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岐阜大学ら、乳児の健康を支える母乳オリゴ糖をつくる培養細胞を開発
2026.06.30
岐阜大学は25日、同大学糖鎖生命コア研究所の藤田盛久教授、木塚康彦教授、中嶋和紀准教授らの研究グループが、京都大学大学院生命科学研究科の片山高嶺教授、加藤紀彦准教授らの研究グループと共同で、一般的な培養細胞の中に、母乳オリゴ糖(HMO)の合成経路を再構築することに成功したと発表した。
一般的培養細胞でHMOの合成経路再構築に成功
岐阜大学は25日、同大学糖鎖生命コア研究所の藤田盛久教授、木塚康彦教授、中嶋和紀准教授らの研究グループが、京都大学大学院生命科学研究科の片山高嶺教授、加藤紀彦准教授らの研究グループと共同で、一般的な培養細胞の中に、母乳オリゴ糖(HMO)の合成経路を再構築することに成功したと発表した。
この研究成果は、6月20日付で「Metabolic Engineering」誌オンライン版に掲載されている。
母乳には、乳児の栄養となる脂質やたんぱく質のほか、HMOと呼ばれる多様な糖鎖が豊富に含まれている。HMOはグルコースやガラクトース、N-アセチルグルコサミン、フコース、シアル酸といった糖が様々な形でつながったもので、母乳では乳糖、脂質に次ぐ主要固形成分のひとつになっている。
HMOは乳児において、腸内に生息するビフィズス菌などの有用細菌を増殖させる代表的プレバイオティクスでもあり、構造の違いによって多様な働きをし、特定のHMOは乳児の腸内細菌叢や免疫系の発達にも関与すると見られている。免疫機能や腸、脳の発達を支える重要な役割を担うというわけだ。
中でもジシアリルラクト-N-テトラオース(DSLNT)などの複雑なHMOは、早産児で問題となる壊死性腸炎との関連が指摘されており、機能解明や応用が急がれている。しかし、複数の糖を正しい順序と結合様式でつながねばならないため、化学合成や酵素合成には多くの工程が必要とされてきた。
母乳を作る乳腺上皮細胞では、複数の糖転移酵素が協調し、HMOを合成する。しかし乳腺細胞を長期安定的に培養することは困難で、一般的培養細胞ではほとんどHMOが作られない。そこで研究グループでは、通常の培養細胞に必要な要素を補うことで、細胞内にHMO生産経路を再構築できないかと考えた。
この研究成果は、6月20日付で「Metabolic Engineering」誌オンライン版に掲載されている。
母乳には、乳児の栄養となる脂質やたんぱく質のほか、HMOと呼ばれる多様な糖鎖が豊富に含まれている。HMOはグルコースやガラクトース、N-アセチルグルコサミン、フコース、シアル酸といった糖が様々な形でつながったもので、母乳では乳糖、脂質に次ぐ主要固形成分のひとつになっている。
HMOは乳児において、腸内に生息するビフィズス菌などの有用細菌を増殖させる代表的プレバイオティクスでもあり、構造の違いによって多様な働きをし、特定のHMOは乳児の腸内細菌叢や免疫系の発達にも関与すると見られている。免疫機能や腸、脳の発達を支える重要な役割を担うというわけだ。
中でもジシアリルラクト-N-テトラオース(DSLNT)などの複雑なHMOは、早産児で問題となる壊死性腸炎との関連が指摘されており、機能解明や応用が急がれている。しかし、複数の糖を正しい順序と結合様式でつながねばならないため、化学合成や酵素合成には多くの工程が必要とされてきた。
母乳を作る乳腺上皮細胞では、複数の糖転移酵素が協調し、HMOを合成する。しかし乳腺細胞を長期安定的に培養することは困難で、一般的培養細胞ではほとんどHMOが作られない。そこで研究グループでは、通常の培養細胞に必要な要素を補うことで、細胞内にHMO生産経路を再構築できないかと考えた。
酵素の組み合わせで作り分けも可能に
研究グループが培養細胞株のHEK293細胞遺伝子発現を解析した結果、乳糖合成に必要な酵素であるB4GALT1は存在していたものの、LALBAが発現していないことが判明した。
乳糖はほぼ全てのHMOの土台となるため、LALBAの欠如がHMO合成のボトルネックであると考えられたという。そこで、LALBA遺伝子を導入したところ、LALBAはゴルジ体に局在し、B4GALT1と複合体を形成、細胞は乳糖を始めとする様々なHMOを合成、培養液中へと分泌するようになった。
LALBAを発現させたこの培養細胞の培養液からは、少なくとも8種類のHMO生産が確認できたという。
さらにHMOは、糖転移酵素が糖をひとつずつ付加することで組み立てられることを踏まえ、B3GNT2が乳糖にN-アセチルグルコサミンを付加、ラクト-N-トリオースを作る酵素であり、B3GALT5がガラクトースをその上に付加し、LNTを作る主要酵素であることを実験的に示した。
