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2024.07.02

止まらない食材の高騰…580人の管理栄養士・栄養士の工夫とは?(給食管理編)

カバー画像:止まらない食材の高騰…580人の管理栄養士・栄養士の工夫とは?(給食管理編)

こんにちは!中堅管理栄養士のえぬこです。

2024年現在、円安や燃料費・人件費の高騰などが影響し物価上昇が続いていますね。中でも食料品の値上がりは、私たち管理栄養士・栄養士の仕事に大きな影響を与えているのではないでしょうか。

今回の記事では、給食業務に携わる約600人の管理栄養士・栄養士さんのアンケート結果をもとに、食料品値上がりの現状や対策、工夫などをご紹介します。

1.食料品の値上がりに悩んでいる管理栄養士・栄養士は約7割

食料品の値上がりに悩んでいると回答した管理栄養士・栄養士さんは約7割でした。

私は9割以上の方が悩んでいると予想していたので、思ったより少ないなという印象です。みなさんの予想はどうでしたか?

2. 理想的な給食を提供するために足りないと感じているものは?

次に、「理想的な給食を提供するために足りないと思うことは何ですか?」の設問に対する回答をご紹介します。
圧倒的1位は「メニュー開発のスキル」でした。メ

メニュー開発の中には
・献立のレパートリー
・嚥下調整食の調理法・技術
・治療食への展開力
・予算内での献立作成

など色々な理由が重なっていそうです。

フリーコメントでは
・食材原価を抑える献立の発想力や食材の知識がより欲しい(給食委託会社・管理栄養士・30代)
・炊飯器やスチコン、真空冷却器があればできるメニューがたくさんあるので。(学校(栄養教諭)・管理栄養士・30代)
など、経験や知識を求める声がみられました。

また、この設問は、厨房を直営で管理しているのか、給食委託会社所属の栄養士なのか、給食委託会社に依頼する立場の管理栄養士なのか、でも回答が大きく分かれそうです。

特に、比較的上位にある「追加予算をもらうための交渉力」や「予算権限者に現状を理解してもらうための情報発信力」は所属により交渉する対象が異なります。立場が変わると必要な折衝が異なるため、専門知識だけでなく社会人としてのスキルも磨いていかなければなりませんね。

回答数としては少ないのですが「メニュー開発の権限」と答えた管理栄養士・栄養士さんがいることには時代の変化を感じます。

クックチルや給食委託会社の本社一括献立が広がるなど、献立を決める権限が現場の管理栄養士・栄養士にない職場はこれからも増えていきそうです。

3.スキルや能力では限界。本当に足りないものとは?

「理想的な給食を提供するために足りないと思うことは何ですか?」のフリーコメントでは環境要因をあげるコメントも多数見受けられました。
・現場と掛け持ちで片手間に献立作成をするような人員体制なので、単純に時間が足りないと感じている。(給食委託会社・管理栄養士・30代)
・人員が足りないから、理想のメニューが作りたくてもつくれない。それでも調理師さんと協力して理想に近いメニュー作りに挑戦しています。(介護施設・管理栄養士・60代)
・スキルも必要だが献立を実施するだけの人員不足が深刻すぎる。それをカバーしているとスキルを磨く時間もない。(給食委託会社・栄養士・30代)
10年、20年と課題になっている給食現場の人手不足。エイチエのQ&Aでも頻繁に話題にあがります。この話題がでると、どうしても暗い気持ちになってしまいませんか。

