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2026.01.22

疾患別栄養ケア・マネジメントの特徴とポイント<慢性膵炎>

カバー画像:疾患別栄養ケア・マネジメントの特徴とポイント<慢性膵炎>

慢性膵炎の栄養ケア・マネジメントを、代償期から非代償期までの病期別に詳しく解説します。膵臓の機能低下に伴う栄養状態への影響や、病期で真逆となる脂肪制限の考え方、具体的な栄養基準量まで、現場の管理栄養士が臨床で押さえておくべき指導のポイントをまとめました。

1.慢性膵炎の基礎知識:膵臓の機能と病態の定義

膵臓は、消化酵素を含む膵液を作り、膵腺房細胞により、十二指腸へ分泌して食べ物を消化する働きと、ランゲンハンス島からインスリンを分泌して血糖コントロールする働きがある臓器です。

膵炎には急性膵炎と慢性膵炎があり、食べ物を消化する膵液(消化酵素)が、膵臓自身を溶かすことで急性膵炎が発症し、膵臓の正常な細胞(膵腺房細胞やランゲンハンス島)が徐々に破壊され、膵臓が硬くなる線維化や、膵臓のなかに石ができる「膵石」などを引き起こします。慢性膵炎は、長期間にわたって膵臓の炎症が続くことによって、この2つの働きが衰えていきます。

慢性膵炎は膵臓の内部で少しずつ炎症が起こり、正常の細胞が破壊されて線維組織になり、進行すると消化吸収不良や糖尿病を引き起こす症候群と定義されています。

2.慢性膵炎の病態・原因・症状:4つの進行過程

病態として慢性膵炎の進行過程は以下の4つの時期に分けられます。

・潜在期
・代償期
・移行期
・非代償期


食べ物を消化するための消化酵素を含み、膵液を分泌して腸に送りますが、このはたらきが悪くなることで栄養状態に影響が出るほか、内分泌機能障害による糖尿病も出現します。

発症の原因は、アルコール性と非アルコール性に分かれます。

最も多いのは多量飲酒によるアルコール性(およそ70%)であり、非アルコール性は慢性の胆石性、原因不明、脂質異常症などを原因として生活習慣病的な側面があります。症状としては、飲食後に反復する上腹部や背部の痛み、鈍痛や下痢・嘔吐などが認められる場合は慢性膵炎が疑われます。

しかし経過とともに、代償期から移行期を経て非対償期には、これらの症状は消滅して、耐糖能異常や消化吸収障害による脂肪便が出現します。

3.慢性膵炎の診断基準と検査

問診や血液検査に加えて、腹部レントゲン(X線)、腹部エコー(超音波)、CT、MRI、超音波内視鏡などの画像検査を行い、非代償期は血糖検査などで耐糖能異常をチェックします。

「慢性膵炎臨床診断基準2019」において、代償期は以下の項目などから2項目以上該当する場合に確信診断されます 。
①特徴的な画像所見・組織所見
②反復する上腹部の発作
③血中・尿中の膵酵素の異常
④膵外分泌物の障害
⑤純エタノール換算60g/日以上の継続飲酒
⑥急性膵炎の既住歴

4.病期別の治療方針:代償期と非代償期の違い

慢性膵炎の治療は、病期(代償期~移行期~非対償期)によって大きく異なります。

・代償期:主症状である腹痛・背部痛の原因となる炎症を抑える薬の内服を行い、痛みの原因となる炎症を抑える薬を使用します。食事療法としては脂肪制限を基本とします。

・非代償期:消化吸収不良の症状がみられ、栄養状態が悪化し、体重減少や筋力低下などが生じます。投薬治療とともに、栄養食事管理による介入が重要となります。

非代償期は消化吸収不良により脂肪を消化できず、栄養分が便に出て脂肪便が出現します。そのため食事における脂肪制限を行いません。そして服薬治療として、摂取した食物の消化を助けるための薬である、膵消化酵素薬を食直後に内服します。

これらが有効でない場合に内視鏡的治療や、体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)、外科的治療などが適応となる場合もあります。

5.管理栄養士が押さえるべき慢性膵炎の食生活・栄養管理のポイント

慢性膵炎の食・栄養管理は病期の臨床症状や、膵臓の機能の残存状態応じて行います。(図1.参照)

