キリンHDと東京大学が世界初の確認
キリンホールディングス株式会社(以下、キリンHD)は11日、東京大学大学院農学生命科学研究科との共同研究において、ヒトiPS細胞由来小腸オルガノイドを用いた細胞老化モデルでの研究を進め、老化した小腸上皮細胞で栄養素吸収が低下することを世界で初めて確認したと発表した。
そのメカニズムとして、細胞の性質が変化する上皮間葉転換(EMT)と呼ばれる現象が関わっていることも発見している。この研究成果は12月3日~5日に横浜で開催された「第48回日本分子生物学会年会」で発表された。
超高齢社会を背景に、老化関連研究の重要性は高まっており、その中でも主要な健康課題のひとつである「腸の老化」は、高齢者において栄養素吸収の低下を引き起こし、栄養失調やフレイルをはじめとする全身の健康課題につながると考えられているものの、ヒトでの評価が難しいことから基礎研究や解明が進んでいない。そこに風穴を開けた画期的研究として、今回の成果は注目を集めている。
そのメカニズムとして、細胞の性質が変化する上皮間葉転換(EMT)と呼ばれる現象が関わっていることも発見している。この研究成果は12月3日~5日に横浜で開催された「第48回日本分子生物学会年会」で発表された。
超高齢社会を背景に、老化関連研究の重要性は高まっており、その中でも主要な健康課題のひとつである「腸の老化」は、高齢者において栄養素吸収の低下を引き起こし、栄養失調やフレイルをはじめとする全身の健康課題につながると考えられているものの、ヒトでの評価が難しいことから基礎研究や解明が進んでいない。そこに風穴を開けた画期的研究として、今回の成果は注目を集めている。
腸の機能低下メカニズムを解明、新たな健康維持法開拓へ
研究グループでは、老化した細胞における生体現象の解明を目的とした研究を進めてきており、すでにヒト小腸オルガノイドを用いた細胞老化モデルの構築に成功していた。
今回、単層培養したヒト小腸オルガノイドに、まず老化誘導剤として抗がん剤の一種であるシスプラチンを処理、細胞老化を誘導した。その上で、糖やアミノ酸などの栄養素吸収に関わる遺伝子発現量、EMTに関わる遺伝子発現量などを定量的PCR法で評価した。
また、放射線同位体により標識された糖を用い、糖吸収量への影響も評価している。
今回、単層培養したヒト小腸オルガノイドに、まず老化誘導剤として抗がん剤の一種であるシスプラチンを処理、細胞老化を誘導した。その上で、糖やアミノ酸などの栄養素吸収に関わる遺伝子発現量、EMTに関わる遺伝子発現量などを定量的PCR法で評価した。
また、放射線同位体により標識された糖を用い、糖吸収量への影響も評価している。
正常なヒト小腸オルガノイドと、細胞老化モデルヒト小腸オルガノイドにおいて、栄養素吸収に関わる遺伝子発現量比較を行ったところ、細胞老化の誘導により、糖の吸収に関わる遺伝子であるSLC5A1、アミノ酸吸収に関わる遺伝子のSLC16A10の発現量が減少していることが判明した。
さらに細胞老化モデルでは、細胞内への糖吸収量が減少していることも明らかになった。
さらに細胞老化モデルでは、細胞内への糖吸収量が減少していることも明らかになった。
続いて栄養素吸収低下のメカニズムを探索したところ、EMT(上皮間葉転換)の誘導に関与する遺伝子であるTGFB1、間葉系細胞のマーカー遺伝子であるACTA2やCDH2の発現量が増加していることが分かった。
研究グループでは、今回の結果から、細胞老化モデルヒト小腸オルガノイドにおいて、栄養素吸収が低下すること、EMTが誘導されることが明らかになり、EMTによって栄養素吸収などの小腸上皮細胞としての機能が失われる可能性が示唆されたとした。
今後は栄養素の吸収改善に向け、EMT抑制を標的とした、腸の老化を予防、健康を維持する機能性素材を開発するなど、成果応用が期待されるとしている。
(画像はプレスリリースより)
研究グループでは、今回の結果から、細胞老化モデルヒト小腸オルガノイドにおいて、栄養素吸収が低下すること、EMTが誘導されることが明らかになり、EMTによって栄養素吸収などの小腸上皮細胞としての機能が失われる可能性が示唆されたとした。
今後は栄養素の吸収改善に向け、EMT抑制を標的とした、腸の老化を予防、健康を維持する機能性素材を開発するなど、成果応用が期待されるとしている。
(画像はプレスリリースより)