人手不足解消のために給食委託会社への切り替え、クックチルの導入により調理をしなくなり現場のモチベーションが保てなくなった…というケースは少なくありません。

一方、過去にはエイチエのQ&Aで、直営現場で手作りのクックチルを導入している施設からの回答がたくさん集まったトピックスもありました。

人手不足をクックチルで対応

人手不足を解消しつつ、調理師さんのやりがいや手作り感のある給食提供を維持するスキルも磨いていきたいですね。

4.値上がり対策、3位は使用頻度の調整、2位は仕入先変更、1位は…

値上がり対策で1番多かった回答は、「業者から安価な食材を紹介してもらう」でした。

業者さんと直接取引している給食施設では、配送の方や営業担当とのコミュニケーションの中で良い情報が得られるよう工夫している様子が伝わります。

また、忙しい中でも仕入先を変えるための商談に試行錯誤していることも見て取れますね。

単価を下げるために旬の食材を多く取り入れたメニューを増やす、揚げ物を減らし他の調理法を増やすなど、メニュー開発や調理に工夫を凝らすあたりは、まさに管理栄養士・栄養士の腕の見せ所です。
委託会社指定の仕入先しか使えず、価格も言い値で交渉の余地はなし。安い材料を選んで新しいメニューを考える努力を続けるしかない。(介護施設・管理栄養士・50代)
というコメントにもある通り、大手給食委託会社のような本部一括発注の現場では、特に求められるスキルかもしれませんね。

5.管理栄養士・栄養士は1食いくらの予算増を希望する? 報酬改定の動向は?

食材料費の予算増分希望を聞いてみたところ、ボリュームゾーンは1食100円でした。

1日300円の予算が増えれば、高品質・高価格の食材も選べるようになりますから、できることがかなり増えそうですね。

私が所属する施設では「菓子パンの提供をなくす」「使える魚種が減らす」といった物価代作を行ってきましたが、これらを元に戻すには1日150円の予算が必要なので、私は1食50円の予算が増えるといいな…と思っています。

なお、令和6年度診療報酬改定では1食30円の値上げが決定されました。1食30円、1日90円では食材料費が高騰し始めた2022年ごろのクオリティを保つことも難しい金額だと思いますが、30年越しの見直しは大健闘と言えるのではないでしょうか。

また、介護報酬においては1日1,455円で据え置きという厳しい改定になりました。介護施設では一部利用者から直接徴収してもよい費用があるものの、施設内における給食部門は赤字経営という現状を打破することは難しそうです。

6.給食委託会社さんとの「値上げ交渉」レポ

2023年、実は私も給食委託会社さんとの値上げ交渉に関わりました。

コスト圧迫している部分を見てみると、直接材料費(食材料費)と洗浄や配膳・下膳にかかる間接労務費が要因になっている印象です。

悲しい話ですが、材料費の高騰は食材の質を下げることでやりくりできる部分もありました。

例えば
・毎朝パンを提供していたところを、週に3回雑炊にする
・サプリメントを入れることでカルシウムを補えば、毎朝牛乳を出さなくても栄養価を合わせられる
・おやつを週2回手作りのゼリーにする

など、工夫次第で材料費の値上げは大幅に抑えられるポイントが浮き彫りになりました。

また、配膳や下膳に関する労務費、いわゆる「間接労務費」は配膳時間と下膳時間について、朝を遅く、夕を早めることで、値上げ幅を抑える交渉を行いました。

もちろん、朝9時配膳や夕16時配膳のような実地指導で指導されるような時間設定ではありませんが、施設全体の業務を見直す大きな交渉事だったと思っています。

7.さいごに

今回は、その材料費が上がり続けている中で、現場の管理栄養士・栄養士が行っている工夫をご紹介しました。

病院や介護施設では、患者・利用者に応じた多様な食事を365日3回継続して提供しなければなりません。直接的なコスト、間接的なコスト共に厳しい昨今ですが、私たち管理栄養士・栄養士が直接コントロールできるのは材料費でしょう。

また、私のように給食委託会社との交渉事で「材料費高騰」と向き合った管理栄養士・栄養士も多いのではないでしょうか。

エイチエのQ&Aでは、材料費は実費請求という交渉についての質問も見受けられました。

食材費について

食材費の値上がりをはじめ、物価高騰対策に頭を悩ませている管理栄養士・栄養士さんは、ぜひエイチエのQ&Aを活用してみてくださいね。

食材費の値上がりや給食コストの値上げについては、管理栄養士・栄養士だけで抱えきれないこともあります。財務管理をしている事務部門などとも相談しながら、厳しい現状をみんなで一緒に乗り越えていきましょう!

参考文献・サイト

  • 株式会社エス・エム・エス エイチエ会員向け 2023年夏祭りキャンペーン WEBアンケート結果より

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えぬこ

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