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2022.10.24

給食委託会社とクライアント、良好な関係を作るために気を付けていること

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こんにちは。管理栄養士のえぬこです。

今回の記事では、私がクライアント側と給食委託会社の経験を経て、良好な関係を作るために気を付けていることをお話しします。

私はこの業界で約10年働いていますが、給食委託会社時代もクライアント側の現在も、良好な関係作りには苦労してきました。

立場は違えどお互い同じ栄養士。でも、所属する組織が違う…。これは、他の業界ではない特殊な関係ですよね。

現在進行形で関係作りに悩んでいる栄養士さんや、これから社会にでる学生さんはもちろん、直営一筋の栄養士さんも、ぜひ関係構築の参考にしてみてくださいね。

1.給食委託会社とクライアントの理想的な関係はパートナー

給食委託会社とクライアントの理想的な関係は「良質な給食サービスを提供するためのよきパートナー」です。

しかし、給食委託会社側はできる限り利益を出したい、クライアント側は患者・利用者さんの給食の質を向上したいなど、最終目標が異なることで関係構築に障壁が立ちはだかることもあります。
意見の衝突や、クライアント側の意見が通りやすい関係性のため、エイチエのQ&Aでもお悩み相談をよく見かけます…。

病院で委託給食勤務の者です。クライアント栄養士のパワハラについて

給食委託業者VS私

施設栄養士ってこんなものなんでしょうか

そうは言っても、やはり冒頭に記載した通り「良質な給食サービスを提供するためのよきパートナー」があるべき姿なことに変わりはありません。​

起きがちなトラブルでも、上手に対処して関係性を保てることはたくさんあります。まずはどんなトラブルが多いか、次の項目で見ていきましょう。

2.どんなに気を付けていても起こりがちなトラブル

まずは、どれだけ気を付けていても発生してしまうトラブルの内容やあるあるを洗い出してみました。

【クライアント側】喫食者さんのためにしたいことが断られてしまう

病院や施設で勤務していると、喫食者さんのためにより質を向上したい点や、嗜好や自助具のセットなど、細かく対応したいことがたくさん出てきますよね。

直営であれば管理栄養士の権限で叶えられることも、一旦給食委託会社と話し合わなければ実現できないというケースはよく直面します。しかも、話し合った結果、依頼を受けてもらえないこともしばしば。

全て断られることは少ないですが、喫食者さんのためにやりたい!と思ったことが叶えられないと、消化不良で悩んでしまう管理栄養士さんは多いのではないでしょうか。

【委託側】どんどん仕事が増えてコストと人員を圧迫しがち

一方で給食委託会社側は、個別対応や行事食の細かい依頼を「これくらいなら大丈夫!」と思って引き受けた結果、気付けば業務過多…なんてことも。

ところが給食委託会社側は、いくら要望を受け入れてサービスの質を向上させても、余程大きなイベント以外では、契約書通りの金額しか請求できません。

仕事の性質上、基本的に仕事が減ることはなく、増える一方になりがちです。予算内で食費や人員をコントロールしなければならないのに、クライアント・現場・本社の板挟みで増えた仕事に圧迫されて困っている…というのは委託栄養士あるあるですよね。

【クライアント側】給食委託会社のスキルによるサービスの質の低下

給食委託会社側の調理師や栄養士のスキルが伴わず、給食サービスに影響を及ぼすケースがあります。

私も直近の食事摂取基準や食品成分表の改定に伴い対応の相談をしたとき、委託側の現場栄養士が最新情報を知らない…ということがありました。

また、検査用保存食を必ずとらなければならないことを知らない調理師や、大量調理用の調理器具を正しく使用できないスタッフがいたこともありました。

直営であれば後輩や部下に研修・指導できることも、委託には直接注意ができない立場なので、クライアント側としては対応に頭を悩ませます。

委託側のスキルについては、エイチエQ&Aでもたまにお悩みの投稿がされています。

ずさんな委託会社

もちろん、全ての給食委託会社やそこで働く栄養士・調理師のスキルが伴わないということは絶対にありません。ですから、サービスの質に改善が見られない場合は業者の切り替え含めて検討しましょう。

【委託側】クライアント側がパワハラ気質

クライアント側の管理栄養士には、給食委託会社との関係性に対して理解が乏しい人もいます。基本的に“お客様の立場”ですから、相手に威圧的になってしまう人も…。

パワハラが辛すぎる!ハラスメントで悩む管理栄養士・栄養士さんへ ~体験談と対処法~

※ハラスメントに該当する場合の対策については上記の記事でも解説していますので、困っている方はぜひ参考にしてくださいね。

【双方】担当者が多く報連相が漏れやすく意思決定に時間がかかる

直営給食と比較すると、委託給食ではたくさんの関係者がいます。
給食運営の関係者が増えると、報告・連絡・相談が漏れやすくなり、仕事がスムーズに進まないことも起き得ます。

加えて、それぞれがその仕事のプロフェッショナルなので、視点が異なるが故に様々な意見が出て、意志決定に時間がかかることもあります。

特に昨今では、即決で作業同線の変更が必要なコロナ対応をしている中で『やりづらいなぁ…。』と思うケースが多かったですね。

3.良好な関係を作るために気を付けていること

トラブルは付きものではあるものの、良好な関係を作るために出来ることはたくさんあります。関係構築のために、私が日頃から気を付けていることをご紹介します。

1)決まり事をおざなりにしないために「記録」を残す

今(クライアント側)も、昔(給食委託会社側)も、打ち合わせをした内容はどんなに些細なことも記録に残すようにしています。

契約で動く関係性のため、話し合い時の記録があると「言った・言わない問題」で押し問答することがなく、事実ベースで話を進めることができトラブルを回避しやすいです。

クライアント側で気を付けていること
営業に依頼してお願いすることが決まった仕事や、クレームに対する改善策については、必ず記録を残すようにしています。

委託側の大きなミスが続いたときは、委託側の管理者から書面で改善策をもらうこともありますよ。改善の経過観察をすり合わせるためにも、口頭ではなく書面でもらうのがポイントです。