LALBAに加え、B3GNT2とBSGALT5を発現させると、LNTやLSTaなどのHMOが増え、とくにDSLNTはLALBAのみを発現する細胞に比べ、約8倍にも増加した。これは、細胞に導入する酵素の組み合わせにより、目的のHMOへ合成経路を誘導できる、作り分けができるということを意味する。
研究グループは、続いて細胞合成したHMOが腸内細菌に利用されるかを確かめるため、LALBAを発現するHEK293細胞の培養液を、腸内細菌ビフィズス菌の培養液に加えた。すると、とくに乳児の腸内に多く存在する有用細菌のBifidobacterium infantisで増殖促進が確認できた。培養液中の3'-SLが細菌培養後に減少したため、細胞が合成したHMOが実際にこれを利用、ビフィズス菌を育てたと考えられた。
今回の研究で、母乳を作らない一般的培養細胞の中に、HMOの合成経路を再構築できることが示された。このシステムは、単にHMOを生産するだけでなく、どの酵素がどの順序で働くと、どのHMOができるのかを細胞内で検証できる点に大きな特徴があるという。
現在の生産量は、工業的に最適化された微生物発酵に比べると低く、ただちに大量生産へと置き換えられる段階ではない。一方で哺乳動物由来の細胞株は、糖鎖合成機構を有するため、より複雑なHMOや就職HMOの生合成研究、機能評価、研究用標準品の作製に適している。
研究グループでは今後、高密度での培養が可能な浮遊培養や、不要成分の少ない無血清培養への適応、HMOの原料となる糖ヌクレオチドの供給の強化、不要な合成経路の抑制、高生産の細胞クローン選抜などを進めることにより、生産量を向上させられると見込んでいる。
また、さらに多くの糖転移酵素を組み合わせることで、天然の母乳に含まれる多様なHMOを、目的に応じて作り分ける技術へ都発展させられるのではないかとも考えているとした。
今後、より複雑なHMOの生合成機構の解明や機能解析を推進し、乳児栄養や腸内細菌、健康・医療分野への応用にもつなげていきたいとしている。
(画像はプレスリリースより)
乳糖はほぼ全てのHMOの土台となるため、LALBAの欠如がHMO合成のボトルネックであると考えられたという。そこで、LALBA遺伝子を導入したところ、LALBAはゴルジ体に局在し、B4GALT1と複合体を形成、細胞は乳糖を始めとする様々なHMOを合成、培養液中へと分泌するようになった。
LALBAを発現させたこの培養細胞の培養液からは、少なくとも8種類のHMO生産が確認できたという。
さらにHMOは、糖転移酵素が糖をひとつずつ付加することで組み立てられることを踏まえ、B3GNT2が乳糖にN-アセチルグルコサミンを付加、ラクト-N-トリオースを作る酵素であり、B3GALT5がガラクトースをその上に付加し、LNTを作る主要酵素であることを実験的に示した。
LALBAに加え、B3GNT2とBSGALT5を発現させると、LNTやLSTaなどのHMOが増え、とくにDSLNTはLALBAのみを発現する細胞に比べ、約8倍にも増加した。これは、細胞に導入する酵素の組み合わせにより、目的のHMOへ合成経路を誘導できる、作り分けができるということを意味する。
研究グループは、続いて細胞合成したHMOが腸内細菌に利用されるかを確かめるため、LALBAを発現するHEK293細胞の培養液を、腸内細菌ビフィズス菌の培養液に加えた。すると、とくに乳児の腸内に多く存在する有用細菌のBifidobacterium infantisで増殖促進が確認できた。培養液中の3'-SLが細菌培養後に減少したため、細胞が合成したHMOが実際にこれを利用、ビフィズス菌を育てたと考えられた。
今回の研究で、母乳を作らない一般的培養細胞の中に、HMOの合成経路を再構築できることが示された。このシステムは、単にHMOを生産するだけでなく、どの酵素がどの順序で働くと、どのHMOができるのかを細胞内で検証できる点に大きな特徴があるという。
現在の生産量は、工業的に最適化された微生物発酵に比べると低く、ただちに大量生産へと置き換えられる段階ではない。一方で哺乳動物由来の細胞株は、糖鎖合成機構を有するため、より複雑なHMOや就職HMOの生合成研究、機能評価、研究用標準品の作製に適している。
研究グループでは今後、高密度での培養が可能な浮遊培養や、不要成分の少ない無血清培養への適応、HMOの原料となる糖ヌクレオチドの供給の強化、不要な合成経路の抑制、高生産の細胞クローン選抜などを進めることにより、生産量を向上させられると見込んでいる。
また、さらに多くの糖転移酵素を組み合わせることで、天然の母乳に含まれる多様なHMOを、目的に応じて作り分ける技術へ都発展させられるのではないかとも考えているとした。
今後、より複雑なHMOの生合成機構の解明や機能解析を推進し、乳児栄養や腸内細菌、健康・医療分野への応用にもつなげていきたいとしている。
(画像はプレスリリースより)
参考文献・サイト
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