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2023.09.11

疾患別栄養ケア・マネジメントの特徴とポイント<腎臓病:CKD>

カバー画像:疾患別栄養ケア・マネジメントの特徴とポイント<腎臓病:CKD>

慢性腎臓病における栄養ケア・マネジメントは、適切な食事指導によって病状の進行抑制が期待できます。タンパク質制限、カリウム制限、食塩制限などが必要であり、専門知識を持つ管理栄養士による適切なアドバイスが欠かせません。

本記事では、慢性腎臓病における栄養ケア・マネジメントのポイントや特徴、患者にとっての重要性、具体的なアドバイスなどを紹介しています。

1.はじめに

慢性腎臓病(CKD:chronic kidney diseease)の概念が確立され、早期に対処すれば、重症化を抑制でき治癒を望むことも可能な疾患です。

この腎臓病を簡便に、できるだけ早期に発見し対処することの必要性が認識され、2007 年に初めての「CKD 診療ガイド」が刊行されました。これらの治療ガイド・ガイドラインが CKD 概念の普及・啓発と共に、診療の標準化・効率化に大きく貢献しています。

また、我が国では超高齢社会を迎えて、CKD は認知症とも関連することが示されており、国民の健康寿命延伸、楽しく生きる生活のために注視していく疾患でしょう。

このように腎臓病は、メタボリックシンドロームや糖尿病などの、生活習慣や加齢と深く関わっています。表1.のような人は、慢性腎臓病(CKD)になりやすく、注目すべきハイリスク群となります。

2.慢性腎臓病:CKDとは

対象となる患者は、初期から重症度の患者となります。ただし末期腎不全. (end-stage kidney disease:ESKD)に達した維持透析患者や、 急性腎障害(acute kidney injury :AKI)患者は除かれます。

このようにCKDは原疾患を問わない概念ですが、重要な原因疾患となる糖尿病と高血圧(腎硬化症)については、今後それぞれ別の記事で解説​​していきますので、そちらを参考にして下さい。

特に糖尿病に関連する腎疾患は、従来の糖尿病性腎症という新たな概念にシフトしており、本ガイドラインでも日本腎臓学会として初めて糖尿病性腎臓病を取り上げています。

3.CKD の定義

CKDガイドラインで示された定義は
①尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明らか、特に0.15g/gCr 以上の蛋白尿(30mg/ gCr以上のアルブミン尿)の存在が重要であること。

②GFR<60mL/分/1.73㎡ 、なお GFRは日常診療では血清Cr値、性別、年齢から日本人のGFR推算式を用いて算出。

算出方法: eGFR(mL/分/1.73㎡)=194×血清Cr(mg/dL)-1.094×年齢(歳)-0.287
※女性の場合これに×0.739
と定義されています。
【 注:酵素法で測定された Cr 値(少数点以下2桁表記)を用います。適応は18 歳以上とします】

4.CKDの重症度

慢性腎臓病:CKDの重症度は原疾患(Cause)、腎機能(GFR)、蛋白尿・アルブミン尿(Albuminuria)に基づく CGA 分類(CはCause:原因、Gは腎臓のはたらき:GFR、Aは尿蛋白の程度:Albuminuria))で評価します。

腎臓は糸球体濾過量:GFR区分と、原因疾患(糖尿病、高血圧、その他など)、タンパク尿の存在によって分類されます。そして腎機能が著しく低下し、高窒素や体液貯留、電解質異常などを認めて尿毒症を呈する病態を慢性腎不全とよび、CKD重症度分類でステージG4,G5に分類されます。

このG4段階では透析療法も視野にいれた治療方針がとられ、G5では人工透析の治療が必要となります。治療の基本であるステージ2,3abでの早期診断では、進展予防の薬物治療とともに食事療法が重要となるでしょう。

5.CKDの栄養ケア・マネジマント

CKDのステージ進行を抑制するためのステートメントをみていきましょう。

CQ(Clinical Question)ごとに表記されているエビデンスグレードと推奨レベルの区分は下記の通りです。

1)CQ とステートメントのまとめ

ガイドラインでは

CQ1.CKD患者診療に管理栄養士の介入は推奨されるか?
推奨 CKDのステージ進行を抑制するためにCKD患者の療養指導に関する基本知識を有した 管理栄養士が介入することを推奨する。C 1

