イソニアジド（イスコチン）とヒスタミンの相互作用

イスコチン服用の方に禁止食材は？？
https://eichie.jp/member/qa/?action_qa_detail=true&qa_id=19354&answer_wait=0

上記のの質問が締め切られていたので、こちらに新しく挙げさせていただきます。
実際に献立作成においてどの食品を禁止しているかという情報ではなく、直接の回答でなくてすみません。

日本国内の報告ですが、
病院給食で提供された「サンマのつみれ汁（おそらく※）」を食べて
（※本文中ではsoup with a gound sauty pasteと書かれています）
イソニアジドを服用していた8名の患者が
ヒスタミン中毒とみられるアレルギー症状を発症したという事例があります。
結核患者のうちイソニアジドの服薬開始前あるいは服薬中止中の5名、
服薬中だがつみれ汁を食べなかった12名、また他の疾患の患者361名は発症しなかったとのことです。
Internal Medicine 44: 1133-1136, 2005
https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine/44/11/44_11_1133/_article

こちらも日本国内の報告で、特殊な事例だとは思いますが
イソニアジドを服用していた83歳の女性患者が
昼間室温においていたマグロの刺身３切れを夕食に食べて
ヒスタミン中毒を起こしたという事例があります。
Internal Medicine 36: 198-200, 1997
https://www.jstage.jst.go.jp/article/internalmedicine1992/36/3/36_3_198/_article

FAO/WHO 合同専門家会議によるヒスタミンの無毒性量(NOAEL)（大人 1 食当たり）50mg。
食品安全委員会が示した食中毒事例におけるヒスタミン摂取量は大人1人当たり22～320mg。
初めの論文のつみれから検出されたヒスタミン濃度は32mg/100gでした。
つみれの供食量がわかりませんが（つみれ汁に100gも入りませんよね…）
普通の人であればヒスタミン単独で食中毒を起こすレベルではなかった模様です。
食品安全委員会　ファクトシート「ヒスタミン」より
https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/140326_histamine.pdf

したがってイソニアジド服薬患者では、通常の摂取量でもヒスタミン中毒の可能性を想定する必要があるかもしれません。

イワシ、マグロ、サンマ、カジキ、ブリ、アジ、カツオ等の赤身の魚と
「つみれ（＝ミンチ）」（加工中の衛生管理が不明）
「昼間に室温放置したマグロの刺身」（保管中の温度管理が明らかに不備）
あとは冷凍魚・フライ（解凍中の温度管理）
といった調理・加工過程での衛生管理の不備の組み合わせが禁食を考えるヒントになりうると思います。

チラミンに関して追記します。

発酵食品に含まれるアミン類
http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/journal/2004/pdf/55-2.pdf

項目４．に記載されていますが、
MAO阻害剤（※）の服用者では、動悸や血圧上昇などを起こす
チラミン摂取量は6mgを超えるとされています。
（※イソニアジドのほか、抗がん剤の塩酸プロカルバジン、パーキンソン病治療薬の塩酸セレギリンが該当）

味噌・醤油等にもチラミンは含まれ、一日平均摂取量で合計すると上記のチラミン6mgを超えてしまうが、実際には一日の間で分散して摂取するので少なくとも健常人では問題にならない。
ただし、チーズや納豆では一度に食べる量は味噌・醤油より多いので注意を要するとあります。

チラミン6mgを超える食品量を試算しますと
（チラミン検出量は幅がありますが、高濃度の数値を使い計算しました）

一口でもダメなもの（食品量10g以下）　チェダー、カマンベール、ゴーダ、ブルー等のチーズ

避けた方が無難なもの（食品量20g以下）　コルビージャック、モッツアレラ、パルメザン等のチーズ

量を考慮すれば許容できるもの　プロセスチーズ（食品量250g以下）　

判断が分かれるもの
納豆
（平均的なチラミン含有量の納豆であれば600g食べても問題ないが、
製品によっては納豆5gでチラミン6mgに達してしまうものもあり注意が必要です。
おそらく納豆菌の菌種によりチラミン生成量に幅があると推定されてます）