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2025.06.11

管理栄養士・栄養士の行事食(イベント食)実態調査レポート|現場のリアルと工夫

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こんにちは!管理栄養士のえぬこです。

私たち管理栄養士・栄養士にとって、行事食やイベント食は「季節感や日本の文化を届ける大切な仕事」です。

しかし、実施には多くの課題も伴いますよね。この記事では、その課題を乗り越えるためのヒントや他施設の事例を実態調査に基づきレポートしていきます。

1.行事食(イベント食)の実施頻度:ほとんどの施設で月1回程度実施

今回の調査で、多くの施設で行事食・イベント食が月1程度実施されているという結果になりました。

1)施設別に見る実施状況:学校給食の事情と、保育園の熱意!

施設別にみると、学校給食は「イベント食の実施はない」という回答が22.6%と、他の施設に比べて目立って高く、一方で病院、介護施設、保育園(認可・認可外)などでは90%以上の施設でイベント食を実施しています。

特に、認可外保育園での実施率は100%という結果に!未来を担う子供たちへの食育熱意の表れかもしれませんね。

2)学校給食の舞台裏:行事食実施の難しさ、ここが課題

学校給食でイベント食の実施が難しい背景には、児童数の多さという物理的な問題に加え、特別な調理にかけられる人員体制の制約や、調理スペースの動線確保といった、私たちにも共感できる課題があるようです。

さらに、学校給食は1日1食で必要な栄養バランスを調整しなければならないため、1日を通して献立を組める病院や介護施設に比べると、献立作成のハードルの高さが要因の一つと言えるでしょう。

また、児童は家庭でも節句など行事食を楽しむ機会があるため、1日3食を施設で食べる病院や介護施設の利用者さんと比べると、学校給食における行事食の必要性は、もしかしたら少し低いかもしれません。

3)保育園の工夫:少人数だからこそできる、食育へのこだわり

一方で、園児数が比較的少なく、柔軟に運営ができる保育園では、食育の大切な機会として行事食を積極的に取り入れているようです。

伝統的な料理を体験することは、子どもたちの食への興味を育む上で、本当に貴重な経験になりますよね。

4)実施例:老健での行事食、ちょっと多め?

ちなみに、私の勤務する介護施設(老健)では、毎月のお誕生日会のおやつにケーキを提供し、昼食に赤飯を用意しています。

その他にも、季節に合わせた行事食も実施しており、頻度は月に3回ほどになります。もしかしたら、他施設より多い方かもしれませんが、利用者さんの笑顔を見ると、やっぱりやってよかった!と思います。

2.イベント食の予算と課題:やっぱり気になるお金の話と、現場のリアルな悩み

さて、ここからはイベント食の予算事情と、実際に現場でどんなことが難しいと感じられているのか、リアルな声に迫っていきましょう!

1)イベント食の企画時、予算って増える?:施設によって、結構違うみたい!

イベント食の企画で予算が増えるかどうか聞いた見たところ、「ある」「あることが多い」と答えた施設は、介護施設と障害者福祉施設が多く見られました。一方、保育園やこども園では、予算が増える割合は低いようですね。

介護施設で予算が増える背景には、食事が利用者さんにとって施設を選ぶ上での大切なポイントになっている、ということが考えられます。行事食やイベント食を積極的にアピールすることで、施設の魅力を高めているところが多いみたいです。

そして、フリーコメントからは、限られた予算の中で知恵と工夫で乗り切っている現場の声がたくさん寄せられました。盛り付けを工夫したり、食育という目的をプラスしたりと、本当に色々なアイディアで行事食を盛り上げているみたいですよ!
見た目やボリュームをいかに予算内で豪華にするか、楽しんだ者勝ち精神で、普段作れない手の込んだ料理を作っています!(20代・介護施設・栄養士)
普段あまり食べない子も給食を完食してくるので、思わず食べたくなるような盛り付けを工夫しています。(20代・保育園・管理栄養士)
行事食以外にも郷土料理や世界の料理など、保育士と協力して食育を行っています。(30代・保育園・管理栄養士)
そういえば、うちの施設では先日、昼食とおやつをまとめて提供してみました。おやつの予算を昼食に回し、配膳時間を12時から13時に少し遅らせて準備時間を確保。

おやつ介助が不要になって、介護士さんの業務負担も減らせたので、みんなからも「それいいね!」と賛同してもらえました。

2)イベント食で何が一番難しい?:食事形態の個別対応!

