーブ大学のHoward Riezman教授、セビリア大学Manuel Muniz教授らの共同研究グループが、細胞内でたんぱく質が運ばれる仕組みについて、新たな調節メカニズムを明らかにしたことを発表した。
膜の変化を感知して細胞内の流れを調整
広島大学は9日、同大学大学院統合生命科学研究科の花岡和樹氏、中里光希氏、Philipp Schlarmann氏、船戸耕一氏、酒類総合研究所の金井宗良氏、家藤治幸氏、ジュネーブ大学のHoward Riezman教授、セビリア大学Manuel Muniz教授らの共同研究グループが、細胞内でたんぱく質が運ばれる仕組みについて、新たな調節メカニズムを明らかにしたことを発表した。
今回の研究成果は、国際科学雑誌「Nature Communications」に7月3日付で掲載されている。
人の体をつくる細胞では、たんぱく質や脂質が正しい場所へ運ばれることによって生命活動が維持されている。なかでも小胞体はたんぱく質や脂質が作られる重要な細胞小器官で、ここで作られたたんぱく質や脂質は、COPII小胞と呼ばれる輸送小胞に包まれてゴルジ体へ運ばれ、その後目的地へと届けられていく。この仕組みは細胞内物流の出発点にあたるもので、酵母からヒトまで広く見られる基本的仕組みであるという。
COPII小胞は、小胞体膜上のER exit site(ERES)という特定領域で形成される。ERESでは、COPII小胞形成に必要なたんぱく質群が集まり、Sec16と呼ばれるたんぱく質がその集合を支える足場として働き、小胞形成が起こっている。
つまりERESは小胞体からの輸送を開始するための出荷口であり、Sec16がその出荷口を作るための土台として重要な役割を担っているといえる。
一方、小胞体は常に一定の状態に保たれているわけではなく、細胞がストレスにさらされると、たんぱく質の正常な折りたたみが妨げられ、異常なたんぱく質が生じて小胞体に蓄積される。この蓄積は、異常たんぱく質が適切に修復されるまで、他の場所へと移動していくのを防ぐ、小胞体の品質管理機構ともいえるものと考えられている。
しかし、小胞体ストレスがどのようにしてCOPII小胞の形成抑制へと伝達されるのかについては、これまでよく分かっていなかった。
今回の研究成果は、国際科学雑誌「Nature Communications」に7月3日付で掲載されている。
人の体をつくる細胞では、たんぱく質や脂質が正しい場所へ運ばれることによって生命活動が維持されている。なかでも小胞体はたんぱく質や脂質が作られる重要な細胞小器官で、ここで作られたたんぱく質や脂質は、COPII小胞と呼ばれる輸送小胞に包まれてゴルジ体へ運ばれ、その後目的地へと届けられていく。この仕組みは細胞内物流の出発点にあたるもので、酵母からヒトまで広く見られる基本的仕組みであるという。
COPII小胞は、小胞体膜上のER exit site(ERES)という特定領域で形成される。ERESでは、COPII小胞形成に必要なたんぱく質群が集まり、Sec16と呼ばれるたんぱく質がその集合を支える足場として働き、小胞形成が起こっている。
つまりERESは小胞体からの輸送を開始するための出荷口であり、Sec16がその出荷口を作るための土台として重要な役割を担っているといえる。
一方、小胞体は常に一定の状態に保たれているわけではなく、細胞がストレスにさらされると、たんぱく質の正常な折りたたみが妨げられ、異常なたんぱく質が生じて小胞体に蓄積される。この蓄積は、異常たんぱく質が適切に修復されるまで、他の場所へと移動していくのを防ぐ、小胞体の品質管理機構ともいえるものと考えられている。
しかし、小胞体ストレスがどのようにしてCOPII小胞の形成抑制へと伝達されるのかについては、これまでよく分かっていなかった。
脂質代謝異常を基盤とする各種疾患の理解や治療法開発に期待
研究グループでは、モデル生物の出芽酵母を用い、小胞体ストレス時にCOPII小胞によるたんぱく質輸送がどう調節されるか解析を行った。
まず、小胞体ストレスを誘導した細胞では、リン脂質の一種、ホスファチジン酸の量が増加することが判明、これは小胞体膜上で転写制御因子Opi1の局在を制御し、転写因子の働きを調節する脂質として知られるものだ。
そこで研究グループは、この転写制御系の下流でCOPII小胞輸送を抑制する因子の探索を進めることとした。
広範な遺伝学的解析の結果、先の転写因子の下流で発現が制御され、COPII小胞輸送を調節する新因子として、YIP3遺伝子を同定することに成功した。YIP3がコードするたんぱく質は、COPII小胞輸送を抑制する因子として働くことが分かった。実際に小胞体ストレスを誘導すると、このたんぱく質量が増えていることも確認できた。
続いてYIP3にコードされるたんぱく質がいかにCOPII小胞形成を抑制するのか調べた。COPII小胞は、小胞体膜上のERESで形成される。ERESでは、Sec16がCOPII小胞形成に必要なたんぱく質群を集める土台となっている。
