実際に栄養指導の現場は苦労の連続です。おいしくないと言って食べない人や食べること自体に興味がない方に、いかに十分な量の栄養素を食事から摂ってもらいつつ、しっかり減塩に取り組んでもらうか、考えるべき課題はつきませんよね。特に男性の高齢者に多いのは「自分は食事を用意する人ではない」と思ってしまっている人もいて、最初から食を放棄しているケースも。そこであきらめることなく、少しずつ料理に目を向けてもらうような工夫が必要です。また、高齢になるにつれ運動量も少なくなるし、あまりお腹が空かなくなるという現状もあります。趣味がアウトドアだったり家庭菜園で野菜を作ったりする方は活動量がありますが、そのようなケースは多くはないのが現状です。
前回の記事でもコメントをくださった中村育子先生から、栄養指導をする際に心がけていることを教えていただきました。
減塩タイプの調味料を入手するように指導することもあります。スーパーに行った時に、いつもよりもじっくり棚を見て減塩のものを探してもらうとか。顆粒だしやコンソメにも減塩タイプのものがありますが、意外に知らない人が多いんです。また、しょうゆを計量しないで、そのまま使ってしまう方も多いので、減塩するために、ワンプッシュタイプのしょうゆボトルを使用しては?と提案することがあります。その結果、全体の塩分量を減らすことになりますよ、とアドバイスをすることもあります。それから、みそ汁が薄味でおいしくない!と言われてしまった時には、塩を足すのではなく少しだけうま味調味料「味の素®」を振ってみてもらうというのも上手な使い方ですね。」 なるほど、ちょっとした目の付けどころが減塩のきっかけになるのですね。
中村育子先生考案の「おいしく減塩」レシピをご紹介
著書「親孝行レシピ」など、仕事や子育てで忙しくてもムリなく作れる簡単レシピを数多く生み出している中村先生。今回は、うま味調味料を使った特別においしく減塩レシピをご紹介いただきました!
「どちらのレシピもめんつゆやルウを使って味付けしていますが実はとても薄味なんですね。そこに香味野菜のしょうがやホール缶のコーンで風味を追加。そしてうま味調味料の「味の素®」を加えてあげることで、うま味をプラスして、おいしさをぐんとアップさせています」と中村先生。また、「味の素®」は、玉ねぎやにんじんなどの野菜や豚肉などに少量振っておくことで、食材本来のうま味を引き出すといった下ごしらえにも活用できるので、ぜひお試しください。
サバ缶のカレーじゃが(1人分)
エネルギー210kcal、たんぱく質12.8g、脂質10.6g、食塩相当量1.0g
【材料】
サバ缶…50g
じゃがいも…45g
玉ねぎ…30g
にんじん…25g
しょうが…少々
サラダ油…5g
カレー粉…小さじ1/2
めんつゆ(3倍希釈タイプ)5g(小さじ1)
酒…小さじ1/3
削り節…ひとつまみ
「味の素®」70g瓶…1~2振り
水…およそ100ml(½カップ程度)
【作り方】
(1)じゃがいも、玉ねぎ、にんじんは皮をむいて、食べやすい大きさに切り、鍋に入れてサラダ油で炒めます。カレー粉も入れてさらに炒めます。
(2)(1)に水をひたひたに入れて、削り節、めんつゆ、酒を入れて15分程度煮ます。
(3)(2)に火が通ったらサバ缶、すりおろしたしょうが、「味の素®」を入れて味を調えます。
かぼちゃのクリームシチュー(1人分)
エネルギー162kcal、たんぱく質8.0g、脂質6.5g、食塩相当量1.0g
【材料】
南瓜…40g
にんじん…20g
玉ねぎ…30g
豚もも肉…30g
※豚もも肉の下ごしらえとして「味の素®」70g瓶を1~2振りしておく。
にんにく…少々
ホールコーン缶…15g
市販のシチューのルウ…約1/2かけ
牛乳…50ml
「味の素®」70g瓶…1~3振り
(下ごしらえ・調味用の合計)
水…およそ100ml(½カップ程度)
【作り方】
(1) かぼちゃは種を取り、にんじん、玉ねぎは皮をむいて各一口大に切ります。にんにくはみじん切り。
(2) 鍋に(1)、ホールコーン缶、一口大に切った豚肉を入れて、ひたひたの水を入れて煮ます。
(3) よく煮えたら牛乳、シチューのルウを入れ、ルウが溶けたらできあがりです。味を見て、物足りなかったら「味の素®」を1振りいれて調えます。
うま味があれば減塩しても「おいしく」なるの?
うま味成分であるグルタミン酸を多く含む食材(昆布など)は、昔から料理をおいしくするものとして活用されてきました。実際に、低濃度のNaCl水溶液(食塩水)に少量のグルタミン酸ナトリウム(MSG)を添加すると「おいしさ」が増強されるという試験結果があります。(図1)一般の汁物 (食塩濃度0.9%程度)の塩分量を減らしても、うま味を活用することでおいしい汁物を提供できる可能性が示唆されました。
さまざまな料理において、グルタミン酸ナトリウムを活用することによって30%前後の減塩が可能であり、減塩しても味のおいしさは変わらないという評価結果が得られています。減塩の手段としてのうま味の活用は、日本だけでなく国際的にも注目を集めており、近年では論文の報告数も増えてきています。
理論的にはわかるけど自分で確かめるまでは、というご意見が聞こえてきそうです。ぜひうま味調味料を使って、「うま味でおいしく減塩」を実感してみませんか?みそを使って、簡単な体験をすることができます。
体験のご感想をぜひお聞かせください
手順①:みそ(出汁入りではない)10gを250mlのお湯に溶かしたみそ湯を用意。
手順②:少量をそのまま、味わってみてください。
手順③:みそ湯200mlに対して0.1g(「味の素®」70g瓶だと1振り)のうま味調味料を加える。
手順④:再度味わってみてください。
味の変化はいかがでしたでしょうか。それでも、うま味調味料の主成分であるグルタミン酸ナトリウムの“ナトリウム”が気になる・・・という方もいらっしゃるかもしれませんが、実はうま味調味料を加える前と加えた後を比較しても食塩濃度はほとんど増加していません!(図2)
このように、うま味調味料を上手に使うことで、いろいろな料理を幅広く「おいしく減塩」することができます。
うま味調味料を使った減塩について、さらに知りたい方はこちら↓(日本うま味調味料協会)
みなさんが日々直面している課題は、多岐にわたります。
アンケートに寄せられた中から、リアルな課題や工夫を見てみましょう。
こんな工夫をされている栄養士さんもいました。
人間関係の悩み、それは一般社会と同じです。
自分だけで抱え込まないで!
周りの人の理解をどう得るかは、一番栄養士が悩んでいるところですよね。そんな時は今の環境を少し変えてみたり、例えば気分転換を兼ねて習い事をしてみたり、ちょっと回り道かもしれないですけど、違うことをやってみると、それが職場で生かせるかもしれません」 中村先生もさまざまな悩みを抱えていたそうです。
いかがでしたか?次回は連載の最終回です。お見逃しなく! 次回の配信日は11月4日(水曜日)です。