学び
疾患別栄養ケア・マネジメントの特徴とポイント<摂食・嚥下機能障害1>
医療や介護現場では高齢社会と救命・治療の高度化・向上に伴い、摂食嚥下障害を考慮した栄養食事療法の必要性が増しています。この摂食嚥下障害での問題としては、口から食べる制限による水分不足や栄養障害、QOL(生活の質・食べる楽しみ)の低下と、誤嚥性肺炎によるリスクです。
この障害の対象者の視点に立ち、誤嚥による肺炎や窒息を予防して、楽しく美味しく食べることを目的にした、摂食嚥下障害者の栄養ケアには多職種によるチーム医療が必要となります。
目次
はじめに:摂食・嚥下機能障害における食事管理
摂食・嚥下機能障害を呈している場合の食事管理は、管理栄養士として学会分類の食事形態を実践し、安全・美味しい・再現性のある食事を構築していく必要があります。
そのため摂食嚥下リハビリテーション領域の急性期医療・回復期医療・在宅医療と介護において、多職種が連携した、嚥下機能評価の方法を学んで対応していきましょう。
そのため摂食嚥下リハビリテーション領域の急性期医療・回復期医療・在宅医療と介護において、多職種が連携した、嚥下機能評価の方法を学んで対応していきましょう。
摂食嚥下障害の病態
摂食・嚥下の機能障害では、安全に食べて、誤嚥性肺炎を防ぐために、口腔、四肢、体幹、呼吸の働きに加えて、のど(咽頭・喉頭)の働きが重要です。
咽頭・喉頭における嚥下反射の低下により摂食嚥下が困難となり、反射の低下は誤嚥性肺炎の原因となります。
このように、のど(咽頭・喉頭)を専門とする耳鼻咽喉科の専門医や、リハビリテーション(言語聴覚士)での食事支援や機能訓練と共に、管理栄養士として学会分類に沿った食事形態を実践し、
安全・美味しい・再現性のある食事を構築していく技能が求められます。
咽頭・喉頭における嚥下反射の低下により摂食嚥下が困難となり、反射の低下は誤嚥性肺炎の原因となります。
このように、のど(咽頭・喉頭)を専門とする耳鼻咽喉科の専門医や、リハビリテーション(言語聴覚士)での食事支援や機能訓練と共に、管理栄養士として学会分類に沿った食事形態を実践し、
安全・美味しい・再現性のある食事を構築していく技能が求められます。
疾患の概要:摂食嚥下のプロセス(6段階)
以下に示す6段階のプロセスで、液体(水分)や食物が、口から食道を通過して胃まで運ぶ流れが滞る機能障害が、摂食嚥下障害とされています。
その6段階のプロセスは以下の通りです。
その6段階のプロセスは以下の通りです。
1. 食物の認知:視覚・嗅覚・触覚などで食物を認知し、口へ運ぶ。
2. 補食:液体や食物を口へ取り込みをして咀嚼の準備となる。
3. 咀嚼:舌の運動と唾液によって咀嚼して、食塊形成する。
4. 嚥下:形成された食塊を咽頭へ送り込む機能。
5. 咽頭:食塊を嚥下反射により食道へ送り込む。
6. 食道:食道を通過して胃へ送り込む、最終段階。
2. 補食:液体や食物を口へ取り込みをして咀嚼の準備となる。
3. 咀嚼:舌の運動と唾液によって咀嚼して、食塊形成する。
4. 嚥下:形成された食塊を咽頭へ送り込む機能。
5. 咽頭:食塊を嚥下反射により食道へ送り込む。
6. 食道:食道を通過して胃へ送り込む、最終段階。
これら6段階のプロセスでは、咽頭での反射が重要です。
食道・気管支(呼吸器)の気管が分かれており、危険なのは、気管支へ液体や食塊、唾液などが流れ込んで誤嚥を起こすことです。
食道・気管支(呼吸器)の気管が分かれており、危険なのは、気管支へ液体や食塊、唾液などが流れ込んで誤嚥を起こすことです。
飲み込みやすい食事形態 4ヶ条
1) 食材の密度(大きさ・硬さ)が均一である。
