GLIM基準における筋肉量評価とスクリーニング方法に関する現状を整理します。以下のポイントが重要な考慮事項です:
GLIM基準とサルコペニア診断の関係性
GLIM基準の表現型基準
GLIM基準の「筋肉量減少」評価において、日本栄養治療学会のガイドラインでは**「人種に適したサルコペニア診断基準値」**の使用を推奨しています。この場合、アジア人向けのAWGS2019基準が参照されます。
下腿周囲長の優位性
複数の研究で下腿周囲長が**感度78.3%・特異度76.4%**と高精度なスクリーニングツールとして評価されています。特に整形外科患者では、歩行速度測定が困難なケースが多いため、下腿測定が実用的です。
SARC-Fの限界
最新のタイ研究(n=2,455)では、SARC-Fの**感度が14.3%**と低く、スクリーニングツールとして不適格と結論付けられています。日本の地域高齢者を対象とした研究でも同様に低感度が報告されています。
実臨床での運用実態
多くの医療機関で下腿周囲長+握力測定を基本評価として採用
(男性<34cm、女性<33cmがカットオフ値)
サルコペニア肥満診断では**指輪テスト(Yubi-Wakka test)**を追加使用
整形外科領域では**呼吸機能(%VC)**との相関も考慮した評価が推奨される
医師への回答例
「GLIM基準における筋肉量評価は、AWGS2019に準拠した下腿周囲長測定が現行の標準です。SARC-Fは感度が低く(14.3%)、スクリーニングツールとして不適切とのエビデンスが蓄積されています。当院でも整形患者の特性を考慮し、下腿測定を基本としつつ、握力や指輪テストを補助的に活用する提案が可能です。」
今後の対応案
多職種協議で評価フローの標準化を図る
(例:初診時スクリーニング→下腿測定→必要に応じてBIA実施)
診療報酬改定を視野に入れた体制整備
(令和7年度診療報酬改定で栄養管理加算の要件変更が予測)
地域連携パスに評価基準の明文化を組み込む
これらのエビデンスに基づき、現時点では下腿周囲長測定をGLIM基準の主要評価法として推奨することが妥当と考えられます。
以上、参考になれば幸いです。
2025/04/01