情報 東京栄養サミット2021がわかる中村丁次が教える重要ポイント

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2021/12/02 19:37:42

東京栄養サミット2021がわかる!日本栄養士会会長中村丁次が教える重要ポイント
2021.11.08

東京オリンピック2021 と年を同じくして、12 月7日(火)、8 日(水)の2 日間にわたり、東京栄養サミット2021が開催されます。今回の栄養サミットでは、日本の各団体や企業から、たくさんのコミットメントが提出される予定です。

概要については、農林水産省、厚生労働省、外務省など、各省庁のホームページに発表されていますので、そちらをご覧いただくことにして、私は、日本栄養士会会長の立場から、コロナ禍の2021 年に東京栄養サミットが開催されることの意義と提言をお話したいと思います。

東京栄養サミット2021 開催に至る歴史的背景
人類の社会が進歩するにつれて、先進国と発展途上国の格差の問題や環境問題など、さまざまな問題が生まれました。そのなかで、途上国の犠牲の上に先進国の富が成り立つような世界のままではいけないという機運が生まれ、国連加盟国が参加するさまざまな国際会議が開催されてきました。

【経済格差や環境問題が議題となった主な国際会議】
・1972 年の国連人間環境会議(ストックホルム会議)
・1982 年の国連環境計画管理理事会特別会合(ナイロビ会議)
・1992 年国連環境開発会議(リオ・サミット、地球サミット)
・2002 年の持続可能な開発に関する世界首脳会議(ヨハネスブブルグ・サミット 地球サミット2002)
・2012 年の国連持続可能な開発会議(Rio +20、地球サミット2012)

また、2000 年にニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットでは、2015 年までの国際的な開発目標として、「ミレニアム開発目標(MDGs)」が採択されましたが、それは2015 年の国連総会で採択された2030 年までの「持続可能な開発目標(SDGs)」に引き継がれて今に至っています。

話は少し前後しますが、こうした世界的な流れのなかで、2012 年に開催されたロンドンオリンピックの最終日に、キャメロン英国首相(当時)の呼びかけで飢餓サミットが開催されたました。

それがきっかけとなり、翌2013 年に最初の「栄養サミット」がロンドンで開かれました。この流れを引き継ぐ形で次の2016 年リオデジャネイロオリンピックの年には「栄養サミット2016」が開催され、同じように東京オリンピックに合わせて「東京栄養サミット2021」が開催の運びとなったわけです。

2013 年のロンドン栄養サミットをもとに作成された報告書「世界栄養報告(2014 Global Nutrition Report,GNR)」の序文には「良好な栄養状態が人間の幸福の基盤になる」と記されています。

これはつまり、SDGs が掲げる17 項目の目標を議論するうえでも、その根底に「栄養=ニュートリション」があることを示唆していると思います。世界の栄養問題の解決がSDGs の目標達成の土台となりえるのです。

こうした背景から、これまでの栄養サミットでは、飢餓と低栄養が議論の中心でしたが、東京栄養サミットでは、過栄養も議論される予定です。また、昨今は先進国を中心に、「低栄養」と「過栄養」の双方が併存する「栄養不良の二重負荷」が問題となっており、こちらも議論の対象となります(下図参照)。

先進国では、行き過ぎたダイエットが原因で若い人が「低栄養」になったり、高齢者の「低栄養」状態がフレイル(=加齢により心身が老い衰えた状態)の原因となったりする一方、暴飲暴食などの生活習慣が「過栄養」を引き起こしているのです。

これは国が豊かになったがゆえに出てきた問題といえるでしょう。これら問題の解決方法を検討しながら、SDGs の目標達成や推進にも資する議論が行われる予定です。

【追記:2021/12/02 19:40】
栄養素の摂取が生体の必要量より「欠乏」し、健康に生きられない状態を「低栄養」、反対に必要量より「過剰」に摂取し、健康を害する状態を「過栄養」という。「低栄養」の人と「過栄養」の人が同じ国に混在する「栄養不良の二重負荷」が問題になっている。

【関連リンク】
・世界栄養報告(2014 Global Nutrition Report, GNR)

日本の栄養政策を世界に発信する絶好のチャンス
低栄養と過栄養の二重負荷の問題は、東京栄養サミットで最大の議題になるでしょう。そこで、私が声を大にして言いたいことがあります。それは低栄養と過栄養の解決に取り組んで、成功した例は世界にひとつしかない、それは日本である、ということです。

日本は戦後まもない時期の低栄養と高度経済成長を経て生じた過栄養の双方を経験し、そのどちらも栄養政策によって乗り越えてきました。東京栄養サミット2021 は、戦後の日本の栄養政策の成功事例を丁寧に紐解いて世界に発信するチャンスだと私は思います。

【関連リンク】
・厚生労働省 日本の栄養政策 PDF

では、なぜ、日本の栄養政策は成功したのでしょうか。ポイントはふたつあります。

①栄養改善のための法をきちんと整備し、持続可能な国家制度を作ったこと。
②その制度を支える管理栄養士や栄養士の専門家育成に力を入れたこと。
以上の2点です。

思い返してみてください。世界の飢餓や低栄養の問題はもう何十年も続いています。その問題解決に向けて、世界各国はたくさんのお金をつぎこみ、食糧支援や経済支援を行ってきました。

しかし、いまだ、問題解決には至っていません。なぜでしょうか?