食塊(かたまり)の大きさをそろえる・同じ軟らかにする
…ミキシング・すり鉢・裏ごし
2) 適度な粘度と凝集性(まとまり)があること。
咀嚼したときバラバラにならない…粘性・トロミを付ける
トロミ食材(山芋・マヨネーズ)使用
3) 飲み込む時に変形し,すべりが良いこと。
軟らかく調理…ゼラチン・ゼリー・プリン・ババロアなど
4) 口腔粘膜や咽喉への付着性が低いこと。
のどに付着しない…トマトの皮・ワカメ・焼きのり・もちなどは禁止。適度な水分・脂肪分を付ける
※粘度やトロミが付きすぎると付着性が増すので注意。
東京医科歯科大学リハビリテーション科:摂食・嚥下障害の診断2007 より
食塊(かたまり)の大きさをそろえる・同じ軟らかにする
…ミキシング・すり鉢・裏ごし
2) 適度な粘度と凝集性(まとまり)があること。
咀嚼したときバラバラにならない…粘性・トロミを付ける
トロミ食材(山芋・マヨネーズ)使用
3) 飲み込む時に変形し,すべりが良いこと。
軟らかく調理…ゼラチン・ゼリー・プリン・ババロアなど
4) 口腔粘膜や咽喉への付着性が低いこと。
のどに付着しない…トマトの皮・ワカメ・焼きのり・もちなどは禁止。適度な水分・脂肪分を付ける
※粘度やトロミが付きすぎると付着性が増すので注意。
東京医科歯科大学リハビリテーション科:摂食・嚥下障害の診断2007 より
摂食・嚥下困難訓練に適さない食品(食物形態から)
水分:水・お茶・果汁
酸味の強いもの:酢の物・柑橘類
パサパサするもの:ふかし芋・ゆで卵
弾力性のあるもの:こんにゃく・かまぼこ
咽喉に貼りつくもの:もち・のり・ワカメ
粒が残るもの:ピーナッツ・大豆・ごま
繊維の強いもの:ごぼう・ふき・えのき茸
酸味の強いもの:酢の物・柑橘類
パサパサするもの:ふかし芋・ゆで卵
弾力性のあるもの:こんにゃく・かまぼこ
咽喉に貼りつくもの:もち・のり・ワカメ
粒が残るもの:ピーナッツ・大豆・ごま
繊維の強いもの:ごぼう・ふき・えのき茸
摂食・嚥下困難訓練に適した食品(条件として)
・密度が均一である
・適当な粘度があり、バラバラになりにくい
・口腔や咽頭を通過するときに、変化しやすい
・べたつかない、粘膜に付着しにくい
・しっかりとした濃い味
以上の条件に合うもの = ゼラチンゼリー
・適当な粘度があり、バラバラになりにくい
・口腔や咽頭を通過するときに、変化しやすい
・べたつかない、粘膜に付着しにくい
・しっかりとした濃い味
以上の条件に合うもの = ゼラチンゼリー
ゼラチンゼリーで“むせ” ないため
短所を見極める
①口やのどに長く留まると液体になり、誤嚥する。
②室温でも溶けてしまう
③姿勢・体位によっては、塊のまま気管へ落ちる。
“むせ”ない対策
①提供時に冷却をして、氷トレーに乗せる
②ゼリー塊でなく、スライスにしてスプーンで1/2程度を入れる。(スプーン形状を選ぶ)
③姿勢の調整はリクライニング位にする。
新臨床栄養学‐栄養ケア・マネジメント:Ⅶ栄養をサポートする栄養ケア 4.摂食嚥下障害 より引用してエイチエ運営部作成
短所を見極める
①口やのどに長く留まると液体になり、誤嚥する。
②室温でも溶けてしまう
③姿勢・体位によっては、塊のまま気管へ落ちる。
“むせ”ない対策
①提供時に冷却をして、氷トレーに乗せる
②ゼリー塊でなく、スライスにしてスプーンで1/2程度を入れる。(スプーン形状を選ぶ)
③姿勢の調整はリクライニング位にする。
新臨床栄養学‐栄養ケア・マネジメント:Ⅶ栄養をサポートする栄養ケア 4.摂食嚥下障害 より引用してエイチエ運営部作成
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」
