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2023.08.16

慢性期病院で働く管理栄養士・栄養士とは? 仕事内容ややりがいなどを紹介!

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こんにちは。管理栄養士歴約10年のえぬこです。

今回の記事では、慢性期病院で働く管理栄養士について解説します。

「病院管理栄養士」聞くと、なんとなく栄養指導やNSTを想像するかもしれませんね。実は、病院は「急性期」「回復期」「慢性期」に分けられ、どの病院で働くかによって業務内容や求められる知識が大きく異なります。

私はキャリアの半分以上を老健で働いてきましたが、慢性期病院にも在籍していたことがありますので、実体験も踏まえて解説していきますね。

これから転職や就職を目指す若手・新卒は、病院の種類を分けて志望動機を言えるだけでも、ライバルとの差がつきますよ。

1.慢性期病院で働く管理栄養士・栄養士の役割と仕事内容とは?

慢性期病院とは?

慢性期病院は急性期治療を終了した患者さんが、引き続き医療的な処置やリハビリテーションを受けるための病院です。

リハビリというと回復期リハビリテーション病院をイメージするかもしれませんが、回復期は治療や機能回復を目標とするのに対し、慢性期では悪化を防ぎ、機能を維持することが目的であることが多いです。

もちろん、理想の目標は「在宅復帰」ですが、それが難しく看取りのケースも多くあります。

制度の名称は「療養型病院」で、現在は「医療療養病床」「介護療養病床」の2種類に分けられます。
■医療療養病床
医療保険が適用され、精神病床、感染病床、結核病床以外の病棟で長期療養を必要とする患者さんが入院。

■介護療養病床
介護保険が適用され、要介護1以上で長期療養と医療処置が必要な患者さんが入院。
介護療養病床は、2017年に厚生労働省が廃止を決定したため病床数は大幅に減少中です。

とはいえ、医療を必要とする高齢者の数は増え続けていますから、介護保険で運営される「介護療養院」が介護療養病床の代わりを担っていく方針です。移行期間が2024年3月までのため、それまでに転換される予定です。

慢性期病院における管理栄養士・栄養士の役割

慢性期病院の管理栄養士・栄養士は、患者さんの疾病や生活背景を理解した上で、適切な栄養管理と毎日の楽しみである食事提供を担います。

慢性期における栄養管理は長期戦です。長期間の療養生活において、食事を美味しく楽しく食べられるかどうかはQOLに大きく関わります。

そのため、安心安全で、栄養バランスが良く、季節感や味の面でも満足できる食事提供が求められる職場です。

また、胃ろうや中心静脈栄養の患者さんもいますので、経口摂取以外の栄養管理の知識も必要です。

慢性期病院における管理栄養士・栄養士の仕事内容

美味しい食事を提供するための「給食管理」と「栄養管理」が主な仕事内容です。

栄養管理では、管理栄養士が
・栄養アセスメントや栄養計画の作成
・栄養指導やカンファレンスへ参加

など行い、栄養面で患者さんを支えます。病院に外来があれば、外来栄養指導の実施やその広報活動を行うことも。

給食管理では、管理栄養士の行う栄養管理に沿って、患者さん一人ひとりに合わせた給食提供を行います。長期入院中のQOLのため、季節感のある献立や味の面でも妥協しない給食提供が求められやすいです。

一般的な給食業務と同じく、献立作成、発注、検品、下処理、調理、盛り付け、配膳下膳や食札管理などを担います。ただし、給食委託会社に委託している場合、給食管理業務はありません。

2.慢性期病院における管理栄養士・栄養士の給与やお休みなどの待遇面

給与

■管理栄養士
月給 18万~

■栄養士
月給 17万~
新卒の給与だと、上記が一般的です。

ベッド数が大きい病院や、大きい医療法人ではボーナスが手厚い場合や、経験加算の金額が高い場合もありますので、条件はよく確認しておきましょう。

ちなみに、私が働いていた病院は、経験3年で毎月の給与は19万円と低めでしたが、ボーナスが年間4カ月分あり、残業をしなくても年収は300万円以上でした。

勤務時間

■給食業務なし
日勤帯 9:00~18:00

■給食業務あり
早出・遅出あり

お休み

■栄養管理中心
日祝・土日祝休み

■給食業務あり
シフト制
年間休日は105~110日程度の法人が多いです。一方、土曜日は外来があるため午前中だけ出勤、という病院であれば年間休日87日という求人も。

3.慢性期病院での大変なこと・やりがいとは?