CQ 2 .CKD の進行を抑制するためにたんぱく質摂取量を制限することは推奨されるか?
推奨 CKD の進行を抑制するためにたんぱく質摂取量を制限することを推奨する。ただし、画一的な指導は不適切であり、個々の患者の病態やリスク、アドヒアランスなどを総合的に判断し、腎臓専門医と管理栄養士を含む医療チームの管理の下で行うことが望ましい。B 1

CQ 3.総死亡、CVDの発症を抑制するためにCKD 患者の血清K値を管理することは推奨されるか?
推奨  総死亡、CVD の発症を抑制するためにCKD患者の血清K値を管理するよう提案する。具体的な管理目標としては、血清K値4.0 mEq/L 以上、5.5 mEq/L 未満でリスクが低下する。C 2

CQ 4 .CKD 患者の予後改善のために食塩摂取量を3~6 g/日に制限することは推奨されるか?
推奨  CKD患者において高血圧・尿蛋白の抑制とCVDの予防のため、6g/日未満の食塩摂取制限を推奨 する。ただし、過度の減塩は害となる可能性があるため、3gを目安として個々の症例に応じて下限を設定するC 1

引用元:日本腎臓学会 編集 CKDガイドライン2018

と、栄養ケアを評価しています。

2)栄養食事療法の基本方針

CKDにおける栄養食事療法の基本は
①腎機能低下の進行を抑制する
②終末代謝産物の産生を抑制する
③水・電解質の摂取調整で生体内部の恒常性を維持する
④栄養状態を維持・改善する
の、4つです。そのための栄養処方として「CKDステージによる食事療法基準:成人」(表4)により実施する基準としています。
CKD食事療法の実際としてポイントをまとめました。
①エネルギーは十分に摂取し過不足なく摂取する
②食塩を抑える
③たんぱく摂取量は、指示量まで抑える
④病態によってはカリウム、リン摂取の管理
そしてエネルギーや栄養素は、適正な量を設定するために、合併する疾患(糖尿病、肥満など)のガイドラインを参照して、病態に応じた調整が必要であり、性別、年齢、身体活動度などにより異なります。

栄養療法での体重は、基本的に標準体重(BMI=22)を用います。
[標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22]
このように腎機能が低下すると、より厳しい食事管理となります。

特に食事療法を継続するコツは、腎臓病の「低たんぱくご飯」や「還元麦芽糖:粉あめ」なとの特殊食品を活用した食事内容を指導する事も大切です。

6.高齢者とCKD、CQステートメント

最後に、高齢CKD患者のステートメントを見ていきましょう。

CQ 2 .75歳以上の高齢CKD患者のフレイルに対する介入により、フレイルの予防・進行抑制,生命予後改善・透析導入回避 は可能か?
推奨 75歳以上の高齢CKD患者のフレイルは腎機能予後・生命予後・透析導入の増悪因子だ が、栄養・運動による介入効果については不明である。D なし

CQ 3.75歳以上の高齢CKD患者に脂質低下療法は推奨されるか?
推奨  65~71歳の高齢CKD患者におけるスタチンの総死亡やCVDの一次・二次予防の効果が 認められるため、75歳以上の高齢CKD患者においても脂質低下療法(スタチン単独およびスタチンとエゼチミブ併用)を行うよう提案する。C 2

引用元:日本腎臓学会 編集 CKDガイドライン2018

以上のように、ここでは腎臓病(慢性腎臓病:CKD)の特徴と栄養ケア・マネジメントを解説しました。

特に糖尿病性腎臓病は、透析療法患者の1位を占める病態であり「糖尿病透析予防指導管理料」で管理栄養士の役割が期待されています。透析療法管理や糖尿病性腎症については、下記の記事をご覧ください。

疾患別栄養ケア・マネジメントの特徴とポイント<糖尿病性腎症>

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▼執筆者
所属:人間総合科学大学 人間科学部 健康栄養学科 学科長
役職:教授
白石 弘美 先生

▼編集者
渡部 早紗(管理栄養士)
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