お金や食べ物で支援しても、支援が継続できなくなれば、そこで止まってしまいますし、届いた食べ物は食べてしまえば、なくなってしまします。

【追記:2021/12/02 19:41】
日本が戦後の低栄養の状態を抜け出すことができたのは、世界銀行からお金を借りて、アメリカの余剰作物を買うだけでなく、それと同時に栄養士を育成し、学校給食などの制度を整備して、国全体を巻き込んだ栄養普及改善運動にまで発展させたからです。

また、高度経済成長を経て生じた過栄養については、管理栄養士による特定保健指導で生活習慣を改善することにより、肥満の増加にブレーキをかけることに成功しました。どちらもきちんとした制度設計と栄養の専門家の育成が功を奏しているといえます。

加えて、日本の栄養政策の特徴は、欧米のようなサプリメントに頼らず、あくまで日々の「食事」による栄養改善に努めた点に大きな特徴があります。ここにも、管理栄養士と栄養士の教育実績が大きく貢献しています。世界中のどこを見ても、日本ほど、公共の場に管理栄養士、栄養士を配置している国はありません。幼稚園、保育園、あるいは学校給食、社員食堂、病院食の現場で、栄養の専門家がきちんとした食事の栄養管理と指導を行っているのです。

このように、人材を育成し、持続可能な制度を作ることが、世界の栄養問題解決のための鍵になると、私は思います。世界がコロナ禍を体験した2021 年、人々は自身の免疫力維持の大切さに気づいたはずです。その土台には、栄養バランスの取れた日々の食事があります。

食事に重きを置いた日本の栄養政策、すなわち『ジャパン・ニュートリション』を世界に発信することは、コロナ禍を経験した人類にとって、その意味でもエポックメイキングになるでしょう。

日本栄養士会としても、東京栄養サミット2021 に際して発表するコミットメントを鋭意作成しているところです。ご期待ください。

【追記:2021/12/02 19:41】
東京栄養サミット2021 で想定される成果とSMART コミットメント
以下では、中村丁次先生のお話を踏まえて、コミットメントを提出する際のヒントと東京栄養サミットの開催概要をご紹介します。

東京栄養サミット2021 では、以下の3つの項目が成果として想定されます。なかでもコミットメントを発信することは、団体や企業の姿勢を世界に発信することになるよい機会でしょう。よいコミットメントの指標として「SMART コミットメント」(下記参照)がありますで、これを参考に考えられるとよいと思います。

そして、このコミットメントに対しては、表明者が年に1回NGR(Global Nutrition Report)に進捗を報告します。そしてその結果がNGR によって評価されることになっています。

コミットメントを発信される団体や企業は、実行できる内容を具体的に発信する必要があります。東京で栄養サミットが開催されることをきっかけに、日本から多くのSMART コミットメントが出されることを期待しています。なお、2021 年10 月末現在、日本ハム株式会社やNGO 特定非営利活動法人日本リザルツがコミットメントを出すことを表明しています。

【関連リンク】
・東京栄養サミット2021 コミットメント作成ガイド(日本語版)
・日本ハム株式会社コミットメント表明
・日本リザルツ 公式ブログ

【追記:2021/12/02 19:42】
【栄養サミット2021 の想定される3つの成果】
(農水省・東京栄養サミット2021 サイドイベント説明会資料より抜粋)

■下記の5テーマに関して、各ステークホルダーの参加のもと議論し、成果文書をまとめる。

① 健康:栄養のユニバーサル・ヘルス・カレッジ(UHC)への統合
② 食:健康的で持続可能な食料システムの構築
③ 強靭性:脆弱な状況下における栄養不良対策
④ 説明責任:データに基づくモニタリング
⑤ 財政:栄養改善のための財源確保

■全ステークホルダーが「SMART コミットメント」を表明
SMART コミットメントとは?

S=specific(具体的)
M=measurable(測定可能)
A=achievable(達成可能)
R=relevant(適切性)
T=time-bound(達成期限付き)

■我が国の栄養に対する国内外の取り組みをパッケージとして発信

・過去の取り組み:国民健康・栄養調査、学校給食、栄養士の育成、母子健康手帳を用いた栄養指導など
・近年の取り組み:生活習慣病に対する法的枠組みを含む取り組み、食育、健康経営、「IFNA」、「栄養改善事業推進プラットフォーム」など

【東京栄養サミット2021 概要】
時期:2021 年12 月7 日(火)、8 日(水)
場所:東京都内(海外は原則バーチャル、国内はバーチャル/リアル)
主催:日本政府
想定される出席者:各国政府ハイレベル、国際機関、学術機関、市民社会、民間企業、他
目的:世界の栄養改善の現状と課題を確認し、課題解決のための国際的な取り組みを推進する。
形式:ハイレベルセッション、テクニカルセッション、+α サイドイベント

中村丁次
中村丁次 記事一覧
公益社団法人日本栄養士会会長。1948年、山口県生まれ。徳島大学医学部栄養学科卒業後、聖マリアンナ医科大学病院に勤務。その後、東京大学医学部より医学博士取得。神奈川県立保健福祉大学教授・栄養学科長を経て、2011年より学長。『中村丁次が紐解くジャパン・ニュートリション』(第一出版)他、著書多数。

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