大変なこと

慢性期病院の患者さんの大半は、長い時間をかけてゆっくりとターミナル(看取り)へ向かっていきます。

高齢者が多いですから、糖尿病、慢性腎不全、心不全、呼吸器疾患、癌、などの内科系の疾患や、認知症や精神疾患など、複数の疾病を抱えて残りの人生を生きている方がほとんど。

そのため、教科書で勉強したような「ひとつだけの病気の栄養管理」が適用できるケースは少ないです。

複数の疾患、老化による嚥下機能や認知機能の低下、生活歴による嗜好などを考慮しながらの栄養管理は、ケースバイケース。そのため、勉強が欠かせません。

そして、医師や看護師、リハビリ職だけでなく、MSW(病院のソーシャルワーカー)と連携していくコミュニケーション能力も必要です。

管理栄養士・栄養士としての専門性だけでなく「人間力」(コミュニケーション能力や他職種への理解)も求められます。

やりがい

慢性期病院の栄養管理のやりがいは「患者さんと長期間関われる」ことにあります。

慢性期は急性期と比較すると「時間の流れがゆっくりで、長期間患者さんの治療・療養に関われる」病院です。そのため、ミールラウンド中に患者さんの小さなサインや残存能力に気づけるチャンスがたくさんあります。

栄養は薬のように即効性のあるものではなく、長期間関われるからこそできること、栄養管理の結果を実感できることも多いものです。

そして、低栄養で防ぐ褥瘡予防、誤嚥予防を通した肺炎予防、水分管理と尿路感染症予防と、管理栄養士が関わることで予防できるトラブルもたくさんあります。

医師や看護師と連携することで、トラブルを防ぎながら患者さんの穏やかな療養の支援を担うこともあります。

4.慢性期病院で求められるスキル、向いている人は?

患者さんだけでなく家族のケアも考えられる人

慢性期病院では、患者さんだけでなく、家族も含めてのケアを行います。患者さんご本人だけでなく、家族が今後どのような生活を考えているのかも療養の方針に大きく関わるためです。

完治が難しくターミナルケアを行う場合は家族の心のケアを、在宅復帰をするのであれば、患者さんと家族の両方にとってベストな方法を探っていくことを担うのも、慢性期病院の役割です。

そのため、患者さんだけでなく家族のケアも考えられる人は慢性期病院に向いています。

私も慢性期病院で栄養指導を行ったことがありますが、患者さん本人に栄養指導をしたことはありません。栄養指導は患者さん同席の上で「家族」を対象に行いましたよ。

ルーティン業務が得意な人

慢性期病院の業務は、ルーティン化されていることが多いです。

具体的には、入院や退院時、定期的に行う栄養評価の書類作成、厨房への指示出し、ミールラウンドなど…。

これらは、深く介入するケースがあれば個別に細かく誰かと相談したり、考えたりしますが、特にトラブルがなく状況が安定していれば、ルーティン化できる部分もたくさんあります。

特に、ベッド数が多く一人当たりが担当する患者さんの数が多くなると、業務のルーティン化は欠かせません。

最先端の医療や治療に携わりたい人には向いていないかも…?

最先端の医療に携わりたい!治療に関わりたい!という管理栄養士には、慢性期病院は向いていません。

これまで説明してきた通り、慢性期病院の患者さんは、状態がある程度安定しているけれど医療的なケアが必要である方が対象であるためです。

一方、「いつか急性期病院で働きたいけど、今は求人がない…」という人には慢性期病院はおすすめできる面もあります。
・履歴書に病院経験●年と書ける
・認定など専門的な資格目指すときに実務経験にカウントできる

など、病院でしか積めない経歴を身につけることができます。私の元同僚にも、慢性期での経験を元に急性期へ転職した管理栄養士がいますよ。

5.まとめ

以上、慢性期病院の管理栄養士についてまとめました。進路選択時はもちろん、転職・就職時の志望動機の参考にしてくださいね。

慢性期病院の管理栄養士は高齢者の栄養管理をすることがほとんどなので、慢性期病院への就職が決まったら、高齢期の栄養管理についてよく勉強をしておくと良いですよ。

本記事の作成元であるエイチエが提供する転職サポートサービス『栄養士人材バンク』でも慢性期病院の求人を取り扱っています。ご転職をお考えの際はご相談くださいね。

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えぬこ

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