学会嚥下調整食分類2021(以下 調整食分類2021)の食事の段階は、コード0j、コード0t、コード1j、コード2-1、コード2-2、コード3、コード4 で構成されています。
ここで注視すべき点としてコード番号は必ずしも、すべての症例で難易度と一致するものではありません。
調整食分類2021のコードの数字は、その症例の最も適切な食形態を検討していく必要があります。
調整食分類2021では「あるコードとして提供されている食事を十分に摂取できた場合に次の段階に上がる」という段階的な食上げが基本です。
しかし、脳卒中の急性期~回復期など多くの症例で当てはまりますが、症例によっては適していないことがあります。
調整食分類2021が適していない具体的なケースは、下記の通りです。
ここで注視すべき点としてコード番号は必ずしも、すべての症例で難易度と一致するものではありません。
調整食分類2021のコードの数字は、その症例の最も適切な食形態を検討していく必要があります。
調整食分類2021では「あるコードとして提供されている食事を十分に摂取できた場合に次の段階に上がる」という段階的な食上げが基本です。
しかし、脳卒中の急性期~回復期など多くの症例で当てはまりますが、症例によっては適していないことがあります。
調整食分類2021が適していない具体的なケースは、下記の通りです。
① 低いコード番号の食事が不適切で食意欲を起こさない場合や
② そのコードを想定して調理したものが、不適切な付着性や粘性によってかえって嚥下しにくい形態の場合
② そのコードを想定して調理したものが、不適切な付着性や粘性によってかえって嚥下しにくい形態の場合
しかし誤嚥のリスクや、しっかり摂取できない状況でも、食上げしたほうがQOLは高くなる可能性があると考えられます。
一方、段階的な食上げの場合でも、どの段階からスタートするかは、喫食者個々に評価するべきであるとされています。
一方、段階的な食上げの場合でも、どの段階からスタートするかは、喫食者個々に評価するべきであるとされています。
摂食・嚥下機能障害と食事管理 ポイント(まとめ)
・嚥下食に敵した「食事形態」の4条件。
・身体所見、VF検査などで「むせ・誤嚥」の関係を確かめる。
・最適な体位・姿勢を確認する。
・食事に意識を集中させる。(thin swallow)
・疲労しない食事時間内(30分以内)に食べ終わる。
・身体所見、VF検査などで「むせ・誤嚥」の関係を確かめる。
・最適な体位・姿勢を確認する。
・食事に意識を集中させる。(thin swallow)
・疲労しない食事時間内(30分以内)に食べ終わる。
嚥下調整食とFOIS(Functional Oral Intake Scale)
Q.
嚥下調整食とFOIS(Functional Oral Intake Scale)を対応させてはどうでしょうか?
A.
嚥下調整食をどのように食べさせるか(体幹角度や、介助の有無、使用するリハビリ手技など)により、どのくらい経口摂取ができるかは変化します。
現時点では、嚥下調整食と摂食嚥下障害の重症度を示すFOISやFILS(Food Intake Level Scale)と明確に対応づけことは難しいと考えています。
資料:嚥下調整食学会分類2021 Japanese Dysphagia Diet 2021 by the JSDR dysphagia diet committee (JDD2021)、本文中に掲載されているQ&A2022年1月14日追加Q&A(JDD2021)より
嚥下調整食とFOIS(Functional Oral Intake Scale)を対応させてはどうでしょうか?
A.
