はじめに
医療や介護の現場では、利用者やその家族からの過剰な要求や不適切な言動、いわゆる「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が深刻な問題となっています。厚生労働省もこの問題を重要視し、リーフレットやガイドラインを公開しています。
本コラムでは、これまでのカスハラの傾向、厚生労働省の施策、そして個別対応と組織的な対応について解説します。
本コラムでは、これまでのカスハラの傾向、厚生労働省の施策、そして個別対応と組織的な対応について解説します。
医療・福祉業界はカスハラ相談件数が多い
厚生労働省の「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査」によると、医療・福祉業界は他業界と比べても相談件数が多い状況です。訪問型サービスや居宅系サービスでは、顧客と密室で接する環境となるため、ハラスメントの発生率が高くなると考えられます。また、相談件数の増加の背景には、これまで「仕事の一部」として見過ごされがちだったカスハラが、「ハラスメント」として認識されるようになっていることも考えられます。
カスハラの具体例には、身体的暴力、精神的暴力、セクシャルハラスメントなどが挙げられます。こうした問題が従業員の離職原因となり、医療・介護現場における人材不足をさらに悪化させる結果となっています。
カスハラの具体例には、身体的暴力、精神的暴力、セクシャルハラスメントなどが挙げられます。こうした問題が従業員の離職原因となり、医療・介護現場における人材不足をさらに悪化させる結果となっています。
厚生労働省の施策
令和元年に実施された労働施策総合推進法等の改正に伴い、職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)防止のための雇用管理上必要な措置を講じることは事業主の義務となりました。厚生労働省は、カスハラを含めたパワハラ対策に関するさまざまな指針やガイドラインを発表しています。
(1)労働施策総合推進法に基づくパワハラ防止指針
令和2年1月に策定されたパワハラ防止措置に関する指針に、顧客や取引先からの不適切な言動(カスハラ)も含まれることが明記されました。現時点では罰則規定はなく「望ましい対応」に留まっていますが、今後は法的な義務化が進むと予測されています。
(2)介護現場のハラスメント対策ガイドライン
介護分野では、利用者やその家族からのハラスメントを防止するためのガイドラインが策定されています。このガイドラインでは、カスハラの定義や事例、事業者が取り組むべき具体策が詳述されています。
(3)「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の公開
令和4年2月、厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公開しました。このマニュアルでは、実務に活用できる具体的な対策がまとめられており、事業所が従業員の安全を守るための有効な指針となっています。
事業者は3つのレベルで対応を!
カスハラが発生した際には、一人で抱え込まず、上司や施設、事業所に適切に報告・共有できる体制を整えることが求められます。また、一つの事業所だけでは解決が難しいケースも少なくありません。地域のケアマネジャーやかかりつけ医、他の事業所、自治体などと連携できる仕組みを事前に構築しておくことが大切です。
(1)個人レベルでの対応
従業員一人ひとりが適切にカスハラに対応するためには、次のような点が重要です。
• 迅速な報告:問題が発生した際には、上司や管理職に迅速に報告することを徹底しましょう。問題を個人で抱え込むことは避けるべきです。
• スキルの向上:質の高いサービス提供がカスハラを防ぐ場合もあります。利用者とのコミュニケーションスキルの向上やサービスの質を高めるための研修も重要です。
• 毅然とした態度: 暴言や無理な要求に対しては、毅然とした態度を示すことが重要ですが、感情的な対応は避けるべきです。
• 迅速な報告:問題が発生した際には、上司や管理職に迅速に報告することを徹底しましょう。問題を個人で抱え込むことは避けるべきです。
• スキルの向上:質の高いサービス提供がカスハラを防ぐ場合もあります。利用者とのコミュニケーションスキルの向上やサービスの質を高めるための研修も重要です。
• 毅然とした態度: 暴言や無理な要求に対しては、毅然とした態度を示すことが重要ですが、感情的な対応は避けるべきです。
(2)チームレベルでの対応
カスハラに対処するためには、チームとしての協力が不可欠です。
• 情報共有: ハラスメント事例をチーム内で共有し、適切な対応方法を話し合う職場風土を醸成しましょう。
• バックアップ体制: 特定の従業員が一人で問題を抱えないよう、交代制や他のメンバーのフォローアップ体制を整備します。
• 情報共有: ハラスメント事例をチーム内で共有し、適切な対応方法を話し合う職場風土を醸成しましょう。
• バックアップ体制: 特定の従業員が一人で問題を抱えないよう、交代制や他のメンバーのフォローアップ体制を整備します。
(3)組織レベルでの対応
組織としてカスハラ問題に取り組むためには、次のような施策が考えられます。
• マニュアルの整備:厚生労働省のガイドラインやマニュアルを基に、具体的な対応マニュアルを作成します。
• 教育と研修:作成したマニュアルを実効性のあるものにするためには、従業員の教育が必要です。定期的な研修を実施し、従業員が適切な対応を理解・実践できるようにします。
• 経営層の姿勢:法人全体として、従業員を守る姿勢を明確に示し、問題が発生した際には迅速に対処する体制を整えます。
• 地域連携の推進:ケアマネジャーやかかりつけ医など、地域の外部専門家と連携して対応することも効果的です。地域の他事業所と連携し、面での対応を強化することで、単一事業所に問題が集中しないようにします。
• マニュアルの整備:厚生労働省のガイドラインやマニュアルを基に、具体的な対応マニュアルを作成します。
• 教育と研修:作成したマニュアルを実効性のあるものにするためには、従業員の教育が必要です。定期的な研修を実施し、従業員が適切な対応を理解・実践できるようにします。
• 経営層の姿勢:法人全体として、従業員を守る姿勢を明確に示し、問題が発生した際には迅速に対処する体制を整えます。
• 地域連携の推進:ケアマネジャーやかかりつけ医など、地域の外部専門家と連携して対応することも効果的です。地域の他事業所と連携し、面での対応を強化することで、単一事業所に問題が集中しないようにします。
ハラスメントを理由とする契約解除は「正当な理由」が必要
医療・介護サービスを提供する施設や事業所は、利用者やその家族に対して、重要事項説明書を用いながら、提供するサービスの目的や範囲、方法について十分な説明を行い、理解を得ることが重要です。また、契約解除に至らないよう、事業所として最大限の努力や取り組みを行うことが求められます。
やむを得ず、施設や事業所側が契約を解除する際には、「正当な理由」(運営基準)が必要となります。対応の詳細については、「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」を参考にしてください。
やむを得ず、施設や事業所側が契約を解除する際には、「正当な理由」(運営基準)が必要となります。対応の詳細については、「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」を参考にしてください。
まとめ
「お客様は神様」という価値観は過去のものになりつつありますが、医療・介護業界ではそのサービスが人命や生活そのものに関わることから、従業員が我慢して受け入れるという対応になってしまいがちです。カスハラは、こうした対応の在り方を見直して適切な対策を講じることで、、従業員の負担を軽減し、職場環境を改善に寄与します。個人、チーム、そして組織全体で取り組むことで、利用者との信頼関係を維持しながら、現場の安心感を高めることができます。厚生労働省の指針やガイドラインを参考にしつつ、継続的な改善を図っていきましょう。