理研らの研究チームが発見
理化学研究所(以下、理研)生命医科学研究センター細胞機能変換技術研究チームと、東京慈恵会医科大学臨床検査医学講座の古屋裕講師らの国際共同研究グループがこのほど、トウモロコシ由来のコーンオリゴペプチドと呼ばれる化合物に、肥満や非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の改善効果があることを発見した。
3月25日、理研が発表したほか、科学雑誌「Journal of Agricultural and Chemistry」オンライン版に3月15日付で掲載されている。
昨今、がん全体の死亡率は低下しつつあるが、肝がんでは増加傾向にある。その原因の一つに、抗肝炎ウイルス治療法の新店でウイルス肝炎関連の肝がんが減少している一方、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などメタボリックシンドロームによる肝がんが増えていることがある。
現在、日本国内の肥満者割合は男性で約33%、女性で約22%とされ、NAFLDは肥満との関連が深いことから、肥満人口の増加にとも内、NAFLDの有病率も上昇していると考えられている。
NAFLDは、単純性脂肪肝とNASHに分けられるが、NASHの病状が改善されない場合、肝線維化や肝がんに進行することがある。現時点でNASHに対する有効な治療法は確立されておらず、栄養学的アプローチでの積極的介入による栄養療法の重要度が高いとされ、原因に応じた長期経口摂取が可能で安全性と特異性の高い栄養療法が必要とされている。
トウモロコシのでんぷんを取り除いた、コーングルテンミールには、必須アミノ酸や栄養素が豊富に含まれる。しかし、このコーングルテンミールは人の消化器では吸収しにくい。一方、これを特定の消化酵素で分解した短鎖ペプチドのコーンオリゴペプチドは、血圧降下やアルコールの代謝促進、肝臓の保護、疲労緩和、筋肉増強といった多彩な機能を有することが、先行研究で明らかになっている。
研究グループは、これまでに活性酸素産性能が高い病原性カンジダ菌と肝細胞の共培養で、コーンオリゴペプチドが肝細胞死の誘導を抑制することを見出している。そこで今回、さらにマウスモデルを用い、コーンオリゴペプチドの経口投与によって、高脂肪食による肥満やNASHの病態進展が抑えられるかどうか検討を進めた。
3月25日、理研が発表したほか、科学雑誌「Journal of Agricultural and Chemistry」オンライン版に3月15日付で掲載されている。
昨今、がん全体の死亡率は低下しつつあるが、肝がんでは増加傾向にある。その原因の一つに、抗肝炎ウイルス治療法の新店でウイルス肝炎関連の肝がんが減少している一方、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などメタボリックシンドロームによる肝がんが増えていることがある。
現在、日本国内の肥満者割合は男性で約33%、女性で約22%とされ、NAFLDは肥満との関連が深いことから、肥満人口の増加にとも内、NAFLDの有病率も上昇していると考えられている。
NAFLDは、単純性脂肪肝とNASHに分けられるが、NASHの病状が改善されない場合、肝線維化や肝がんに進行することがある。現時点でNASHに対する有効な治療法は確立されておらず、栄養学的アプローチでの積極的介入による栄養療法の重要度が高いとされ、原因に応じた長期経口摂取が可能で安全性と特異性の高い栄養療法が必要とされている。
トウモロコシのでんぷんを取り除いた、コーングルテンミールには、必須アミノ酸や栄養素が豊富に含まれる。しかし、このコーングルテンミールは人の消化器では吸収しにくい。一方、これを特定の消化酵素で分解した短鎖ペプチドのコーンオリゴペプチドは、血圧降下やアルコールの代謝促進、肝臓の保護、疲労緩和、筋肉増強といった多彩な機能を有することが、先行研究で明らかになっている。
研究グループは、これまでに活性酸素産性能が高い病原性カンジダ菌と肝細胞の共培養で、コーンオリゴペプチドが肝細胞死の誘導を抑制することを見出している。そこで今回、さらにマウスモデルを用い、コーンオリゴペプチドの経口投与によって、高脂肪食による肥満やNASHの病態進展が抑えられるかどうか検討を進めた。