嚥下調整食をどのように食べさせるか(体幹角度や、介助の有無、使用するリハビリ手技など)により、どのくらい経口摂取ができるかは変化します。
現時点では、嚥下調整食と摂食嚥下障害の重症度を示すFOISやFILS(Food Intake Level Scale)と明確に対応づけことは難しいと考えています。
資料:嚥下調整食学会分類2021 Japanese Dysphagia Diet 2021 by the JSDR dysphagia diet committee (JDD2021)、本文中に掲載されているQ&A2022年1月14日追加Q&A(JDD2021)より
FOIS(Functional Oral Intake Scale)とは
言語聴覚士の業務で、嚥下機能を評価するためのスケールであり、経口摂取の状況を7段階で分類されており、このスケールは患者がどの程度の食事を安全に摂取できるかを示している。
言語聴覚士の業務で、嚥下機能を評価するためのスケールであり、経口摂取の状況を7段階で分類されており、このスケールは患者がどの程度の食事を安全に摂取できるかを示している。

白石先生
FILSもFOISと同意語と考えて良いと思います。
2026年度診療報酬改定にて特別食加算に嚥下調整食が追加
1) 嚥下調整食:医師の発行する食事箋により、特別食として適切な栄養量・内容とする。
2) 特別食の対象に行事食やハラール食(宗教に配慮した食事)などが追加された。
2) 特別食の対象に行事食やハラール食(宗教に配慮した食事)などが追加された。
診療報酬 新設=特別食
2026年度から新設された特別食加算(1食76円/3食まで)
嚥下調整食
①定期的なミールランド、試食やカンファレンス
②常食が適応と判断されれば速やかに移行
2026年度から新設された特別食加算(1食76円/3食まで)
嚥下調整食
①定期的なミールランド、試食やカンファレンス
②常食が適応と判断されれば速やかに移行
このように摂食嚥下の機能障害の場合、水分不足や栄養障害、QOL(生活の質)の低下と、誤嚥性肺炎による肺炎や窒息を予防して、楽しく美味しく、安全に食べることを目的とした摂食嚥下障害者の栄養ケアは、多職種によるコミュニケーションが重要となります。
具体的な学会分類については次回にポイントをまとめます。
尚、ここでは要旨を述べています。
多職種のコミュニケーションに必要な情報は「日本摂食嚥下リハビリテーション学会」のガイドラインを確認しましょう。
執筆者:白石 弘美

元 人間総合科学大学 教授・前学科長
■ 経歴
1967年、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部に管理栄養士として勤務。NST設立ディレクターとしてチーム医療の基盤を作る。
同病院の永年勤続を経て、東京家政大学・聖徳大学等の非常勤講師を歴任。
2008年より人間総合科学大学 教授、2012年〜2025年3月まで学科長を務める。
■ 専門・研究テーマ
臨床栄養学(糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、炎症性腸疾患(IBD)など)
消化管術後の栄養管理、褥瘡予防における栄養指導
災害時におけるIBD患者のための備蓄食品開発(産学共同プロジェクト)
■ 主な著書・実績
『新臨床栄養学-栄養ケアマネジメント-』(医歯薬出版)
『健康21シリーズ 脂質異常症:コレステロール・中性脂肪が気になる人の食事』(女子栄養大学出版部)
日本脂質栄養学会「ランズ栄養功労賞」、日本褥瘡学会「栄養功労賞」など受賞多数。
■ 所属学会・協会
日本臨床栄養協会(名誉会員)
日本脂質栄養学会(理事・監事)
日本褥瘡学会(功労会員)
編集者:渡部 早紗

管理栄養士・編集者
元 総合病院・給食受託会社勤務。総合病院での直営給食・臨床業務を経て、給食受託会社のエリア指導員として従事。厨房の突発対応やアレルギー管理の緊張感、調理スタッフのマネジメントなど、現場の「リアルな悩み」を熟知している。 自身の転職経験や失敗談をもとに、現在はフリーランスとして活動。同業者に向けて、キャリアの選択肢や、明日から使える現場の知恵を「温かい言葉」で届けることをモットーに執筆・編集を行う。
参考文献・サイト
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021:同学会嚥下調整食委員会 編、日摂食嚥下リハ会誌 25(2):135–149, 2021
-
嚥下調整食学会分類2021 Japanese Dysphagia Diet 2021 by the JSDR dysphagia diet committee (JDD2021)、本文中に掲載されているQ&A2022年1月14日追加Q&A(JDD2021)
- 新臨床栄養学‐栄養ケア・マネジメント(第5版)、本田圭子編:Ⅶ栄養をサポートする栄養ケア、4.摂食嚥下障害 p.442~449、 医歯薬出版 2023年3月発行
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