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妊娠初期の低栄養、統合失調症リスクを高める可能性
2026.05.19
国立大学法人東北大学(以下、東北大学)は13日、同大大学院医学系研究科器官解剖学分野の王泓博大学院生、大和田祐二教授、前川素子准教授らが、熊本大学、東京大学、東京科学大学、理化学研究所との共同研究により、妊娠初期のマウスの栄養欠乏モデルにおいて、子にエピゲノム変化を伴う統合失調症関連の表現型が誘導されることを明らかにしたと発表した。
一過性飢餓から脳に変化、モデル動物で分子基盤を解明
国立大学法人東北大学(以下、東北大学)は13日、同大大学院医学系研究科器官解剖学分野の王泓博大学院生、大和田祐二教授、前川素子准教授らが、熊本大学、東京大学、東京科学大学、理化学研究所との共同研究により、妊娠初期のマウスの栄養欠乏モデルにおいて、子にエピゲノム変化を伴う統合失調症関連の表現型が誘導されることを明らかにしたと発表した。
この研究の成果は精神医学分野の国際学術誌「Molecular Psychiatry」に5月13日付で掲載されている。
この研究の成果は精神医学分野の国際学術誌「Molecular Psychiatry」に5月13日付で掲載されている。
妊娠期の低栄養は統合失調症リスクを高める可能性があることがこれまでの疫学研究から示唆されてきた。しかし、その根本的なメカニズムは不明のままとなっていた。そこで研究グループでは、動物モデルを用い、分子メカニズムの解明を目指したという。
統合失調症は生涯罹患率が約1%とされる精神疾患で、幻覚や妄想などを主症状とする。その発症には遺伝要因と環境要因の相互作用がポイントになっているとされるが、詳しいメカニズムは分かっていない。
統合失調症は生涯罹患率が約1%とされる精神疾患で、幻覚や妄想などを主症状とする。その発症には遺伝要因と環境要因の相互作用がポイントになっているとされるが、詳しいメカニズムは分かっていない。
予防などに新たな光
研究グループは、まず妊娠マウスに対し、妊娠初期に限定した食餌制限を行い、妊娠初期母体低栄養モデルを作製した。このモデルマウスから産まれた雄の子では、行動学的解析において、プレパルス抑制の低下とされる感覚運動ゲーティング障害のほか、オープンフィールド試験及び高架式十字迷路試験において、不安様行動が増加することが確認された。
感覚運動ゲーティングとは、感覚情報を適切に取捨選択し、過剰な刺激が運動反応を引き起こさぬよう制御する脳の機能で、統合失調症患者の場合、この機能が障害されることが知られている。
感覚運動ゲーティングとは、感覚情報を適切に取捨選択し、過剰な刺激が運動反応を引き起こさぬよう制御する脳の機能で、統合失調症患者の場合、この機能が障害されることが知られている。
また、脳の組織学的解析では、内側前頭前野において錐体細胞樹状突起スパイン密度の有意な低下が認められた。このような変化は統合失調症患者の死後脳でも報告されており、それに一致するものであったという。
一方、これらの変化は雄のみに認められ、雌では明確な変化が観察されなかった。
この分子メカニズム解明のため、前頭前野を用いた網羅的遺伝子発現解析を実施したところ、Drd2、Cd4、Itgb4、Kcnab1などの統合失調症関連遺伝子を含む差次的発現遺伝子が同定できた。
また遺伝子セット富化解析(GSEA)では、シナプス機能やたんぱく質恒常性などに関連する経路の変化が明らかになった。加重遺伝子共発現ネットワーク解析では、Drd2、Ppp1r1b、Adora2aなどを核とする遺伝子モジュールが雄の子で特異的に認められている。
そして空間トランスクリプトーム解析では、シナプス可塑性関連遺伝子の上昇と、神経発達関連遺伝子の低下が確認された。また、たんぱく質恒常性及びオートファジー経路の富化も示されたという。細胞種別解析では、アストロサイト及び投射神経細胞において多数の差次的発現遺伝子が同定され、即時早期遺伝子の上昇も認められた。
一方、これらの変化は雄のみに認められ、雌では明確な変化が観察されなかった。
この分子メカニズム解明のため、前頭前野を用いた網羅的遺伝子発現解析を実施したところ、Drd2、Cd4、Itgb4、Kcnab1などの統合失調症関連遺伝子を含む差次的発現遺伝子が同定できた。
また遺伝子セット富化解析(GSEA)では、シナプス機能やたんぱく質恒常性などに関連する経路の変化が明らかになった。加重遺伝子共発現ネットワーク解析では、Drd2、Ppp1r1b、Adora2aなどを核とする遺伝子モジュールが雄の子で特異的に認められている。
そして空間トランスクリプトーム解析では、シナプス可塑性関連遺伝子の上昇と、神経発達関連遺伝子の低下が確認された。また、たんぱく質恒常性及びオートファジー経路の富化も示されたという。細胞種別解析では、アストロサイト及び投射神経細胞において多数の差次的発現遺伝子が同定され、即時早期遺伝子の上昇も認められた。
さらに、雄の子マウスの前頭前野から、神経核と非神経核を単離し、DNAメチル化解析を行ったところ、主成分分析によって明確な群間差が確認できた。高負荷プローブの解析では、神経核においてERKとWntシグナル経路の変化が、非神経核では樹状突起の発達や非対称シナプスに関連する経路の変化が、それぞれ確認されている。
これらの結果は、妊娠初期における低栄養状態がDNAメチル化変化をもたらし、子への持続的な神経機能障害を引き起こす可能性を示唆している。
研究グループでは、今回の研究で確立した妊娠初期母体低栄養モデルが統合失調症の分子メカニズムを探究するための有用な動物モデルになるとし、今後DNAメチル化変化と転写変化の因果関係の解明、影響を受ける細胞種と神経回路の特定、性差が生じる分子メカニズムの解明が期待されるとした。
また、今回の成果により、将来的にはヒトにおける統合失調症の予防と治療戦略の開発につながる可能性があるとしたほか、妊娠期の栄養介入や周産期ケアにより精神疾患リスクの低減に貢献することが期待されるとしている。
(画像はプレスリリースより)
これらの結果は、妊娠初期における低栄養状態がDNAメチル化変化をもたらし、子への持続的な神経機能障害を引き起こす可能性を示唆している。
研究グループでは、今回の研究で確立した妊娠初期母体低栄養モデルが統合失調症の分子メカニズムを探究するための有用な動物モデルになるとし、今後DNAメチル化変化と転写変化の因果関係の解明、影響を受ける細胞種と神経回路の特定、性差が生じる分子メカニズムの解明が期待されるとした。
また、今回の成果により、将来的にはヒトにおける統合失調症の予防と治療戦略の開発につながる可能性があるとしたほか、妊娠期の栄養介入や周産期ケアにより精神疾患リスクの低減に貢献することが期待されるとしている。
(画像はプレスリリースより)
参考文献・サイト
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