遺伝子と腸内フローラの検査結果を統合したレポートの提供などを行っているAtlas Biomedの日本子会社、アトラス日本合同会社はこのほど、Atlas Biomedに所属するロス・カーヴァー・カーター氏の「がんと腸内フローラの関係」に関する考察レポートの抄訳を発表した。

レポートでは、腸内細菌が常に免疫系と相互作用し、多様な疾患の発生リスクに影響を及ぼしていることや、腸内細菌ががん予防や治療に果たす役割、がん細胞と闘うために免疫系をどう活性化させているかなどについて説明されている。

腸内フローラと総称される何兆もの微生物は、免疫系の発達を促し、免疫のホメオスタシスを制御、炎症の促進や抑制に関わっている。

健康な腸内フローラがどのようなものか、定義することは困難だが、多様性の欠如と病原性の高い種の増加は明らかに腸内外の炎症の引き金になっており、潰瘍性大腸炎やクローン病の発症リスク、大腸がんのリスク上昇と深く関係していることが明らかになった。

また、腸内フローラの状態が健全でない場合、悪性度の低い慢性炎症が促され、がん腫瘍を成長させてしまう可能性があるという。ピロリ菌のようにがんの原因物質である細菌もあり、腸内細菌とがんの関係性は深いようだ。

さらに、免疫療法の一種、免疫チェックポイント阻害剤に対する反応性について、人の腸内フローラの多様性と構成が影響を与える要素になることも動物及びヒトでの研究から判明した。

食事療法をはじめ、プロバイオティクスや精密抗生物質、糞便中の腸内細菌移植などで腸内細菌を良好に導くことが、免疫療法の奏効率を高める可能性がある。

とくに酪酸産生菌が豊富で多様、バランスの取れた腸内フローラは大腸がんの危険因子である潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性疾患発症リスクを下げることが分かった。

ただし免疫力が低下していると、活きた微生物を含むプロバイオティクス食品は、感染リスクをもたらす可能性があり、注意も必要という。

その上で、プロバイオティクス食品とプレバイオティクスの野菜を豊富に含む食事は、良い細菌を育て、腸内フローラの多様性を高められるため、免疫の健康状態を改善すると考えられている。

具体的な食事スタイルとしては、繊維質の多い果物や多様な野菜、豆類、健康的な脂肪、全粒穀物、種子類をしっかりと摂取する地中海食が推奨された。地中海食は、大腸がんや全死亡のリスクを低減させると臨床試験でも確認されている。

さらに赤肉や加工肉の摂取を控えるほど、腸がんのリスクを低減できることも証明されており、こうした食事での工夫から、がんの発症や治療奏効にも関係する全身の健康状態の改善が図れるものとみられる。

（画像はプレスリリースより）