異物混入相次ぎ停止も 給食の安全と安定供給へ何が必要?
2022/02/24 (木) 19:30
異物の混入が相次いだとして佐賀市の小学校が去年12月から給食を停止しています。専門家は「異物混入を完全になくすのは難しい」と指摘しますが、子供たちの安全と給食の安定供給、これらはどのように両立させるべきなのでしょうか?
【佐賀大学教育学部・板橋江利也学部長】「1日のうちで一番栄養を摂れるのが給食であるという子供もいると聞いていて、今給食を停止していて非常にご迷惑をおかけしていると考えているが、ひとまずは急場をしのぐという意味で」
624人の児童が通う佐賀大学附属小学校。去年12月6日から給食の提供を停止しています。その理由は異物の混入が相次いだため。12月までおよそ1年半の間に10件、プラスチック製樹脂の破片や髪の毛などの異物が給食から見つかりました。【佐賀大学教育学部・板橋江利也学部長】「児童生徒に安心してごはんを提供できる体制が整っていないということが、はり一番大きな危惧されるところだった」
いずれも児童の健康被害は確認されなかったものの、現状の体制のままでは安心安全な給食を提供できないとの判断でした。佐賀大学の山下宗利理事はご飯やパンは大学生協に委託、おかずは校内の調理室で作るという現体制について、一部を民間に委託することも検討し「保護者の了承を得て3月中に再開したい」としています。
子供たちが食べる給食への異物混入。ただ、専門家は完全にゼロにするのは難しいと話します。【甲南大学・西村順二教授】「異物混入を肯定する気はないが、異物混入は起こらざるを得ないぐらいのもの」「冬場は静電気が発生しやすい。毛糸のセーターの一部が引っ張られたり、髪の毛が入るということはないわけではない。それはもう避けようがないものだと思う」
【キャスター】取材を担当した長島記者です。給食への異物混入、根絶するのは難しいとありましたが、県内では実際どれくらい起きているんでしょうか?
【長島記者】この5年間でみますと、県内の公立の小中学校であわせて46件の異物混入が確認されています。神戸市で異物混入が相次いだ際、有識者会議の会長を務めた甲南大学の西村教授によると、異物混入は大きく分けて2つのパターンに分けられるということです。1つは「調理工程上の人為的ミスで混入した異物」。もう1つはほこりや髪の毛などの「自然由来で混入する可能性のある異物」です。西村教授は、「調理工程上の人為的ミスで混入した異物」は調理器具の点検など決められた確認項目を守れば入るはずがないものなので、対策次第である程度は防ぐことができるとしています。一方で静電気など自然由来での混入は避けられない場合もあるとしています。
今回、県内でも先進的な給食センターはどのような衛生管理をしているのか取材してきました。
地元の食材を使って栄養価の高い給食の献立を考える全国大会で去年準優勝した白石町学校給食センター。町内の小中学校あわせて6校に毎日およそ1060食を提供しています。
【白石中学校栄養教諭・川田孝子さん】「(調理道具は)必ず使う前と使っている途中と使ったあと、調理員複数で刃が欠けていないかや破損がないかチェックして記録に残している」このほかにも毎日スタッフの健康観察をしたり、調理の際に切った袋の数と切り離したものの数が合うかの確認など異物が入らないよう徹底しています。それだけやっても異物が入ってしまった際には、どんなに些細なものだったとしても再発防止に向けすべての体制を見直すことにしています。
【白石中学校栄養教諭・川田孝子さん】「白石町では1060人もの子供達の大切な命を預かって仕事をしている。子供達に事故は起こしてはいけないので、自分たちのできることは最大限に努力して安心で安全な子供達に喜ばれる給食の提供をしている」「私が子供のころ、給食が苦手だったので給食の時間楽しいなと思ってくれるように献立を工夫している」
【長島記者】白石町学校給食センターは、このほかに例えば「野菜などは3回洗浄」といった食材に関わるものや感染症予防のために「調理従事者は刺身や生卵は食べない」といったことも行われています。取材をして、食材の搬入から子供達が口にするまで複数の目でチェックするなど非常に徹底されているなという印象を受けました。もちろん、白石町だけが特別というわけではなく、やり方は様々ですが他の自治体の給食センターや学校の調理室でも同様に衛生管理は徹底されているそうです。
西村教授は「100パーセント、異物混入をなくすことはできない」とした上で、給食を管理する側に求められることについて次のように話していました。【甲南大学・西村順二教授】「(異物混入が)起こった場合にどうするか、速やかに(給食を)止めて速やかに手立てを考えて、何よりも保護者や子供たちに情報を公開していく体制を整えておかないと誰からも信用されなくなる。事前準備したことで100パーセント対応できるわけではないが、初期に動くときにはスキームを持っておく方が動ける。そういうことは給食を提供する周りの大人たちがしっかり考えないといけない」
【長島記者】もちろんまずは徹底した衛生管理が必要ですが、西村教授は実際に異物が混入してしまった際の“事後対応”の重要さを指摘していました。子供たちを守るためにも給食を安定的に提供するためにも、再発防止に向けた原因調査の方法やどのように改善するのかなど具体的な対応を事前に決めておくべきだということです。「給食の異物混入」という問題は人の手が入る以上、完全に解決するのは難しいですが、給食は成長期の子供たちの大切な栄養源の一つです。健康面での安全と安定した提供体制、これをいかに両立させていくかを保護者や教育委員会など第三者を交えながら、いま一度考える必要があると思います。
https://www.sagatv.co.jp/news/archives/2022022408729
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