イベント食で一番難しいと感じること、それは「食事形態ごとに作ること」でした。嚥下調整食、アレルギー対応食、好き嫌いによる禁食など、一人ひとりに合わせた特別メニューを作るのは本当に手間もかかるし、誤配リスクが高まります。

管理が厳しい現場だと、個別対応の内容を献立に書き足すだけでなく、イチから献立を作成することも多いため、事務負担も増えて大変ですよね。これが大きな課題となっているのは、本当に納得です。

この課題に対して、うちの施設では、イベント食の時に、なるべく常食の献立で食べられるようなやわらかい食材を選んだり、一口大や刻みなどの加工を減らすように工夫しています。

もちろん、配膳の時に「あれ?この人、一口大なのに常食が出ている!」と指摘されることもあるので、申し送りで他職種への情報共有は徹底する必要がありますが、調理場の負担はグッとに減らせますよ。

少数意見ではありますが、「イベントの意味や内容を調べることが大変」という声もありました。家庭や地域で行事食を食べる機会が減り、食の簡便化や情報源の変化もあって、管理栄養士や栄養士でも世代交代とともに行事食に関する知識が薄れてきているのかもしれませんね。

3.プロの体調管理とイベント食への想い

さて、一大イベントの行事食を作る私たち管理栄養士・栄養士ですが、確実に提供できるようにするための体調管理は必要不可欠。みんなどうしているのでしょうか?そして、様々な工夫を凝らしたイベント食にどんな想いを込めているのか、一緒に見ていきましょう!

1)プロの体調管理術:二枚貝を避けるのはキホンのキ!

体調管理で一番多かったのは、生肉や牡蠣のようなリスクを伴う食材を避けること。これは私たちからすると当たり前のことかもしれませんが、改めてすごいプロ意識ですよね。

きっと大好きな方もいるはずなのに、食中毒や感染症リスクを避けるための我慢するのは、まさにプロの姿勢です!

次いで多かった「日常生活でもマスクを欠かさない」や「同居人の体調によっては隔離する」なども、感染対策への意識の高さがうかがえます。

自分の体調管理だけでなく、他の人にうつさない、家族からも感染しないようにという姿は、職場に穴を開けない責任感の高さの現れです。

さらに、少数意見ではありますが、自宅で検温をしていると答えた人が19%もいました。最近は職場によっては義務づけられているところもありますが、自主的に続けるには健康意識が高くないと難しいですよね。

行事食の日、クライアントとの大切な約束、担当患者さんの栄養指導など、「今日は絶対に休めない!」という日が多い私たちだからこそ、忙しい中でも健康管理の基本をしっかり実践している仲間が多いというのは、本当に心強く嬉しい気持ちになりますね!

