長期間の高脂肪食摂取による記憶能低下メカニズムを解明
国立大学法人千葉大学は10日、同大学大学院医学薬学府博士後期課程3年の岳桐氏、大学院薬学研究院の伊藤素行教授、殿城亜矢子准教授の研究グループが、高脂肪食の摂取などの食習慣が脳機能に与える影響を仕組みから解明したことを発表した。
研究成果は国際学術雑誌「PLOS Genetics」において、8月18日付でオンライン掲載されている。
昨今の食生活の変化により、高脂肪食(HFD)の摂取頻度が増加しており、肥満や糖尿病等の生活習慣病はもちろん、認知機能の低下との関連にも注目が集まるようになってきている。とくにアルツハイマー病などの神経変性疾患では、食事由来の代謝ストレスが発症や進行に関与することがすでに先行研究で明らかとなった。
しかし、高脂肪食が記憶形成に与える影響の分子メカニズムなどは不明のままで、よく分かっていない点が多かった。
一方、オートファジーは細胞内の不要なたんぱく質や損傷した細胞小器官を分解・再利用する仕組みで、その最終段階においては、分解酵素を含む細胞小器官、リソソームによる分解が不可欠とされる。このオートファジーやリソソーム機能の低下が、記憶障害や神経変性疾患と深い関連があることが分かってきた。
そこで研究チームでは、遺伝学的操作と記憶評価が容易なショウジョウバエをモデルとして用い、高脂肪食による記憶障害の神経メカニズムを、オートファジーとリソソーム機能の観点から解明することを目指した。
研究成果は国際学術雑誌「PLOS Genetics」において、8月18日付でオンライン掲載されている。
昨今の食生活の変化により、高脂肪食(HFD)の摂取頻度が増加しており、肥満や糖尿病等の生活習慣病はもちろん、認知機能の低下との関連にも注目が集まるようになってきている。とくにアルツハイマー病などの神経変性疾患では、食事由来の代謝ストレスが発症や進行に関与することがすでに先行研究で明らかとなった。
しかし、高脂肪食が記憶形成に与える影響の分子メカニズムなどは不明のままで、よく分かっていない点が多かった。
一方、オートファジーは細胞内の不要なたんぱく質や損傷した細胞小器官を分解・再利用する仕組みで、その最終段階においては、分解酵素を含む細胞小器官、リソソームによる分解が不可欠とされる。このオートファジーやリソソーム機能の低下が、記憶障害や神経変性疾患と深い関連があることが分かってきた。
そこで研究チームでは、遺伝学的操作と記憶評価が容易なショウジョウバエをモデルとして用い、高脂肪食による記憶障害の神経メカニズムを、オートファジーとリソソーム機能の観点から解明することを目指した。
食習慣の新知見、さらに疾患予防・治療への道も
研究チームは、まずショウジョウバエに7日間高脂肪食を与え、記憶機能への影響を調べた。すると高脂肪食摂取のハエでは、短期記憶では変化がみられなかったものの、中期記憶及び長期記憶では低下が確認できた。
次に高脂肪食が神経細胞に及ぼす影響を調べたところ、オートファジー活性が低下し、オートファジーで分解されるたんぱく質の「Ref(2)p」という、哺乳類では神経変性疾患に関わるp62と呼ばれるたんぱく質に相当するものが、細胞内に蓄積していっていることが判明した。
さらに神経細胞解析により、高脂肪食を摂取したハエの脳神経細胞を調べると、オートファジーの過程で分解すべきたんぱく質などを包み込む膜構造体「オートファゴソーム」とリソソームの数が増加している一方、オートファゴソームがリソソームと融合した後の構造体である「オートリソソーム」の数には変化がみられなかった。
ここから、高脂肪食がオートファゴソームとリソソームの融合を抑制している可能性が示唆された。また高脂肪食による記憶障害が神経細胞のオートファジー機能低下によって引き起こされているかどうかを検証するため、神経細胞内でオートファジーを活性化させる遺伝学的操作を施したところ、高脂肪食による中期記憶の低下が回復することも確認できたという。
今回の研究により、高脂肪食が神経細胞におけるオートファジー機能を低下させ、とくにオートファゴソームとリソソームの融合過程を抑制することで、中期記憶を低下させていることが明らかになった。
さらにオートファジーを活性化させれば、記憶低下の回復が可能であることも示された。研究チームでは、こうした今回の成果は、食習慣が脳の働きに与える影響を分子レベルで理解していく上で重要な知見をもたらすものであり、今後の研究ではさらにオートファジーの制御を標的とした新たな介入方法の開発が期待されるとしている。
将来的には記憶障害や神経変性疾患に対する新たな予防・治療の手段となる可能性もあり、高い注目が集まっている。
(画像はプレスリリースより)
次に高脂肪食が神経細胞に及ぼす影響を調べたところ、オートファジー活性が低下し、オートファジーで分解されるたんぱく質の「Ref(2)p」という、哺乳類では神経変性疾患に関わるp62と呼ばれるたんぱく質に相当するものが、細胞内に蓄積していっていることが判明した。
さらに神経細胞解析により、高脂肪食を摂取したハエの脳神経細胞を調べると、オートファジーの過程で分解すべきたんぱく質などを包み込む膜構造体「オートファゴソーム」とリソソームの数が増加している一方、オートファゴソームがリソソームと融合した後の構造体である「オートリソソーム」の数には変化がみられなかった。
ここから、高脂肪食がオートファゴソームとリソソームの融合を抑制している可能性が示唆された。また高脂肪食による記憶障害が神経細胞のオートファジー機能低下によって引き起こされているかどうかを検証するため、神経細胞内でオートファジーを活性化させる遺伝学的操作を施したところ、高脂肪食による中期記憶の低下が回復することも確認できたという。
今回の研究により、高脂肪食が神経細胞におけるオートファジー機能を低下させ、とくにオートファゴソームとリソソームの融合過程を抑制することで、中期記憶を低下させていることが明らかになった。
さらにオートファジーを活性化させれば、記憶低下の回復が可能であることも示された。研究チームでは、こうした今回の成果は、食習慣が脳の働きに与える影響を分子レベルで理解していく上で重要な知見をもたらすものであり、今後の研究ではさらにオートファジーの制御を標的とした新たな介入方法の開発が期待されるとしている。
将来的には記憶障害や神経変性疾患に対する新たな予防・治療の手段となる可能性もあり、高い注目が集まっている。
(画像はプレスリリースより)