1)病期別の食事の考え方

・代償期:食事をすると腹痛や背部痛が発現する場合や、急性膵炎を繰り返すようなら、短期的に脂肪制限食にします。また、断酒と禁煙は腹痛消失に有効なため、予後改善のためにも勧められます。

・非代償期:長期の過剰な脂肪制限は、低栄養を招くため注意が必要です。慢性膵炎では胃酸の量を少なくする薬を追加することもありますので、その点も注視しましょう。

非代償期は脂肪便による栄養不良にならないよう、脂肪制限はしません。食事において、健常人と同程度のカロリー、脂肪、蛋白質を摂取し、充分な高力価膵消化酵素薬を内服して、栄養状態、体重、筋肉量、骨密度などを、正常に保つことが重要です。

【重要】糖尿病合併時の注意点
非代償期は一般の糖尿病のようなエネルギー制限を行うと、栄養状態が悪化し、低血糖を繰り返すことがあります。そのため、一律なエネルギー制限は行わず、血糖上昇に対してはインスリン注射などを活用して血糖を管理し、糖尿病治療を強化します。

実際の治療では病態や検査結果などを踏まえた治療方針となりますので、患者さんと医師、管理栄養士などと連携して支援を行います。

2)慢性膵炎の栄養基準(参考値)

慢性膵炎の食事栄養管理は、病期ごとに変わります。基本栄養量は下記の通りです。

・エネルギー:25~30kcal/kg/日(糖尿病が生じた場合は一般的なエネルギー制限を求めない。)
・たんぱく質:体重当たり1.0~1.3/kg/日(エネルギー比15~20%)
・脂質:代償期~間欠期10~30g/日、非代償期40~50g/日(脂肪便出現時)
・ビタミン脂肪制限から脂溶性ビタミン(A・D・E・K)不足に注意する。
・アルコール:全病期で厳禁
・避けるべき食品:揚げ物(天ぷら、唐揚げなど)、カフェイン、炭酸飲料、香辛料、多質食品(肉類の脂身、脂ののった魚、ウインナー、ソーセージ、種子・ナッツ類)、洋菓子など


このように食事管理はアルコールをはじめとして嗜好性の高い食品が多く、その制限は大変難しい事を理解しましょう。

1)さらに膵臓にやさしい生活(膵液の分泌を抑える)アドバイス

対象者と指導者で食事管理や生活習慣などについてコミュニケーションを取り、支援を継続していく必要があります。

患者さんの行動変容を促すために、以下の点を中心にコミュニケーションを図りましょう 。

1.食物摂取により膵液分泌があるので、食物の質・量を考える。
2.ホルモン分泌をおこす脂質摂取を控える。
3.調理油だけでなく、食品自体に含まれる脂肪に注意する。
4.胃液分泌を促す繊維の多い物・消化の悪い物は避ける
5.アルコールは重要なリスク因子であると自覚を促す。
6.禁煙・食後の安静を習慣化させ、多食多飲しない。

執筆者

白石 弘美(元 人間総合科学大学 教授・前学科長)

■ 経歴
1967年、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部に管理栄養士として勤務。NST設立ディレクターとしてチーム医療の基盤を作る。
同病院の永年勤続を経て、東京家政大学・聖徳大学等の非常勤講師を歴任。
2008年より人間総合科学大学 教授、2012年〜2025年3月まで学科長を務める。

■ 専門・研究テーマ
臨床栄養学(糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、炎症性腸疾患(IBD)など)
消化管術後の栄養管理、褥瘡予防における栄養指導
災害時におけるIBD患者のための備蓄食品開発(産学共同プロジェクト)

■ 主な著書・実績
『新臨床栄養学-栄養ケアマネジメント-』(医歯薬出版)
『健康21シリーズ 脂質異常症:コレステロール・中性脂肪が気になる人の食事』(女子栄養大学出版部)
日本脂質栄養学会「ランズ栄養功労賞」、日本褥瘡学会「栄養功労賞」など受賞多数。

■ 所属学会・協会
日本臨床栄養協会(常務理事・功労会員)
日本脂質栄養学会(理事・監事)
日本褥瘡学会(功労会員)

編集者

渡部 早紗(管理栄養士・ライター)

管理栄養士として総合病院で3年間勤務。調理補助から献立作成、栄養管理、栄養指導などを行う。その後、給食会社にて、担当地域の給食センターの巡回指導やマニュアル作成を実施。現在は、フリーランスの管理栄養士として主にライターに従事している。

参考文献・サイト

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