また、契約締結までの窓口は営業担当となるため、煩雑になりやすい個別対応や食材の質のアップ、行事食の回数など、現場には断られそうなことも、予め書面で締結しておけば現場から受け入れてもらいやすくなります。

これにより、委託側の人事の都合で担当者が変わったときに、人によって判断やサービスの質が大きく異なることがないようにしています。


委託側で気を付けていたこと
給食委託会社側で勤務していた時も、書面で記録を残すことは大切にしていました。一例をあげると、次のようなケースです。

私の配属先では献立に魚が多い、卵料理が多い、牛肉が少ないなどのクレームが介護職から直接厨房へくるような現場でした。でも、献立はクライアント側の承認をもらってから厨房へ提供していたのです。

クライアント側の管理栄養士の承認が出た献立に対するクレームは、クライアント側で解決すべき問題ですよね。(使用する食材については献立基準で決まっていることでもあるので、他職種には理解してもらいづらい事情もありますが…。)

そのため、献立表には予定献立の時点でクライアント側の管理栄養士に印鑑をもらっていました。事前に印鑑をもらうようになってからは「施設管理栄養士さんの承認を得ているので、厨房では変更対応できません。」と回答ができるようになりました。

献立は「予定・実施献立」としてまとめて作成しても良い書類です。書類が1つ増えるため管理が必要になりますが、記録を残しておくことで過剰なクレーム対応業務が発生しない工夫をしていました。

2)クライアント側だけで勝手に決めず「必ず厨房と相談」する

カンファレンスや家族からの問い合わせによる個別対応の依頼や、医師からこれまで指示されたことがない食事内容のオーダーが来たときは、管理栄養士だけで判断しないようにしています。

カンファレンスの場で即決を求められることもありますが、
・医師に対しては「契約で決まっている範囲外の対応になるため、厨房と相談してから回答します」
・家族に対しては「集団生活の中でのお食事なので、嗜好による代替対応は2品まで決まっています。」
など、厨房の仕事を増やさない対応も時には必要です。

3)依頼を断られたときは「なぜできないのか」を必ず確認・追求する

介護施設で栄養ケア・マネジメントを行っていると、想定外の個別対応が必要になることもあります。さらに、昨今のコロナ対応では作業同線を大きく変えなければならないケースも少なくありません。

そういうときは、給食委託会社側に依頼しなければならない追加業務や協議が必要となる案件が発生します。ケースによっては、現場の責任者からは断られることも多いです。

しかし、安全な食事提供や、利用者の健康維持のために必要なことであれば、対応してもらわなければなりません。断られたときは、突破口を探るためにも「何故できないのか」をできる限り追求するようにしています。
・できない原因となる業務を施設側で負担すればできるようになるのか
・追加予算が必要であればいくらかかるのか
など、時には本社や施設側の事務責任者も含めて話し合いの場を設けることもあります。

4)スタッフに直接注意やお願いをしない

クライアント側の管理栄養士に、委託側のスタッフを指導・教育する権利はありません。

そのため、配膳ミスや料理の味付けがイマイチだったときは、必ず現場責任者を通して注意してもらい、状況の報告をしてもらっています。

また、現場責任者の栄養士の対応や判断に問題があるときは、本社スタッフに連絡をいれて対応してもらいます。

直営の栄養科であれば、栄養部門の責任者の指示命令系統の下に厨房がありますが、委託会社の場合はそうではありません。クライアント側の管理栄養士がこの関係性を間違えるとトラブルの原因となりますので、私自身も気を付けています。

【番外編】年始のご挨拶をしに現場へ顔を出す

これは賛否両論あるかもしれませんが、私は年始のご挨拶を兼ねて1月1日は現場に顔を出すようにしています。

私は事務職員と同じくカレンダーで働いているため、年末年始は最低でも5連休です。でも、現場はフル稼働で、お正月の行事食を提供してくれています。

長居すると迷惑をかけてしまうので、滞在時間は5~10分程度ですが、お年賀のお菓子を持って現場に行っています。もちろん、勤務先の施設から強制はされていませんし、むしろバレたら怒られるかもしれません…。

それでもなぜ顔を出しているかというと、実は私が委託側で働いていたときに、クライアント側の管理栄養士さんが1月1日の午前中は出勤されていて、厨房に差し入れをくださっていたのがすごく嬉しかったんです。なので、私も真似をしてやっています。

4.さいごに

給食委託会社とクライアントの関係性構築は、他の業界ではあまり見ない特殊な関係性です。

最近は厨房を委託する病院や施設が多いので、給食委託会社とクライアント側が良い関係を作るにはどうすればよいのか?という悩みは、永遠のテーマかもしれません。

だからこそ、委託経験のある管理栄養士は関係性の構築が上手な人が多く、転職市場では強みになります。私も現在の勤務先への転職の際には、委託経験を重宝していただきました。

給食委託会社の経験も積んだし、次はクライアント側で仕事をしてみたいなあ…と思ったら、ぜひ本記事の作成元であるエイチエが提供する転職サポートサービス『栄養士人材バンク』に相談してくださいね。
また、厨房経験の強みは別の記事でも解説しています。あわせてこちらも読んでみてくださいね。

栄養管理・栄養指導を目指す管理栄養士に厨房経験は役に立つ?ひとつの結論を出してみた

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えぬこ

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