肥満マウスで脂肪蓄積抑制の効果を確認
まず、研究グループは早期段階のNAFLD病態モデルとして、13週間の高脂肪食飼育で肥満マウスを作製した。そして高脂肪食飼育の終わり2週間に、コーンオリゴペプチドを1日1回500mg/kg分、経口投与した。対照群には生理食塩水を投与している。
すると、コーンオリゴペプチドを与えた群で体重増加が有意に抑えられ、生化学検査の結果、血清コレステロール値や血清アラニンアミノ基転移酵素などの肝障害マーカーの増大も有意に抑制されていた。
肝組織を用いた遺伝子発現解析も実施しているが、こちらでは脂質代謝関連遺伝子、小胞体ストレス関連遺伝子、酸化ストレス関連遺伝子の発現が、コーンオリゴペプチドによって有意に抑えられていると判明した。
また、肝臓の様子を組織染色法で調べると、コーンオリゴペプチドによりF4/80陽性マクロファージなどの炎症性細胞浸潤やDNA損傷、活性酸素の産生が減少していることが分かった。
これらから、肥満マウスにコーンオリゴペプチドを経口投与すると、肝臓内での脂肪蓄積が抑えられ、酸化ストレスが減少したと考えられている。
すると、コーンオリゴペプチドを与えた群で体重増加が有意に抑えられ、生化学検査の結果、血清コレステロール値や血清アラニンアミノ基転移酵素などの肝障害マーカーの増大も有意に抑制されていた。
肝組織を用いた遺伝子発現解析も実施しているが、こちらでは脂質代謝関連遺伝子、小胞体ストレス関連遺伝子、酸化ストレス関連遺伝子の発現が、コーンオリゴペプチドによって有意に抑えられていると判明した。
また、肝臓の様子を組織染色法で調べると、コーンオリゴペプチドによりF4/80陽性マクロファージなどの炎症性細胞浸潤やDNA損傷、活性酸素の産生が減少していることが分かった。
これらから、肥満マウスにコーンオリゴペプチドを経口投与すると、肝臓内での脂肪蓄積が抑えられ、酸化ストレスが減少したと考えられている。

NASHからがんにつながる線維化の改善も
続いて、NASHの病態モデルとして、生後2日のマウスに、膵臓のβ細胞への毒性を有するストレプトゾトシンを投与して糖尿病マウスとし、高脂肪食で5週間飼育、NASH病態マウスを作製した。高脂肪食飼育の最後の3週間には、先ほどと同様にコーンオリゴペプチドを1日1回経口投与し、対照群には生理食塩水を投与するものとした。
すると、コーンオリゴペプチド群では体重増加や肝組織中の炎症関連分子Mcp1の遺伝子発現が有意に抑えられた。また、肝線維化の指標となる肝星細胞の活性化やコラーゲン産生も抑制されていた。
最後にプロテオーム解析を行い、コーンオリゴペプチドの標的分子を探索すべく、肥満マウスの肝組織からコーンオリゴペプチド投与によって発現が変化したタンパク質を抽出、IPAデータベースを用いて調査したところ、サーチュインシグナル経路に関わるタンパク質群が有意に含まれていると判明した。
哺乳類にある7種類のサーチュイン遺伝子発現を調べたところ、コーンオリゴペプチドを投与した肥満マウスとNASH病態マウスでは、肝組織中のミトコンドリアでSirt3とSirt5遺伝子の発現が選択的に抑制されていたという。
ここから、コーンオリゴペプチドはミトコンドリアSirt3及び5を介し、好気呼吸の最終段階といえる電子伝達系の活性を制御しているとみられた。
すると、コーンオリゴペプチド群では体重増加や肝組織中の炎症関連分子Mcp1の遺伝子発現が有意に抑えられた。また、肝線維化の指標となる肝星細胞の活性化やコラーゲン産生も抑制されていた。
最後にプロテオーム解析を行い、コーンオリゴペプチドの標的分子を探索すべく、肥満マウスの肝組織からコーンオリゴペプチド投与によって発現が変化したタンパク質を抽出、IPAデータベースを用いて調査したところ、サーチュインシグナル経路に関わるタンパク質群が有意に含まれていると判明した。
哺乳類にある7種類のサーチュイン遺伝子発現を調べたところ、コーンオリゴペプチドを投与した肥満マウスとNASH病態マウスでは、肝組織中のミトコンドリアでSirt3とSirt5遺伝子の発現が選択的に抑制されていたという。
ここから、コーンオリゴペプチドはミトコンドリアSirt3及び5を介し、好気呼吸の最終段階といえる電子伝達系の活性を制御しているとみられた。

今回の研究を通じ、NAFLD病態マウスにおいて、コーンオリゴペプチドが高脂肪食による肝臓への脂質蓄積と酸化や炎症・細胞障害を抑え、NASHによる肝発がんの原因とされる肝線維化も改善することが分かった。さらにその分子メカニズムは、ミトコンドリアのSirt3及び5遺伝子の制御から来ていると考えられた。
食事療法は肝機能改善のアプローチとして欠かせないが、NASHなどの生活習慣病において、運動療法とともに、その効果をどれだけ引き出せるか、また長期にわたり無理なく継続できるか、安全性はどうかといった点が問題になる。
研究グループでは今後、コーンオリゴペプチドの機能性成分分析をさらに進め、より安全性と有効性の高い手軽な摂取を可能とする次世代栄養食品の開発などにつなげていきたいとした。
(画像はプレスリリースより)
食事療法は肝機能改善のアプローチとして欠かせないが、NASHなどの生活習慣病において、運動療法とともに、その効果をどれだけ引き出せるか、また長期にわたり無理なく継続できるか、安全性はどうかといった点が問題になる。
研究グループでは今後、コーンオリゴペプチドの機能性成分分析をさらに進め、より安全性と有効性の高い手軽な摂取を可能とする次世代栄養食品の開発などにつなげていきたいとした。
(画像はプレスリリースより)