糖尿病の発症予測や新たな治療介入の可能性を拓く画期的成果
理化学研究所、東京大学、医薬基盤・健康・栄養研究所、日本医療研究開発機構、神奈川県立産業技術総合研究所は8月30日、共同研究チームの成果として、インスリン抵抗性に関連する特徴的な腸内細菌と糞便代謝物の特定に成功したことを発表した。
2型糖尿病の発症予測や未病、糖尿病予備軍段階での治療介入などに貢献するとみられ、注目を集めている。なお、この研究成果をまとめた論文は、科学雑誌「Nature」オンライン版に、同日付(日本時間では8月31日)で掲載された。
2型糖尿病の発症予測や未病、糖尿病予備軍段階での治療介入などに貢献するとみられ、注目を集めている。なお、この研究成果をまとめた論文は、科学雑誌「Nature」オンライン版に、同日付(日本時間では8月31日)で掲載された。

共同研究グループでは、日本人306人の腸内細菌と糞便代謝物を網羅的に調べる統合オミクス解析を実施。対象者を肥満の人、糖尿病予備軍の指標(空腹時血糖が110mg/dL以上またはHbA1cが6.0%以上)を満たす人、それ以外の人に分類し、検証を進めた。
すると、糞便メタボローム解析の結果として、過去のヒト腸内細菌研究で報告されていた数を大きく上回る2,849種類もの代謝物同定に成功し、糞便代謝物と各種臨床マーカーとの関連性をみていったことで、インスリン抵抗性マーカーのHOMA-IR、メタボリック症候群やBMIなど代謝異常のマーカーが、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、キシロースなどの単糖類と関連していることを発見した。
また、英国で実施されたTwinsUKコホートを再解析したところ、同様にHOMA-IRやBMIが単糖類と関連していることも確認できたという。
すると、糞便メタボローム解析の結果として、過去のヒト腸内細菌研究で報告されていた数を大きく上回る2,849種類もの代謝物同定に成功し、糞便代謝物と各種臨床マーカーとの関連性をみていったことで、インスリン抵抗性マーカーのHOMA-IR、メタボリック症候群やBMIなど代謝異常のマーカーが、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、キシロースなどの単糖類と関連していることを発見した。
また、英国で実施されたTwinsUKコホートを再解析したところ、同様にHOMA-IRやBMIが単糖類と関連していることも確認できたという。

続いて研究グループは、これら単糖類の増減に、腸内細菌が関係するかどうかを調べた。以前からメタゲノム解析により、糖尿病予備軍の人や肥満の人の場合、腸内細菌で糖質代謝が活発になっていることは示されていた。そこで、どの腸内細菌種が単糖類に関連するか、どういった腸内細菌の遺伝子機能が単糖類に関連するかの2点に着目して研究を進めた。

その結果、306人の腸内細菌は大きく4つのパターンに分けられ、そのうちBlautia属、Dorea属の細菌を多く含む腸内細菌叢パターンのグループでは、インスリン抵抗性や単糖類と正に関連する一方、Bacteroides属、Alistipes属を多く含む腸内細菌叢パターンのグループでは、負に関連することが判明した。
加えて、Bacteroides属、Alistipes属を多く含む腸内細菌叢パターンのグループの場合、でんぷんやショ糖など複雑な糖質を吸収可能な単糖類に変換する遺伝子機能が少なく、単糖類そのものを利用する遺伝子機能が多く検出された。
これらから、インスリン抵抗性に関連する腸管内の単糖類の増減には、特定の腸内細菌種と糖質分解・利用に関係する腸内細菌の遺伝子機能が関与していると考えられた。
加えて、Bacteroides属、Alistipes属を多く含む腸内細菌叢パターンのグループの場合、でんぷんやショ糖など複雑な糖質を吸収可能な単糖類に変換する遺伝子機能が少なく、単糖類そのものを利用する遺伝子機能が多く検出された。
これらから、インスリン抵抗性に関連する腸管内の単糖類の増減には、特定の腸内細菌種と糖質分解・利用に関係する腸内細菌の遺伝子機能が関与していると考えられた。
未解明だった領野に光、新たなプロバイオティクスや治療薬開発へ
単糖類は、それ自体が過剰な栄養素になる一方、体内の免疫細胞から炎症性サイトカインの産生を促し、インスリン抵抗性や肥満を悪化させるとみられている。
この知見をもとに、末梢血単核細胞(免疫細胞)のCAGE解析と血中サイトカインの解析を組み合わせることで、インスリン抵抗性に関連する炎症関連の遺伝子プロモーター活性と、炎症性・抗炎症性のサイトカインも同定された。
また、ネットワーク解析により、糞便中の単糖類は、腸内細菌と免疫細胞の炎症関連遺伝子、炎症性サイトカインを結ぶネットワークハブとなっていることが可視化した状態で確認できている。
この知見をもとに、末梢血単核細胞(免疫細胞)のCAGE解析と血中サイトカインの解析を組み合わせることで、インスリン抵抗性に関連する炎症関連の遺伝子プロモーター活性と、炎症性・抗炎症性のサイトカインも同定された。
また、ネットワーク解析により、糞便中の単糖類は、腸内細菌と免疫細胞の炎症関連遺伝子、炎症性サイトカインを結ぶネットワークハブとなっていることが可視化した状態で確認できている。

最後に、統合オミクス解析で同定した腸内細菌種のうち、インスリン感受性に関連する細菌種が、実際に病態を改善する効果をもつかどうか検証するため、単糖類と負の相関をするAlistipes属の代表株、Alistipes indistinctusを肥満モデルマウスに投与した。
すると、インスリン抵抗性の指標であるインスリンの血糖低下作用が改善、加えて腸管と血液中の単糖類も減少したという。
すると、インスリン抵抗性の指標であるインスリンの血糖低下作用が改善、加えて腸管と血液中の単糖類も減少したという。

研究グループでは、今回の研究により、これまで明らかになっていなかった腸内細菌とインスリン抵抗性をつなぐ機序が解明できたほか、腸内細菌や腸管内単糖類が治療標的になり得ることを示すことができたとし、画期的な成果であるとしている。
今後は、この成果を活かし、新たなプロバイオティクスやインスリン抵抗性の治療薬創出が進むことが期待されている。
(画像はプレスリリースより)
今後は、この成果を活かし、新たなプロバイオティクスやインスリン抵抗性の治療薬創出が進むことが期待されている。
(画像はプレスリリースより)