細菌間の相互作用を分析
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(以下、NIBN)は8月1日、同研究所國澤純副所長、大阪公立大学大学院獣医学研究科の細見晃司准教授らの共同研究グループが、株式会社はくばく協力のもと、腸内細菌間のコミュニケーションについて、一部を明らかにしたと発表した。
悪玉菌と善玉菌の相互作用について、次世代シーケンサーや質量分析装置による解析を実行している。この研究成果は、2025年7月28日に国際学術誌「Microbiome」にオンライン掲載された。
人間の腸の中には多くの細菌が存在し、それらは腸内細菌と呼ばれる。腸内細菌は食べ物の消化吸収を助けたり、免疫機能を調整したりする重要な存在だ。昨今は腸内細菌の種類や構成のバランスが崩れる「腸内細菌叢の乱れ(腸内ディスバイオシス)」により、便秘や下痢などの消化器系における不調はもちろん、さまざまな病気の発症に影響が及ぶことも明らかとなってきた。
しかし、腸の中で細菌同士がどのように関係し合い、腸内細菌叢のバランスを維持しているのか、その詳しいメカニズムは今もよく分かっていない。
悪玉菌と善玉菌の相互作用について、次世代シーケンサーや質量分析装置による解析を実行している。この研究成果は、2025年7月28日に国際学術誌「Microbiome」にオンライン掲載された。
人間の腸の中には多くの細菌が存在し、それらは腸内細菌と呼ばれる。腸内細菌は食べ物の消化吸収を助けたり、免疫機能を調整したりする重要な存在だ。昨今は腸内細菌の種類や構成のバランスが崩れる「腸内細菌叢の乱れ(腸内ディスバイオシス)」により、便秘や下痢などの消化器系における不調はもちろん、さまざまな病気の発症に影響が及ぶことも明らかとなってきた。
しかし、腸の中で細菌同士がどのように関係し合い、腸内細菌叢のバランスを維持しているのか、その詳しいメカニズムは今もよく分かっていない。
関係性を活かした「腸活」に期待
今回の研究では、フソバクテリウム バリウムと呼ばれる、病気の原因になりやすい悪玉菌と、フィーカリバクテリウム プラウスニッツィと呼ばれる善玉菌に着目、この2つの相互作用について、日本人236人を対象とした観察研究から解析が行われた。
まず、日本人236人を対象に、次世代シーケンサーによる16Sアンプリコン解析を実施、その結果、約半分の116人にはフソバクテリウム属が検出されなかった。この検出されなかった群について腸内細菌叢の特徴を調べると、検出された群に比べ、フィーカリバクテリウム属の割合が多かったという。
さらに236人のうち、112人についてショットガンメタゲノム解析を実施し、腸内細菌を種レベルで詳細に調べたところ、フィーカリバクテリウム属の中で、フィーカリバクテリウム プラウスニッツィの割合が多く、この菌がフソバクテリウム バリウムを含む複数のフソバクテリウム属細菌種と逆相関の関係にあることが明らかとなった。
続いて腸内細菌叢の解析結果をもとに、フィーカリバクテリウム プラウスニッツィとフソバクテリウム バリウムに着目、これらの細菌を培養し、細菌間相互作用について調べた。すると、フィーカリバクテリウム プラウスニッツィは、フソバクテリウム バリウムの増殖を抑制する力をもつことが判明した。
質量分析装置を用いて培養液中成分を詳しく調べたところ、この増殖抑制作用は、フィーカリバクテリウム プラウスニッツィが存在することで酸性度が下がり、βーヒドロキシ酪酸が増加することが関係していることも明らかになったという。
一方でフソバクテリウム バリウムが存在することにより、フィーカリバクテリウム プラウスニッツィの増殖が促進されるという意外な結果も得られた。電子顕微鏡による観察から、細菌同士が直接触れ合うことで起きている現象である可能性が高いとみられている。
今回の研究により、腸内の細菌同士がいかに支え合ったり競い合ったりしているか、互いになされる複雑なやり取りの一端が明らかとなった。これらの積み重なりにより、腸内細菌叢のバランスが維持されている可能性が高い。
今後、こうした細菌同士の関係性を明らかにしていくことで、腸の不調や病気を予防したり改善したりする新たな手法の確立や、健康を支える細菌の力を高める食品、サプリメントなどの開発、個人の腸内環境に合わせた腸活提案など、画期的な医療や健康法の実現も期待される。
(画像はプレスリリースより)
まず、日本人236人を対象に、次世代シーケンサーによる16Sアンプリコン解析を実施、その結果、約半分の116人にはフソバクテリウム属が検出されなかった。この検出されなかった群について腸内細菌叢の特徴を調べると、検出された群に比べ、フィーカリバクテリウム属の割合が多かったという。
さらに236人のうち、112人についてショットガンメタゲノム解析を実施し、腸内細菌を種レベルで詳細に調べたところ、フィーカリバクテリウム属の中で、フィーカリバクテリウム プラウスニッツィの割合が多く、この菌がフソバクテリウム バリウムを含む複数のフソバクテリウム属細菌種と逆相関の関係にあることが明らかとなった。
続いて腸内細菌叢の解析結果をもとに、フィーカリバクテリウム プラウスニッツィとフソバクテリウム バリウムに着目、これらの細菌を培養し、細菌間相互作用について調べた。すると、フィーカリバクテリウム プラウスニッツィは、フソバクテリウム バリウムの増殖を抑制する力をもつことが判明した。
質量分析装置を用いて培養液中成分を詳しく調べたところ、この増殖抑制作用は、フィーカリバクテリウム プラウスニッツィが存在することで酸性度が下がり、βーヒドロキシ酪酸が増加することが関係していることも明らかになったという。
一方でフソバクテリウム バリウムが存在することにより、フィーカリバクテリウム プラウスニッツィの増殖が促進されるという意外な結果も得られた。電子顕微鏡による観察から、細菌同士が直接触れ合うことで起きている現象である可能性が高いとみられている。
今回の研究により、腸内の細菌同士がいかに支え合ったり競い合ったりしているか、互いになされる複雑なやり取りの一端が明らかとなった。これらの積み重なりにより、腸内細菌叢のバランスが維持されている可能性が高い。
今後、こうした細菌同士の関係性を明らかにしていくことで、腸の不調や病気を予防したり改善したりする新たな手法の確立や、健康を支える細菌の力を高める食品、サプリメントなどの開発、個人の腸内環境に合わせた腸活提案など、画期的な医療や健康法の実現も期待される。
(画像はプレスリリースより)