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2023.06.12

管理栄養士・栄養士はチェックしよう!国民の健康統計を示す国民健康・栄養調査とは?

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こんにちは!管理栄養士の渡部早紗です。

ネットでさまざまな情報があふれかえる中、管理栄養士・栄養士として、根拠のある情報を発信していきたいもの。

根拠のある情報のひとつであり、詳細なデータに基づいて国民の健康や栄養の状態が分かる貴重なもの…それが国民健康・栄養調査です!

管理栄養士・栄養士の養成課程や国試の勉強で国民健康・栄養調査の名前やざっくりした内容は分かっていても、あまり全貌が見えていない人もいるのではないでしょうか…?

そこで今回は国民健康・栄養調査について詳しく解説していきます。気になる業務への活かし方もお伝えするので、ぜひ最後まで読んでくださいね!

まずは、国民健康・栄養調査について解説していきます。

1.国民健康・栄養調査とは?調査の目的って?

概要

国民健康・栄養調査は、約6000世帯・約18,000人を対象に、身体の状況や栄養の摂取状況、運動習慣や睡眠などの生活習慣について調査するものです。

実は国民健康・栄養調査の歴史は古く、戦後に海外からの食糧の支援を受けるために栄養素の不足や発育不全などについて調査を実施したことがはじまりです。

基本的に調査は毎年11月に実施されており、調査期間は1日です。ちなみに令和2年・令和3年は新型コロナウイルス感染症の影響により中止されているため、2022年4月現在の最新結果は令和元年のものになります。

調査の項目は大きく3つです。
①身体状況調査
 …身長や体重、血圧や血液検査

②栄養摂取状況調査
 …食事の内容や食物の摂取状況

③生活習慣調査
 …食生活、身体活動、休養(睡眠)、飲酒、喫煙など
国民健康・栄養調査を行うのは、調査地区を管轄する保健所です。保健所の医師、管理栄養士、保健師、臨床検査技師などが調査員となります。

そして調査後の集計業務は、国立健康・栄養研究所が行います。

調査目的

国民健康・栄養調査の第一目的は、国民の身体の状況や栄養摂取量、生活習慣の現状を明らかにして、民の健康増進を進めるための基礎的な資料にすることです。

調査で得た情報をもとに、国民の健康・維持増進を計画・実行することが最終的な調査の目的となります。  

調査によって得られた情報を元に、国や地方公共団体において、生活習慣予防などの健康づくりの取り組みを進める上での資料として活用されるほか、研究機関でも利用され、結果として国民の生活に役立てられます。

2.国民健康・栄養調査の調査方法と集計

調査方法

国民健康・栄養調査の調査方法は、調査内容によって異なります。

身長や血圧、血液検査といった身体状況調査は、指定された会場に集まり、医師等が計測や問診を行います。

栄養摂取状況調査は、摂取した食品を秤(はかり)で1つずつ量って記録します。世帯ごとに、家族が食べたものや飲んだものは全て記録してもらい、記録を基に食事の詳細を調査員が聞き取りデータを入力します。

運動や飲酒などの生活習慣調査は、自分で記入するアンケート方式です。  

調査後の集計

調査後の集計は国民健康・栄養研究所で行われた後、厚生労働省によって解析と報告が行われます。

3.調査員や(独)国立健康・栄養研究所で働くには?

ここまで読んで「国民健康・栄養調査の仕事をやってみたい!」と思った方もいるのではないでしょうか。

国民健康・栄養調査の調査員は、先ほどお伝えしたように、管理栄養士をはじめ保健所の国民健康・栄養調査班に選ばれるとお仕事ができます。

▼行政栄養士の詳しいお仕事内容はこちら!

行政栄養士とは?仕事内容ややりがいなどを紹介!

また、集計を行う国立健康・栄養研究所で働くには 、研究所の一員になる必要があります。

国立健康・栄養研究所の募集は、公式のホームページから確認できます。希望条件として、統計解析ソフトウェアで自分でプログラムを作ってデータの集計・解析ができる博士レベルの能力がある人が求められており、難関です。  

チャレンジしてみたい方は、研究所のホームページの公募をこまめにチェックしてみてくださいね。

▼国立健康・栄養研究所の公式ホームページはこちら!  

国立健康・栄養研究所

ちなみに、国民健康・栄養研究所は令和4年7月以降に東京から大阪に移転されます!

4.業務への活かし方

では、国民健康・栄養調査の結果を、私たちの仕事にどのように活かすのか説明します。

集団への指導やアプローチ

調査は幅広い年代の集団を対象にしているため、特に集団への指導やアプローチにおける業務に活かすことができます。厚生労働省による調査のため、根拠をもって発信できる点が大きな強みですね。
*例えば…
【課題】
「日本人は野菜の摂取量が少ない」ことについて、根拠を持って伝えたい

【解決】
「令和元年の国民健康・栄養調査によると、野菜摂取量の平均値は280.5gであり1日の目標量350gに届いていない」と伝えることで、具体的な根拠を提示できる
さらに、アプローチ方法として「野菜をたっぷり食べてね」よりも「約70g不足しているからこれくらいプラスで食べてねと言った方が、聞き手側も行動に移しやすいですよね。

そのため、集団に対して指導する際や、部署内外で新しいプロジェクトを立ち上げるときの上司への説明資料としても活かせるでしょう。

性別や年代・地域ごとの食習慣や栄養状況を知りたいとき

国民健康・栄養調査の結果は、性別や年代ごとの食習慣や栄養状況を知りたいときにも大活躍です!
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▼厚生労働省
令和元年 国民健康・栄養調査報告

※参照
第1部 栄養素等摂取状況調査の結果 以降
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例として、令和元年の調査において食塩の摂取量を年齢階級別にみると、男女ともに60歳代で最も高いことが分かっています。

ほかにも、調査項目によっては地域ごとの傾向も分かるのです。たとえば、令和元年の調査結果では非常食を用意している世帯の割合が地域ブロックごとに公表されています。

そのため、ほかにも、性や年齢別の食習慣の傾向が見られるので栄養、栄養講座やパンフレットなどの媒体を作るときのテーマ設定にも役立ちます。

国民健康・栄養調査の報告書と統計表は厚生労働省のホームページに掲載されているので、ぜひチェックしてみましょう!
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▼厚生労働省
国民健康・栄養調査
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5.まとめ

今回は国民健康・栄養調査の解説と、業務への活かし方について解説しました。

食習慣のみならず、生活習慣や健康への意識まで細かく調査されており、さらに分かりやすく図示化されている調査がネットで簡単に見られるなんて、使わない手はないですよね!

行政の調査機関による国民健康・栄養調査。ぜひ厚生労働省のサイトでチェックして、日々の業務に役立ててくださいね!

参考文献・サイト

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渡部 早紗

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