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順天堂大ら、ヒト腸内細菌の遺伝子改変ツールを開発し腸内定着と炎症制御に関わる因子を同定
2026.06.09
順天堂大学は5日、同大大学院医学研究科腸内細菌療法リサーチセンターの福田真嗣特任教授、筑波大学医学医療系の尾花望助教らの研究チームが、ヒト腸内細菌の遺伝子操作ツール開発に成功し、これを用いた解析により、菌表面を覆う莢膜多糖が腸内定着に重要であり、炎症を抑制する機能を持つことを明らかにしたと発表した。
ヒト腸内細菌の機能解析に大きな前進
順天堂大学は5日、同大大学院医学研究科腸内細菌療法リサーチセンターの福田真嗣特任教授、筑波大学医学医療系の尾花望助教らの研究チームが、ヒト腸内細菌の遺伝子操作ツール開発に成功し、これを用いた解析により、菌表面を覆う莢膜多糖が腸内定着に重要であり、炎症を抑制する機能を持つことを明らかにしたと発表した。
この研究成果は3月12日付で「Nature Communications」に掲載されている。
私たちの腸内には40兆個を超える細菌が生息しており、これらを腸内細菌叢と呼ぶ。腸内細菌叢は健康維持や多様な疾患の発症・進展と密接に関わっており、健康なヒトの腸内では多種多様な細菌がバランス良く共存しているが、このバランスが崩れるとディスバイオーシスと呼ばれる状態になり、特定の潜在的病原細菌が増加、疾患の引き金になることがある。
例えばLachnospiraceae科のMediterraneibacter gnavusは、健常者の腸内にも存在する常在腸内細菌の一種だが、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、乳児アレルギー患者でとくに多いことが知られている。中でも炎症性腸疾患の場合、この菌の相対存在量と疾患の活動性が正に相関することも判明しているという。
だが、この菌は遺伝子改変が困難で、その病原性や腸内定着メカニズムの分子的基盤などについては、ほとんど解明されていなかった。
研究グループは、このM.gnavusの腸管定着因子や病原性因子を同定するため、この菌に特化した遺伝子改変ツールの開発を図った。その結果、目的遺伝子の導入や細菌挙動の可視化、遺伝子機能解析を可能にする遺伝子導入プラスミド、蛍光標識系、標的遺伝子欠失法など複数の分子遺伝学的ツールを整備することに成功、M.gnavusの遺伝子改変や機能解析が可能な環境を整えた。
この研究成果は3月12日付で「Nature Communications」に掲載されている。
私たちの腸内には40兆個を超える細菌が生息しており、これらを腸内細菌叢と呼ぶ。腸内細菌叢は健康維持や多様な疾患の発症・進展と密接に関わっており、健康なヒトの腸内では多種多様な細菌がバランス良く共存しているが、このバランスが崩れるとディスバイオーシスと呼ばれる状態になり、特定の潜在的病原細菌が増加、疾患の引き金になることがある。
例えばLachnospiraceae科のMediterraneibacter gnavusは、健常者の腸内にも存在する常在腸内細菌の一種だが、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、乳児アレルギー患者でとくに多いことが知られている。中でも炎症性腸疾患の場合、この菌の相対存在量と疾患の活動性が正に相関することも判明しているという。
だが、この菌は遺伝子改変が困難で、その病原性や腸内定着メカニズムの分子的基盤などについては、ほとんど解明されていなかった。
研究グループは、このM.gnavusの腸管定着因子や病原性因子を同定するため、この菌に特化した遺伝子改変ツールの開発を図った。その結果、目的遺伝子の導入や細菌挙動の可視化、遺伝子機能解析を可能にする遺伝子導入プラスミド、蛍光標識系、標的遺伝子欠失法など複数の分子遺伝学的ツールを整備することに成功、M.gnavusの遺伝子改変や機能解析が可能な環境を整えた。
多様な腸内細菌研究の展開や次世代プロバイオティクスの開発に期待
研究グループは、まずM.gnavusの細胞表層へのたんぱく質提示に関与するソルターゼ酵素に着目、8種類あるソルターゼ遺伝子のうち6種類をそれぞれ破壊した細菌株を作製した。