2)イベント食への想い

いつも豪華にできず、利用者様に我慢してもらうことがあっても、イベント時は胸を張って料理をお出しできるので嬉しい!調理員さんもおいしいものを作りたい人たちなので、腕をふるってもらえる機会があってよかったと思う。(30代・介護施設・管理栄養士)
目先を変えた食事提供は、入院生活に彩りを添える楽しみの1つだと思います。「美味しい」という言葉のほか、手作りの行事食カードを枕元やオーバーテーブルに飾って下さる患者さんもいらっしゃり、スタッフのやりがいに繋がっています。(50代・病院・管理栄養士)
ご自宅とは違う環境で過ごされている方々のささやかな楽しみを大切にしたいという想いが伝わってきますね。調理師さんなどスタッフのやりがいに触れたお声もあり、現場をまとめる責任者としての強い想いも感じます。
子供たちが喜ぶ姿を想像しながら、イベント食を考えています。考えるのも時間がかかり大変ですが、エイチエで掲載されている献立を参考にこれだったら子ども達に喜んでもらえるかなぁ?楽しい気持ちになるかなぁ?と思いながら試作します。最大で5回ぐらい試作したこともあります。子ども達に提供するイベント食は、未来につながる食と思っています。(40代・管理栄養士・保育園)
子供達が日本や世界の行事やイベントを知る機会を給食で作れる努力をしています。(20代・管理栄養士・学校)
保育園や学校の先生方は、まさに子どもの未来を育てる“食育”への情熱でいっぱいですね!数分で食べ終わる給食ですが、そこからの学びは子どもたちの心にずっと残る宝物になるはず。そして、その学びはきっと次の世代へ受け継がれていくでしょう。

エイチエの「みんなの献立レポ」には、行事食のアイディアがたくさん投稿されています!献立の参考にできること間違いなしの投稿がたくさんありますので、ぜひチェックしてみてくださいね!

3)イベント食で工夫していること

外食チェーンと交流し、行事食にご協力いただくなど、かなり力を入れています!(40代・介護施設・管理栄養士)
社会人力が試されますが、すごく楽しく美味しいイベントになりそうですね!給食委託会社によっては、外食チェーンとコラボしていることもあるので、本社の担当に相談するとしてみるのもアリかもしれません。
イベント食は普段提供出来ないメニュー等を中心に提供しています。ホームページやSNSへの投稿を行うことで、施設のPRに役立てています。(50代・介護施設・管理栄養士)
最近は、介護施設や病院でもSNSを活用するところが増えていますよね。日常の様子や利用者獲得を目的に使うなど様々です。

私の職場でもリクルート目的の発信に使っていますよ!SNS発信に力を入れている職場では、予算もつきやすいかもしれません!
スイーツクラブと称して月2回パフェの提供を始めました!希望制ですがほとんどの方が希望されていて、やり甲斐があります。(50代・介護施設・管理栄養士)
読んでいるだけでわくわくしますね!

実はこれ、私もよく使う手法です。食費が足りない時は、介護職の方と連携してレク費を活用するのも一つの手ですよ!

多くの施設でレクリエーション費と食費は別計上しているので、経理担当の方に聞いてみてくださいね。
クックチルで限界がある中でも、敷紙や、箸袋、カードなどでイベント色出しています!(40代・介護施設・管理栄養士)
敷き紙や箸袋、メッセージカードなど、管理栄養士のちょっとした工夫次第で食卓が華やかになりますし、制限のある職場でも私たちのイベント食にかける想いを届けられますね。

4.まとめ

今回は、行事食のリアルレポートをお届けしました。多くの給食施設で、たくさんの仲間たちが、食べる人の笑顔のためにいろいろな工夫を凝らした行事食やイベント食を実施しています。

みんなの工夫や想いに触れて、行事食は単なる食事ではなく、食べる人の楽しみや季節の喜び、継がれてきた大切な文化を伝える大切な役割・機会だと改めて感じたのではないでしょうか。作り手の調理師さんにとってもやりがいを感じられる、みんなを豊かにする大切な仕事ですよね。

献立に困ったときは、ぜひエイチエの「みんなの献立レポ」をのぞいてみてください!行事シーズンにはたくさんの献立が掲載される他、通常メニューでも参考になる投稿が盛りだくさん!

病院介護施設などの「提供場所」、介護食アレルギー食離乳食などの「ジャンル」、「季節」、朝昼夕の「食タイプ」などで絞り込めるから、きっと欲しい献立が見つかりますよ!コメントには、リアルな舞台裏が書かれていることもあるので、参考にしてみてくださいね

みなさんが心を込めて作ったお食事の投稿も、ぜひお待ちしています!

参考文献・サイト

  • 株式会社エス・エム・エス エイチエ会員向け 2024年クリスマスキャンペーン WEBアンケート結果より

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えぬこ

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