研究では、蛍光顕微鏡観察により、Sec16が小胞体膜上にどの程度集まるかを分析、すると小胞体ストレス時には、Sec16の集積が低下すると判明した。
これらから小胞体ストレス時には、小胞体膜におけるPA量が増加し、特定の転写制御系を介してYIP3遺伝子発現が進み、増加した同遺伝子にコードされるたんぱく質がERESにおけるSec16の集積を抑えてCOPII小胞形成を阻害することが明らかになった。
研究グループでは、今回、小胞体ストレス時には小胞体膜のホスファチジン酸レベルが増加し、その情報が転写を介してCOPII小胞形成の抑制につながることを突き止めた。
一方、YIP3にコードされるたんぱく質とSec16は細胞内局在が完全には一致せず、両者の明確な物理的相互作用も確認できなかった。このことから、これらは直接制御しているのではなく、別の因子を介して集積を制御している可能性がある。今後はその詳細を明らかにすることが必要だ。
また、注目した転写制御系の下流には、対象たんぱく質以外にもCOPII小胞形成の最初のステップを制御する、未知の因子の存在可能性が示されたため、その同定を行うことにより、小胞体ストレス時の輸送制御機構の全容解明を目指したいともした。
YIP3にコードされるたんぱく質は、PRAファミリーに属するもので、このファミリーは酵母からヒトまで広く保存されている、よって今回の仕組みは、ヒトを含む高等真核生物における小胞体ストレス時のたんぱく質輸送制御メカニズムを理解する際にも大いに役立つと見られる。
小胞体ストレスは、神経変性疾患や糖尿病、がんをはじめとする多様な疾患の病態に関与している。今回の成果を基軸に、脂質とPRAファミリーたんぱく質を介したCOPII小胞の形成制御機構、小胞体ストレス応答の機構解明が進めば、分泌不全、小胞体恒常性の破綻、または脂質代謝異常を基盤とする諸疾患の病因・病態理解に大きく貢献すると考えられ、新規治療法の開発などにもつながっていくと見込まれている。
(画像はプレスリリースより)
まず、小胞体ストレスを誘導した細胞では、リン脂質の一種、ホスファチジン酸の量が増加することが判明、これは小胞体膜上で転写制御因子Opi1の局在を制御し、転写因子の働きを調節する脂質として知られるものだ。
そこで研究グループは、この転写制御系の下流でCOPII小胞輸送を抑制する因子の探索を進めることとした。
広範な遺伝学的解析の結果、先の転写因子の下流で発現が制御され、COPII小胞輸送を調節する新因子として、YIP3遺伝子を同定することに成功した。YIP3がコードするたんぱく質は、COPII小胞輸送を抑制する因子として働くことが分かった。実際に小胞体ストレスを誘導すると、このたんぱく質量が増えていることも確認できた。
続いてYIP3にコードされるたんぱく質がいかにCOPII小胞形成を抑制するのか調べた。COPII小胞は、小胞体膜上のERESで形成される。ERESでは、Sec16がCOPII小胞形成に必要なたんぱく質群を集める土台となっている。
研究では、蛍光顕微鏡観察により、Sec16が小胞体膜上にどの程度集まるかを分析、すると小胞体ストレス時には、Sec16の集積が低下すると判明した。
これらから小胞体ストレス時には、小胞体膜におけるPA量が増加し、特定の転写制御系を介してYIP3遺伝子発現が進み、増加した同遺伝子にコードされるたんぱく質がERESにおけるSec16の集積を抑えてCOPII小胞形成を阻害することが明らかになった。
研究グループでは、今回、小胞体ストレス時には小胞体膜のホスファチジン酸レベルが増加し、その情報が転写を介してCOPII小胞形成の抑制につながることを突き止めた。
一方、YIP3にコードされるたんぱく質とSec16は細胞内局在が完全には一致せず、両者の明確な物理的相互作用も確認できなかった。このことから、これらは直接制御しているのではなく、別の因子を介して集積を制御している可能性がある。今後はその詳細を明らかにすることが必要だ。
また、注目した転写制御系の下流には、対象たんぱく質以外にもCOPII小胞形成の最初のステップを制御する、未知の因子の存在可能性が示されたため、その同定を行うことにより、小胞体ストレス時の輸送制御機構の全容解明を目指したいともした。
YIP3にコードされるたんぱく質は、PRAファミリーに属するもので、このファミリーは酵母からヒトまで広く保存されている、よって今回の仕組みは、ヒトを含む高等真核生物における小胞体ストレス時のたんぱく質輸送制御メカニズムを理解する際にも大いに役立つと見られる。
小胞体ストレスは、神経変性疾患や糖尿病、がんをはじめとする多様な疾患の病態に関与している。今回の成果を基軸に、脂質とPRAファミリーたんぱく質を介したCOPII小胞の形成制御機構、小胞体ストレス応答の機構解明が進めば、分泌不全、小胞体恒常性の破綻、または脂質代謝異常を基盤とする諸疾患の病因・病態理解に大きく貢献すると考えられ、新規治療法の開発などにもつながっていくと見込まれている。
(画像はプレスリリースより)
参考文献・サイト
この記事をシェアする
