慶大と明治HDらのチームが発見
慶應義塾大学はこのほど、D型アミノ酸の1つであるD型トリプトファンが、腸内の病原菌の増殖を抑え、感染性腸炎を防ぐ力をもつことを発見したと発表した。同大学薬学部の金倫基教授と明治ホールディングス株式会社を中心とする研究グループの成果で、2022年8月2日(米国東部時間)の「iScience」(電子版)にも掲載された。
タンパク質の材料であるアミノ酸は、生物にとって必要不可欠なものだが、種類としては20種類があり、その組み合わせやつながり方によってさまざまなタンパク質が作られている。20種類のアミノ酸には、それぞれD型とL型があり、D型とL型はちょうどそれぞれを鏡に映した形の関係にある。
人間の体を作るタンパク質は全てL型アミノ酸で、D型アミノ酸は長く人間にとって特段の作用をもたないものとみられていた。だが近年、D型アミノ酸も哺乳類の体内に存在し、多様な役割を果たしていることが確認されるようになっている。
研究グループは、腸内細菌によって作られたD型アミノ酸が殺菌作用を有することに着目、腸内細菌叢のバランスを維持する上で大きな役割を果たしているのではないかと予想し、腸管病原細菌の増殖とD型アミノ酸各種の及ぼす影響について研究した。
タンパク質の材料であるアミノ酸は、生物にとって必要不可欠なものだが、種類としては20種類があり、その組み合わせやつながり方によってさまざまなタンパク質が作られている。20種類のアミノ酸には、それぞれD型とL型があり、D型とL型はちょうどそれぞれを鏡に映した形の関係にある。
人間の体を作るタンパク質は全てL型アミノ酸で、D型アミノ酸は長く人間にとって特段の作用をもたないものとみられていた。だが近年、D型アミノ酸も哺乳類の体内に存在し、多様な役割を果たしていることが確認されるようになっている。
研究グループは、腸内細菌によって作られたD型アミノ酸が殺菌作用を有することに着目、腸内細菌叢のバランスを維持する上で大きな役割を果たしているのではないかと予想し、腸管病原細菌の増殖とD型アミノ酸各種の及ぼす影響について研究した。
注目度高まるD型アミノ酸
実験の結果、ほとんどのD型アミノ酸の添加により、マウスの腸内病原体の増殖が抑制されていることが分かった。
とくにその力が強かったD型メチオニンとD型トリプトファンについて、病原菌に感染したマウスの生存率に影響を与えるか、さらなる調査を行ったところ、D型トリプトファンは体内の細菌増殖を抑え、生存率を上げることが判明したという。D型トリプトファンには、細菌感染で生じる腸炎を抑える効果もみられた。
実験から、D型トリプトファンの投与は、腸内細菌叢を変化させると考えられたため、投与後の腸内細菌叢について、詳細な組成解析を行った。すると割合の増加する細菌群と減少する細菌群の存在が明らかになり、D型トリプトファンは、こうした組成の変化、特定の腸内細菌の増殖阻害によって、腸炎を抑制させていると考えられた。
さらに、D型トリプトファンが細菌の代謝にどういった影響を与えているか検証したところ、L型に比べD型のトリプトファン添加時に、細菌内ではインドールアクリル酸が多く検出されると分かった。
そこで、マウスにインドールアクリル酸を多く含む飼料を与え、病原性細菌に感染させたところ、対照マウスと比べ生存率が向上することが確認された。感染後の糞便中における細菌の数も減少していた。これらからD型トリプトファンを与えることで、菌体内でインドールアクリル酸が増加し、細菌の増殖が抑制されるという仕組みが働いているものと考えられた。
機能が明らかにされた腸内細菌由来の代謝物はまだほんの一部だが、腸内細菌叢はそうした未知の代謝物を介し、人間の健康状態に大きな影響を及ぼしているとみられている。
今回の研究では、腸内細菌によっても産生されるD型アミノ酸の新たな役割が見出された。D型トリプトファンをはじめ、これらD型アミノ酸が、腸内環境を改善する新たな機能性素材として活かせる可能性がある。
腸管病原細菌による感染症や炎症性腸疾患などの予防・治療応用も見込め、さらなる研究の進展が期待される。
(画像はプレスリリースより)
とくにその力が強かったD型メチオニンとD型トリプトファンについて、病原菌に感染したマウスの生存率に影響を与えるか、さらなる調査を行ったところ、D型トリプトファンは体内の細菌増殖を抑え、生存率を上げることが判明したという。D型トリプトファンには、細菌感染で生じる腸炎を抑える効果もみられた。
実験から、D型トリプトファンの投与は、腸内細菌叢を変化させると考えられたため、投与後の腸内細菌叢について、詳細な組成解析を行った。すると割合の増加する細菌群と減少する細菌群の存在が明らかになり、D型トリプトファンは、こうした組成の変化、特定の腸内細菌の増殖阻害によって、腸炎を抑制させていると考えられた。
さらに、D型トリプトファンが細菌の代謝にどういった影響を与えているか検証したところ、L型に比べD型のトリプトファン添加時に、細菌内ではインドールアクリル酸が多く検出されると分かった。
そこで、マウスにインドールアクリル酸を多く含む飼料を与え、病原性細菌に感染させたところ、対照マウスと比べ生存率が向上することが確認された。感染後の糞便中における細菌の数も減少していた。これらからD型トリプトファンを与えることで、菌体内でインドールアクリル酸が増加し、細菌の増殖が抑制されるという仕組みが働いているものと考えられた。
機能が明らかにされた腸内細菌由来の代謝物はまだほんの一部だが、腸内細菌叢はそうした未知の代謝物を介し、人間の健康状態に大きな影響を及ぼしているとみられている。
今回の研究では、腸内細菌によっても産生されるD型アミノ酸の新たな役割が見出された。D型トリプトファンをはじめ、これらD型アミノ酸が、腸内環境を改善する新たな機能性素材として活かせる可能性がある。
腸管病原細菌による感染症や炎症性腸疾患などの予防・治療応用も見込め、さらなる研究の進展が期待される。
(画像はプレスリリースより)