そしてこれら破壊株のうち、srtB3はスーパー抗原の細胞表層提示に、srtB4は莢膜多糖の提示に必須であることを突き止めた。さらにsrtB4遺伝子近傍に存在する糖転移酵素や、ヌクレオチド糖生合成酵素などの遺伝子群も、莢膜多糖の産生に不可欠であることを明らかにした。
莢膜多糖が腸管定着に及ぼす影響を評価するため、莢膜多糖を持つ野生株と莢膜多糖を欠いた欠損株を無菌マウスに同時投与し、腸内に共定着させたところ、莢膜欠損株が速やかに腸管から排除された。莢膜多糖がM.gnavusの腸管定着に重要な役割を果たすことが示唆されたといえる。
これらの株を用い、大腸炎モデルで炎症誘導能を比較したところ、欠損株は野生株と比べ、強い炎症活性を示した。莢膜多糖は腸管の定着因子であるとともに、宿主炎症応答を抑制する役割を担っているとみられる。
さらに健常者とクローン病患者由来のM.gnavus分離株における関連遺伝子の保有状況を比較したところ、莢膜多糖産生に関与する遺伝子群は健常者株で高頻度に保有されていたのに対し、クローン病患者株では失われていることが判明した。莢膜多糖の有無が炎症性疾患への寄与や疾患活動性と関連していると考えられ、バイオマーカーとしての応用可能性もあるとみられている。
なお、今回の研究で開発した遺伝子導入用プラスミドは、M.gnavusの近縁種にも導入可能であったことから、これら腸内細菌においても遺伝子改変や遺伝子機能解析が可能となり、腸内細菌研究が大いに進展することも期待された。
研究グループでは、今後M.gnavusの持つ多様な遺伝子の機能解析が可能となったことを受け、関連するさまざまな疾患の発症メカニズムや、その因果関係の解明が進むと見込んでいる。
また開発したツールが広く応用可能であるため、これまで未解明だった腸内細菌群の研究にも新たな展開が期待でき、最終的には次世代プロバイオティクスの開発や、疾患予防、治療戦略への応用につながっていくことも考えられるとした。
(画像はプレスリリースより)
そしてこれら破壊株のうち、srtB3はスーパー抗原の細胞表層提示に、srtB4は莢膜多糖の提示に必須であることを突き止めた。さらにsrtB4遺伝子近傍に存在する糖転移酵素や、ヌクレオチド糖生合成酵素などの遺伝子群も、莢膜多糖の産生に不可欠であることを明らかにした。
莢膜多糖が腸管定着に及ぼす影響を評価するため、莢膜多糖を持つ野生株と莢膜多糖を欠いた欠損株を無菌マウスに同時投与し、腸内に共定着させたところ、莢膜欠損株が速やかに腸管から排除された。莢膜多糖がM.gnavusの腸管定着に重要な役割を果たすことが示唆されたといえる。
これらの株を用い、大腸炎モデルで炎症誘導能を比較したところ、欠損株は野生株と比べ、強い炎症活性を示した。莢膜多糖は腸管の定着因子であるとともに、宿主炎症応答を抑制する役割を担っているとみられる。
さらに健常者とクローン病患者由来のM.gnavus分離株における関連遺伝子の保有状況を比較したところ、莢膜多糖産生に関与する遺伝子群は健常者株で高頻度に保有されていたのに対し、クローン病患者株では失われていることが判明した。莢膜多糖の有無が炎症性疾患への寄与や疾患活動性と関連していると考えられ、バイオマーカーとしての応用可能性もあるとみられている。
なお、今回の研究で開発した遺伝子導入用プラスミドは、M.gnavusの近縁種にも導入可能であったことから、これら腸内細菌においても遺伝子改変や遺伝子機能解析が可能となり、腸内細菌研究が大いに進展することも期待された。
研究グループでは、今後M.gnavusの持つ多様な遺伝子の機能解析が可能となったことを受け、関連するさまざまな疾患の発症メカニズムや、その因果関係の解明が進むと見込んでいる。
また開発したツールが広く応用可能であるため、これまで未解明だった腸内細菌群の研究にも新たな展開が期待でき、最終的には次世代プロバイオティクスの開発や、疾患予防、治療戦略への応用につながっていくことも考えられるとした。
(画像はプレスリリースより)
参考文献・サイト
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